【令和2年不動産鑑定士試験】会計学 解答例

令和2・3年の会計学の問題は手元になかったですが、ブログに問題用紙の写真をUPしている人を見つけ、DLしてOCRしました。ありがたや・・・

会計学 過去問 模範解答(問題1・問題2)

会計学の過去問を使った学習ページ。問題文の空欄(ア)(イ)…や小問の記号ボタンをクリックすると、解答が表示される。記述の解答は、【会計基準に準拠した解答】と【やわらかい解答】の見出しをクリックすると開く。

問題1 減価償却とは?「使った分だけ費用にする」仕組みと自己金融効果

出題テーマ:有形固定資産と減価償却(配点50点)

有形固定資産と減価償却について、次の各問に答えなさい。

(1) 空欄補充:有形固定資産と減価償却の基本語句

問題文

(1) 次の文章は、有形固定資産と減価償却について説明したものである。次の空欄(ア)から(キ)までに入る適切な語句を答えなさい。

有形固定資産とは、形態を持ち、1年を超える長期にわたって使用される事業用の資産をいう。企業会計原則では、建物、構築物、機械装置、船舶、車両運搬具、工具器具備品、土地、建設仮勘定などが例示されており、その取得原価を当該固定資産のにわたり、一定の減価償却方法によって各事業年度にしなければならないとしている。

有形固定資産は、その性質によって大きく3つのタイプに分類することができる。使用や時間の経過とともに価値が減少していく、使用や時間の経過とともに価値が減少しない、そして鉱山・油井・山林などのように採掘・採取・伐採などによって数量的に減少していくがある。このうち、減価償却の対象となるのはである。

減価償却の方法には、期間を配分基準とする方法として定額法、定率法、級数法があり、また、生産または用益の提供の度合いを配分基準とするがある。なおの場合、減価償却ではなく減耗償却という償却方法が用いられることになっているが、実際の手続きとしてはが用いられている。

▼ 記号をクリックすると解答が表示される(問題文の空欄と連動する)。

根拠:企業会計原則 第三 貸借対照表原則 四(一)B(有形固定資産の例示)・五(費用配分の原則)、同注解20(減価償却の方法)。

(2) 減価償却の自己金融効果:お金が外に出ない費用の正体

問題文

(2) 減価償却の自己金融効果について、簡単な数値例を示しながら説明しなさい。

解答用紙:25行

【会計基準に準拠した解答】

減価償却費は、有形固定資産の取得原価を耐用年数にわたって各事業年度に費用配分する手続きから生じる費用であるが、計上時に現金支出を伴わない費用(非資金費用)である。そのため、売上収入によって回収された資金のうち減価償却費に相当する額が企業内部に留保される。この留保資金を固定資産の取替え・更新の資金に充てることができる効果を、減価償却の自己金融効果(資金回収効果)という。

【数値例】取得原価1,000万円の機械(耐用年数5年、残存価額ゼロ、定額法)の年間償却費は200万円である。毎期、売上収入1,000万円、償却費以外の現金支出費用600万円、法人税等の税率30%とし、税引後利益は全額を配当すると仮定する。

1期分の資金の動き(単位:万円)
項目償却費を計上しない場合償却費を計上する場合
売上収入1,0001,000
現金支出費用600600
減価償却費(非資金)0200
税引前利益400200
法人税等(30%)12060
税引後利益=配当280140
手許に残る資金
(売上-現金費用-税-配当)
0200

償却費を計上すれば、毎期200万円が企業内に留保され、5年間で1,000万円と機械の取得原価と同額の取替資金が回収される。なお、この効果は、償却費が売価を通じて回収されること、留保資金が社外に流出しないことを前提とする。回収資金を再投資すれば、設備の拡大(ローマン=ルフティ効果)も生じる。

根拠:企業会計原則 第三 貸借対照表原則 五(費用配分の原則)。企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書 第三(減価償却の最も重要な目的は適正な費用配分であり、自己金融効果はそれに伴う副次的な効果である)。

【やわらかい解答】

100万円のたこ焼き機を買って5年使う場面で考える。5年かけて少しずつ費用にするので、毎年20万円が「減価償却費」になる。ただし、この20万円は誰にも払っていない。お金は出ていかず、帳簿の上で費用になるだけだ。

たこ焼きの売上は毎年入ってくる。その中には「機械の代金を回収する分」が混じっている。この20万円は使い道が決まっていない手元のお金として残り、5年たつと100万円になる。

たとえば、売上100万円、現金で払う費用60万円、償却費20万円の年は、利益が20万円になる。この利益を全部配当で配っても、償却費の20万円は手元に残る。

機械が壊れたとき、この100万円で新しい機械を買い替えられる。借金や新しい出資に頼らず、自分の事業で稼いだお金だけで資金を作れるわけだ。これが「自己金融効果」である。ただし、売値で機械代をちゃんと回収できていること、貯まったお金を使い込まないことが前提になる。

(3) 200%定率法:3年目の減価償却額はいくらか

問題文

(3) 3月決算企業のA社は、202X年4月1日に事務用備品100万円を購入した。備品の耐用年数は5年であり、A社はこの備品について、200%定率法を採用することにした。3年目の減価償却額はいくらになるか計算しなさい。

