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【会計学】令和5年度 不動産鑑定士試験 論文式 過去問と模範解答
問題1:棚卸資産の評価/問題2:資産除去債務
問題文の空欄(ア)などをクリックすると解答が出る。同じ記号は連動して切り替わる。
問題1棚卸資産とは?評価方法・簿価切下げ・トレーディングのルールを整理
次の文章は、企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」(以下この問題において「本会計基準」という。)からの抜粋である。これに関連して、以下の各問に答えなさい。
3.本会計基準は、すべての企業における棚卸資産の評価方法、評価基準及び開示について適用する。棚卸資産は、商品、製品、、原材料、等の資産であり、企業がその営業目的を達成するために所有し、かつ、売却を予定する資産のほか、売却を予定しない資産であっても、販売活動及び活動において短期間に消費される事務用等も含まれる。
なお、売却には、通常の販売のほか、活発なが存在することを前提として、棚卸資産の保有者が単に価格の変動により利益を得ることを目的とするトレーディングを含む。
(1) 空欄ア〜オの語句
文中の空欄(ア)から(オ)までに入る適切な語句を答えなさい。
(2) 評価方法として定められていない方法
次の①から⑤のうち、企業会計原則注解(注21)(1)において棚卸資産の評価方法として示されておらず、本会計基準においても棚卸資産の評価方法として定められていない方法はどれか、一つを選び番号で答えなさい。
① 先入先出法
② 最終仕入原価法
③ 平均原価法
④ 売価還元法
⑤ 個別法
(3) 後入先出法とその削除の理由
本会計基準において、選択できる評価方法から削除された後入先出法について説明し、また、その削除の理由についても答えなさい。
【会計基準に準拠した解答】
後入先出法とは、最も新しく取得されたものから先に払い出され、期末棚卸資産は最も古く取得されたものから成ると仮定して、払出単価と期末棚卸資産の価額を計算する方法である。
削除の理由は、次のとおりである。
- 国際財務報告基準(IAS第2号)では後入先出法が認められておらず、国際的な会計基準とのコンバージェンスを進める必要があった。
- 後入先出法では、期末棚卸資産が古い取得原価で評価されるため、貸借対照表価額が直近の取得原価や時価から乖離しやすい。
- 国際的な比較可能性を確保する観点からも、評価方法から除くことが適当と判断された。
根拠:企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」第6-2項(結論の背景を含む)
【やわらかい解答】
後入先出法とは、「いちばん新しく仕入れたものから先に売った」と考えて、原価を計算する方法だ。
たとえば、1個100円で仕入れた商品が10個あり、あとから1個120円で仕入れた商品が10個あったとする。このとき10個売れたら、新しい120円のものから売れたと考える。倉庫に残っているのは古い100円のものだ、という計算になる。すると、貸借対照表に載る在庫の値段が、何年も前の古い値段のままになりやすい。
この方法をやめた主な理由は、国際的なルール(IAS第2号)が認めていないからだ。日本の基準を海外の基準にそろえて、他国の会社と比べやすくするために、選べる方法から外された。
(4) 洗い替え方式と切放し方式
期末に簿価を切下げた後の棚卸資産の会計処理法として、洗い替え方式と切放し方式がある。それぞれの会計処理法について答えなさい。
【会計基準に準拠した解答】
洗い替え方式(洗替え法)とは、前期に計上した簿価切下額を、翌期首に戻し入れて取得原価に戻し、翌期末に改めて取得原価と正味売却価額を比較して、簿価切下額を計算し直す方法である。
切放し方式(切放し法)とは、前期に簿価を切り下げた後の価額を、翌期首の新たな取得原価とし、戻し入れを行わない方法である。翌期末には、この切下げ後の価額と正味売却価額を比較する。
いずれの方法も、棚卸資産の種類ごとに選択適用でき、選択した方法は継続して適用する。
(設例)取得原価100、前期末の正味売却価額80、当期末の正味売却価額90の棚卸資産を、当期末まで保有している場合(単位:円)
| 項目 | 洗い替え方式 | 切放し方式 |
|---|---|---|
| 前期末の簿価切下げ(80−100) | −20 | −20 |
| 当期首の戻入れ | +20 | なし |
| 当期末の比較(基準額と正味売却価額) | 100と90を比較 | 80と90を比較 |
| 当期末の簿価切下げ | −10 | なし(80のまま) |