【会計基準に準拠した解答】

200%定率法の償却率は、定額法の償却率(1÷5=0.200)の2倍の0.400である。各年の償却額は「期首帳簿価額×0.400」で計算し、これが償却保証額(取得原価×保証率0.10800=108,000円)を下回る年から、改定償却率0.500を用いた均等額に切り替える。

計算過程(単位:円) 3年目は202X+2年4月1日〜202X+3年3月31日の事業年度
年期首帳簿価額調整前償却額
(期首×0.400)
償却保証額
(1,000,000×0.10800)
当期償却額期末帳簿価額
1年目1,000,000400,000108,000400,000600,000
2年目600,000240,000108,000240,000360,000
3年目360,000144,000108,000144,000216,000
(参考)4年目216,00086,400108,000108,000(注)108,000
(参考)5年目108,00043,200108,000107,999(注)1

(注)4年目は調整前償却額86,400円が償却保証額108,000円を下回るため、改定取得価額(3年目末の帳簿価額216,000円)×改定償却率0.500=108,000円となる。5年目は備忘価額1円を残す。

答え:3年目の減価償却額=360,000円×0.400=144,000円(償却保証額108,000円を上回る)

根拠:企業会計原則 注解20(定率法)。償却率等は、法人税法施行令48条の2、減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第十(平成24年4月1日以後取得の定率法:耐用年数5年は償却率0.400、改定償却率0.500、保証率0.10800)による。

【やわらかい解答】

200%定率法は、「毎年、残っている価値の40%ずつ減らしていく」方法だ。40%は、定額法なら年20%(5年で割った率)のところを2倍にした率である。

1年目は、100万円の40%で40万円が費用になり、残りは60万円になる。2年目は、残った60万円の40%で24万円が費用になり、残りは36万円になる。3年目は、残った36万円の40%で14.4万円が費用になる。

なお、年がたつと費用が小さくなりすぎるため、「これ以上は下回らない」という下限(保証額10.8万円)がある。3年目の14.4万円はこの下限より大きいので、そのまま使える。

答え:144,000円

問題2 リース取引とは?「借りているのに資産と負債」になる理由

出題テーマ:リース取引に関する会計基準(企業会計基準第13号)(配点50点)

問題文

次の文章は、企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」からの抜粋である。これに関連して、以下の問いに答えなさい。

4.「リース取引」とは、特定の物件の所有者たる貸手(レッサー)が、当該物件の借手(レッシー)に対し、合意された期間(以下「リース期間」という。)にわたりこれをする権利を与え、借手は、合意された使用料(以下「リース料」という。)を貸手に支払う取引をいう。

5.「ファイナンス・リース取引」とは、リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約をすることができないリース取引又はこれに準ずるリース取引aで、借手が、当該契約に基づき使用する物件(以下「リース物件」という。)からもたらされるをに享受することができb、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるをに負担することとなるcリース取引をいう。

(中略)

9.ファイナンス・リース取引については、通常のに係る方法に準じて会計処理を行う。

(中略)

15.オペレーティング・リース取引については、通常のに係る方法に準じて会計処理を行う。

(1) 空欄補充:リース取引の定義と会計処理

問題文

(1) 空欄(ア)から(ク)にあてはまる適切な語を答えなさい。

▼ 記号をクリックすると解答が表示される(上の抜粋の空欄と連動する)。

根拠:企業会計基準第13号 4項(リース取引の定義)、5項(ファイナンス・リース取引の定義)、9項、15項。

(2) 下線部a〜c:「解約できない」「利益を享受」「コストを負担」の中身

問題文

(2) 下線部aからcについて、それぞれ具体的に説明しなさい。

解答用紙:a・b・cそれぞれ3行

【会計基準に準拠した解答】
a「これに準ずるリース取引」
法的形式上は解約可能であっても、解約に際して相当の違約金を支払わなければならない等の理由から、事実上解約不能と認められるリース取引をいう(基準5項、適用指針)。
b「経済的利益を実質的に享受する」
借手が、リース物件を自己所有する場合とほぼ同等に使用収益でき、その使用から生じる経済的利益を実質的に得られることをいう(基準5項、適用指針)。
c「コストを実質的に負担する」
借手が、取得価額相当額、金利、維持管理費用など、使用に伴うコストのほぼすべてを負担することをいう。リース料総額の現在価値が見積現金購入価額のおおむね90%以上であれば、これに当たる(適用指針)。

根拠:企業会計基準第13号 5項。企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」(解約不能の判定、現在価値基準・経済的耐用年数基準)。

【やわらかい解答】
a「これに準ずるリース取引」
契約書には「いつでも解約できる」と書いてあっても、解約するなら残りのリース料のほぼ全額を払わされるリースがある。実際にはやめられないので、解約できないリースと同じ扱いになる。それが「これに準ずるリース取引」だ。
b「経済的利益を実質的に享受する」
借りた物を、自分の物のように使い切れるということだ。たとえば、5年間のリースでコピー機を専用に使い続けられるなら、コピー機がもたらす便益はほぼ借手が受け取っている。
c「コストを実質的に負担する」
その物を持つためのお金を、借手がほぼ全部払っているということだ。たとえば、5年間のリース料を全部足すとコピー機を買った値段(金利込み)とほぼ同じになるなら、買ったのと変わらない負担をしている。