| 当期の損益の合計 | +20−10=+10 | 0 |
| 当期末の簿価 | 90 | 80 |
根拠:企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」第14項
【やわらかい解答】
値下がりして帳簿の値段を下げた在庫を、次の年にどう扱うかの違いだ。
洗い替え方式は、毎年「買った値段」にいったん戻してから、あらためて今の価値と比べる方法である。切放し方式は、いったん下げた値段をそのまま新しい出発点にして、次の年も続ける方法だ。
100円で買った商品が、去年は80円の価値に下がって、今年は90円に戻ったとする。洗い替え方式なら100円に戻して、90円に下げ直す。結果は90円、年間では差し引き10円のプラスだ。切放し方式なら、80円のまま据え置く。値が戻った分は、帳簿には出てこない。
(5) トレーディング目的の棚卸資産の期末評価
トレーディングを目的として保有する棚卸資産の期末評価について、①適用される評価基準が価格に基づく理由及び②会計処理方法をそれぞれ簡潔に述べなさい。
【会計基準に準拠した解答】
①評価基準が市場価格に基づく理由
トレーディング目的の棚卸資産は、活発な市場が存在することを前提に、市場価格の変動により利益を得ることを目的として保有する。市場価格は客観的に入手でき、売買や換金に事業上の制約もない。したがって、市場価格の変動そのものが投資の成果を表すため、市場価格に基づく価額で評価することが、投資者にとって有用な情報になる。
②会計処理方法
市場価格に基づく価額を貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額(評価差額)は、当期の損益として処理する。
根拠:企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」第15項(結論の背景を含む)
【やわらかい解答】
①なぜ市場価格か
トレーディングは、値動きで利ざやを稼ぐ商売だ。たとえば、金や穀物のように市場で毎日値段が決まるものを、値上がりを狙って持っている会社を考える。この会社にとって大事なのは、「買った値段」より「今いくらで売れるか」だ。市場の値段は誰でも確かめられるので、それで評価するのがいちばん分かりやすい。
②どう処理するか
決算日の市場価格で在庫を載せ替え、帳簿との差額は、その年の損益に入れる。値上がり分はもうけ、値下がり分は損として、その年の成績に出す。
問題2資産除去債務とは?「将来の片付け費用」を先に負債にする理由
次の文章は、企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」(以下この問題において「本会計基準」という。)からの抜粋である。これに関連して、以下の各問に答えなさい。
6.資産除去債務はそれが発生したときに、有形固定資産の除去に要する割引前の将来キャッシュ・フローを見積り、割引後の金額(割引価値)で算定する。
(1) 割引前の将来キャッシュ・フローは、合理的で説明可能な仮定及び予測に基づく自己のによる。その見積金額は、生起する可能性の最も高いの金額又は生起し得る複数の将来キャッシュ・フローをそれぞれので加重平均した金額とする。将来キャッシュ・フローには、有形固定資産の除去に係る作業のために直接要する支出のほか、処分に至るまでの支出(例えば、保管や管理のための支出)も含める。
(2) 割引率は、を反映した無リスクの税引前の利率とする。
7.資産除去債務に対応する除去費用は、資産除去債務を負債として計上した時に、当該負債の計上額と同額を、関連する有形固定資産のに加える。
(略)
9.時の経過による資産除去債務の調整額は、その発生時の費用として処理する。当該調整額は、期首の負債のに当初負債計上時の割引率を乗じて算定する。
(1) 空欄ア〜オの語句
文中の空欄(ア)から(オ)までに入る適切な語句を答えなさい。
(2) 資産除去債務の会計処理
資産除去債務の会計処理に関して、次の問に答えなさい。
(2)① 資産除去債務が発生するとき
下線部に関して、資産除去債務はどのようなときに発生するか、簡潔に答えなさい。
【会計基準に準拠した解答】
資産除去債務は、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって発生したときに、負債として計上する。資産除去債務とは、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、その除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものをいう。