(3) リース資産・リース債務はいくらで載せるか

問題文

(3) リース資産およびリース債務の計上額の算定方法について説明しなさい。

解答用紙:4行

【会計基準に準拠した解答】

借手は、リース取引開始日に、リース物件とこれに係る債務を、リース資産及びリース債務として計上する。計上額は、リース料総額から利息相当額の合理的な見積額を控除した額(利子抜き法)による(基準10項)。所有権移転外では、貸手の購入価額等が明らかなときはこれと割引現在価値の、明らかでないときは見積現金購入価額と割引現在価値の、いずれか低い額とする(適用指針)。

根拠:企業会計基準第13号 10項、企業会計基準適用指針第16号。割引率は貸手の計算利子率(知り得ないときは借手の追加借入利子率)による。

【やわらかい解答】

リースは「分割払いで買う」のに近い。そこで、借りた物(リース資産)と、これから払う義務(リース債務)をセットで帳簿に載せる。

金額は、払う約束のリース料の合計から利息分を除いた額が基本だ。利息は物の代金ではなく、待ってもらったことへのお礼だからである。たとえば、リース料の合計が500万円で、利息分を除いた額が450万円なら、450万円で載せる。ただし、貸手が買った値段が430万円とわかっているなら、低い方の430万円を使う。

(4) リース資産の減価償却費:「自分の物になるか」で変わる

問題文

(4) リース資産の減価償却費の算定方法を、所有権移転ファイナンス・リース取引と所有権移転外ファイナンス・リース取引のそれぞれについて説明しなさい。

解答用紙:4行

【会計基準に準拠した解答】

所有権移転ファイナンス・リース取引では、自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法により算定する。所有権移転外ファイナンス・リース取引では、原則として、リース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとして算定する(基準11項)。

根拠:企業会計基準第13号 11項。

【やわらかい解答】

最後に自分の物になるリース(所有権移転)なら、自分で買った機械と同じ年数・同じやり方で償却する。最後に返すリース(所有権移転外)なら、借りている期間で使い切る前提で償却し、返した後の価値はゼロとみる。

たとえば、リース資産が450万円で、リース期間が5年の返却型なら、450万円÷5年=90万円を毎年の費用にする。同じ資産が自分の物になるタイプで耐用年数が10年なら、450万円÷10年=45万円(残存価額ゼロの定額法)になる。

(5) 使用権の移転とみる場合:リース資産を貸借対照表に載せるべきか

問題文

(5) リース取引を割賦売買取引との類似性の観点から実質的な所有権の移転とみなすのではなく、リース取引の本質を財産使用権の移転とみる場合、リース資産を貸借対照表に計上すべきか否か。所有権移転ファイナンス・リース取引、所有権移転外ファイナンス・リース取引、オペレーティング・リース取引のそれぞれについて、計上の是非と理由もあわせて説明しなさい。

解答用紙:5行

【会計基準に準拠した解答】

リース取引の本質を財産使用権の移転とみる立場(使用権モデル)では、使用権は将来の経済的便益をもたらす資産であり、解約不能なリース料の支払義務は負債となる。

所有権移転ファイナンス・リース取引と所有権移転外ファイナンス・リース取引は、解約不能で借手が使用収益でき、支払義務も確定しているため、使用権を資産に計上すべきである。

オペレーティング・リース取引は、現行基準では賃貸借処理となる(基準15項)。しかし、使用権モデルを徹底すれば、解約不能期間の使用権にも資産性があるため、計上すべきことになる。

根拠:企業会計基準第13号 結論の背景(31項ほか。借手において資産及び負債を認識する必要性)、15項。参考:新リース会計基準(企業会計基準第34号)は、借手の会計処理について使用権モデルを採用し、原則としてすべてのリースで使用権資産とリース負債を計上する。

【やわらかい解答】

「買ったかどうか」ではなく「使う権利を手に入れたかどうか」で考える。使う権利は、お金を払わないと手に入らない大事な財産だ。そして、解約できないなら、リース料を払う義務も確定している。そこで、権利(資産)と義務(負債)の両方を貸借対照表に載せるべきだと考える。

所有権移転のリースと所有権移転外のリースは、どちらも解約できないので、載せるべきだ。たとえば、5年間解約できないコピー機のリースは、5年分の使用権と支払義務を抱えている。

オペレーティング・リースは、今のルールでは賃貸借として費用にするだけだ。しかし、使用権という考え方を貫くなら、解約できない期間があれば、その分は載せるべきことになる。レンタカーを1日借りるような、いつでも返せる短期の契約まで載せる必要はない。

本ページの解答は、現行のリース会計基準(企業会計基準第13号)を前提とする。新リース会計基準(企業会計基準第34号)は2027年4月1日以後開始する事業年度から適用され、借手は原則としてすべてのリースで使用権資産とリース負債を計上する。
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