根拠:企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」第3項(1)、第4項
【やわらかい解答】
工場や店舗の建物を建てたり、機械を設置したりして、使いはじめたときに発生する。「使い終わったら、法律や契約で、自分で撤去しなければならない」という義務を負うことになるからだ。
たとえば、ガソリンスタンドの地下タンクは、設置したときから、いずれ撤去して土地を元に戻す義務を負っている。撤去する日はまだ先でも、義務が生まれたのは設置したときだ。
(2)② 有形固定資産の「除去」の意義と具体的な態様
有形固定資産の「除去」の意義及びその具体的な態様について、答えなさい。
【会計基準に準拠した解答】
「除去」とは、有形固定資産を用役提供から除外することをいう。
その具体的な態様は、売却、廃棄、リサイクルその他の方法による処分等である。ただし、転用や用途変更は、除去に含まれない。また、将来の売却や廃棄を予定していても、その時点では資産を用役提供から除外するものではないため、除去にあたらない。
根拠:企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」第3項(2)
【やわらかい解答】
「除去」とは、その設備を使うのをやめて、事業から外すことだ。
具体的には、売ってしまう、捨てる(解体して廃棄する)、リサイクルに回す、といった方法がある。一方、別の用途に使い回す(転用)場合は、使い続けているので除去ではない。
(2)③ 本会計基準第7項の会計処理の呼び名と採用の根拠
本会計基準第7項で説明される会計処理は、(a)何と呼ばれますか、また、(b)この方法が採用された根拠について、答えなさい。
(参考)本会計基準第7項:資産除去債務に対応する除去費用は、資産除去債務を負債として計上した時に、当該負債の計上額と同額を、関連する有形固定資産のに加える。
【会計基準に準拠した解答】
(a)呼び名
資産負債の両建処理(資産除去債務に対応する除去費用を資産計上する方法)と呼ばれる。
(b)採用の根拠
- 資産除去債務は、有形固定資産の取得や使用によって生じる義務であり、負債の定義に当てはまる。そのため、発生時に負債として計上する。
- 将来の除去費用は、有形固定資産を使用して収益を得るために、避けられない支出である。そこで、負債計上額と同額を有形固定資産の帳簿価額に加え、取得原価の一部とみなす。
- 資産計上した除去費用は、減価償却を通じて、有形固定資産の使用期間にわたり各期に費用配分する。これにより、収益と費用が対応し、投資の実態も貸借対照表に表れる。
(設例)取得原価5,000万円の設備。10年後の除去費用1,000万円、割引率2%、耐用年数10年、残存価額ゼロ、定額法(単位:万円)
| 項目 | 金額・計算 |
|---|---|
| 資産除去債務の算定 | 1,000÷(1+0.02)10=820.35 |
| 取得時の仕訳(借方) | 有形固定資産 5,820.35 |
| 取得時の仕訳(貸方) | 現金預金 5,000/資産除去債務 820.35 |
| 毎期の減価償却費(定額法) | 5,820.35÷10年=582.04 |
時の経過による調整額(期首の負債の帳簿価額×割引率2%、万円未満は四捨五入しながら計算)
| 期 | 期首残高 | 調整額(費用) | 期末残高 |
|---|---|---|---|
| 第1期 | 820.35 | 16.41 | 836.76 |
| 第2期 | 836.76 | 16.74 | 853.50 |
| 第3期 | 853.50 | 17.07 | 870.57 |
| 第10期(最終) | — | — | 1,000.00 |
根拠:企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」第7項、第9項(結論の背景を含む)
【やわらかい解答】
(a)呼び名
「資産負債の両建処理」と呼ぶ。負債(資産除去債務)と資産(除去費用)を、同じ金額で両方とも貸借対照表に載せるからだ。
(b)なぜこの方法か
撤去費用は、その設備を使って稼ぐために、いつか必ず払うお金だ。つまり、設備を手に入れる代金の一部のようなものである。そこで、負債を計上した金額と同じ額を、設備の値段にも足す。
設備の値段に足せば、減価償却によって毎年少しずつ費用になる。撤去費用を、設備を使って稼いだ期間に分けて負担できるので、収益と費用の釣り合いがとれる。
たとえば、10年後に1,000万円かかる撤去費用を、現在価値の約820万円で計上し、設備の値段に足す。この820万円を、10年かけて毎年約82万円ずつ費用にしていく。
(2)④ 引当金処理の意義と問題点
資産除去債務の会計処理は、上記③(a)と「引当金処理」の2通りを考えることができる。「引当金処理」の意義とその問題点について、説明しなさい。
【会計基準に準拠した解答】
意義
引当金処理とは、将来の除去費用を、有形固定資産の使用期間にわたって各期に配分して費用に計上し、同額を引当金(負債)として積み立てていく方法である。将来の特定の費用で、発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、金額を合理的に見積れる場合に、当期の負担部分を費用として計上する、引当金の考え方に基づく(企業会計原則注解18)。
問題点
- 資産除去債務は、有形固定資産の取得や使用により、すでに法律上の義務として発生している。それにもかかわらず、引当金処理では債務の全額が発生時に負債計上されず、使用期間にわたって徐々に積み上がる。そのため、負債が過小に表示される。
- 各期に配分する額は、定額や使用量比例など、配分方法の選択に恣意性が入りやすい。
- 債務の履行に必要な額が将来の支出で確定している以上、将来の支出の見積額を、現在価値で測定して負債に計上する方法と、整合しない。
【やわらかい解答】
意義
引当金処理とは、将来の撤去費用に備えて、毎年少しずつ費用に計上し、その分を貯金のように積み立てていく方法だ。
問題点
撤去する義務は、設備を使いはじめたときに、すでに全額が発生している。ところが引当金処理では、最初は少額しか負債に載らず、10年かけてようやく全額になる。借金の全額が決算書に載っていないのと同じで、会社の実態が見えにくい。
また、毎年いくらずつ積み立てるかは、会社の決め方しだいで変わりうる。数字に恣意性が入りやすい。そこで、義務が生まれた時点で全額(現在価値)を負債に計上する、資産負債の両建処理が採用された。
(2)⑤ 無リスクの割引率が採用される理由
資産除去債務の算定に無リスクの割引率が採用される理由について、説明しなさい。
【会計基準に準拠した解答】
資産除去債務は、将来キャッシュ・フローの見積りにおいて、発生確率による加重平均などの方法で、不確実性(リスク)がすでに反映されている。割引率にもリスクを上乗せすると、リスクの二重計上になる。
また、割引率に企業自身の信用リスクを反映すると、企業の信用状態が悪化するほど割引率が高くなり、負債の現在価値が小さくなる。この場合、財政状態が悪化するほど負債が減るという不合理が生じる。資産除去債務は、法律上の義務であり、履行する義務自体は企業の信用状態によって変わらない。以上より、貨幣の時間価値のみを反映した無リスクの割引率を用いる。
根拠:企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」第6項(2)(結論の背景を含む)
【やわらかい解答】
理由は2つある。
- 撤去費用の「不確実さ」は、将来いくらかかりそうかという見積りの段階ですでに織り込んである。割引率でもう一度リスクを上乗せすると、同じリスクを二重に数えてしまう。
- 会社の信用力が低いほど割引率を高くすると、債務の現在価値が小さくなる。経営状態が悪くなるほど、負債が少なく見えてしまうのはおかしい。撤去する義務そのものは、会社の経営状態が悪くなっても変わらないからだ。
そこで、お金の時間的な価値だけを反映した、無リスクの利率を使う。
出題の要旨
国土交通省HPのコピペです。
【問題1】
この問題は、棚卸資産の評価基準および会計処理方法に関する基本的な理解を問うものである。具体的には、現在認められている棚卸資産の売上原価等の払出原価と期末棚卸資産の価額を算定する方法や後入先出法の除外理由、期末に簿価を切下げた後の棚卸資産の会計処理法などの基本的な知識を問うている。また、トレーディング目的で保有する棚卸資産の評価基準と会計処理方法についてもその知識を問うている。
【問題2】
この問題は、資産除去債務の会計処理についての基本的な理解を問うものである。(1)は、基準の穴埋め問題であり、資産除去債務に関する諸概念の理解を問うている。(2)は、資産除去債務の負債計上とその算定について問うている。①は資産除去債務の発生理由を、②は「除去」の意義とその具体的な態様について、③は基準上で採用された会計処理の考え方とその根拠について、④は基準上で採用されなかった「引当金処理」の意義と問題点について、⑤は資産除去債務の算定について無リスクの割引率が採用される理由を、それぞれ理解しているかを問うている。

1992年生まれ。3人目の育休中。
初めて不動産投資をするときにつまづくことが多く、当時知りたかったことをまとめています。最近は不動産鑑定士の勉強についての記事ばかりです。ドメイン分ければ良かったか・・・。


