【令和7年不動産鑑定士試験】会計学解答

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【会計学】令和7年度 不動産鑑定士試験 論文式 過去問と模範解答

問題1:財務報告の目的(財務会計の概念フレームワーク)/問題2:固定資産の減損

問題文の空欄(ア)などをクリックすると解答が出る。同じ記号は連動して切り替わる。

問題1財務報告の目的とは?「利益」と「キャッシュ・フロー」の関係から、減価償却・自己創設のれんまで整理

次の文章は、「討議資料 財務会計の概念フレームワーク」の「第1章 財務報告の目的」(以下、この問題において「本討議資料」という。)からの抜粋である。これに関連して、以下の各問に答えなさい。

 2.投資家は不確実な将来キャッシュフローへの期待のもとに、自らの意思で自己の資金を企業に投下する。その不確実な成果を予測してをする際、投資家は企業が資金をどのように投資し、実際にどれだけの成果をあげているかについての情報を必要としている。経営者に開示が求められるのは、基本的にはこうした情報である。財務報告の目的は、投資家のに資する制度の一環として、投資のポジションとその成果を測定して開示することである。

 3.財務報告において提供される情報の中で、投資の成果を示す情報は基本的に過去の成果を表すが、評価の基礎となるa将来キャッシュフローの予測に広く用いられている。このようにの情報を利用することは、同時にを生み出すb投資のストックの情報を利用することも含意している。投資の成果の絶対的な大きさのみならず、それを生み出す投資のストックと比較した(あるいは効率性)も重視されるからである。

(1) 空欄ア〜オの語句

文中の空欄(ア)から(オ)までに入る適切な語句を答えなさい。

(2) 下線部a:将来キャッシュ・フローの予測と利益情報

下線部aに関連して、次の各問に答えなさい。

(2)① 利益情報とキャッシュ・フロー情報に違いが生じる会計処理

過去の成果を表す情報と現在までのキャッシュフロー情報に違いが生じる原因となる会計処理の例を2つ答えなさい。

【会計基準に準拠した解答】

①減価償却

設備の取得に要した現金は取得時に支出されるが、その取得原価は、耐用期間にわたり各期の費用として配分される。そのため、取得した期には、利益よりもキャッシュ・フローのほうが大きく減少し、その後の期には、キャッシュ・フローのほうが大きくなる。

②収益の実現主義による計上(売上債権の計上)

収益は、商品の引渡し等によって実現した時点で計上される。そのため、掛売りでは、利益は計上されても、代金の回収は後の期となる。

なお、このほか、貸倒引当金などの引当金の計上も、現金の支出を伴わずに費用を計上するため、同様の差を生む。

(設例)機械設備を第1期首に1,000で現金購入。耐用年数5年、残存価額ゼロ、定額法。毎期、現金売上500、現金支出の費用200とする(単位:万円)

項目第1期第2期第3期第4期第5期合計
売上(現金収入)5005005005005002,500
現金支出の費用−200−200−200−200−200−1,000
減価償却費(1,000÷5年)−200−200−200−200−200−1,000
利益100100100100100500
営業活動による収支(500−200)3003003003003001,500
設備投資の支出−1,0000000−1,000
現金収支(合計)−700300300300300500

利益は毎期100で安定しているが、現金収支は第1期に−700、その後は300となり、期ごとにずれる。もっとも、5期の合計は、どちらも500で一致する。

【このほかの例(このうち2つを書けばよい)】

  • 貸倒引当金などの引当金の計上:現金の支出がない時点で、費用を計上する。
  • 未払費用・前払費用などの経過勘定:費用の発生と現金の支払の時期がずれる。
  • 棚卸資産の払出しと期末評価:売上原価は払い出した分だけ費用になるが、仕入の現金支出は仕入時に生じる。評価損は現金の支出を伴わない。
  • 仕入債務の計上(掛仕入):費用や資産は計上されるが、支払は後の期になる。
  • 繰延資産の償却:支出時に資産計上し、その後、数期にわたり費用化する。
  • のれん・無形固定資産の償却:取得時に支出し、その後、償却費として費用化する。
  • 減損損失の計上:現金の支出を伴わない損失である。
  • 退職給付費用の計上:勤務期間にわたり費用を計上するが、現金の支払は退職時や年金資産への拠出時になる。
  • 資産除去債務に係る費用配分:除去費用を資産計上し、減価償却を通じて費用化するが、現金の支出は除去時になる。
  • 有価証券の評価損益・売買目的有価証券の時価評価:現金の増減を伴わない損益が生じる。
  • 税効果会計(法人税等調整額):現金の納税額と、損益計算書の税金費用がずれる。
  • 収益認識(工事進行基準など):工事の進行度に応じて売上を計上するが、代金の入金は引渡しの時期などによる。

根拠:企業会計原則 第二 一A(発生主義)、第二 三B(実現主義)、第三 五(減価償却)、注解20

【やわらかい解答】

①減価償却

1,000万円の機械を買うと、お金は買った日に1,000万円出ていく。しかし、費用としては、5年に分けて毎年200万円ずつ計上する。だから、買った年は「お金は大きく減っているのに、利益はあまり減らない」という、ずれが生じる。

②掛売り(売上の計上)

商品を渡した時点で売上を計上するので、代金が翌月に入る「掛売り」なら、利益は出ているのに、お金はまだ入っていない。このずれが、利益とキャッシュ・フローの違いになる。

利益は「その期の成果」、キャッシュ・フローは「その期のお金の出入り」を表している。時点を切り分ける会計処理があるかぎり、この2つは一致しない。

ほかにもある例

  • 貸倒引当金:まだ取りっぱぐれていないのに、「取れないかも」と見て費用にする。お金は出ていない。
  • 未払費用・前払費用:電気代を使った月と払う月が違う。
  • 棚卸資産:仕入れて払ったお金と、売れた分だけ費用にする計算が、時点でずれる。
  • 掛仕入:商品を仕入れても、代金は後で払う。
  • 繰延資産・のれんの償却:先にお金を払い、あとで少しずつ費用にする。
  • 減損損失:お金は出ていないが、損として計上する。
  • 退職給付費用:働いた期間に費用にするが、お金を払うのは退職のときだ。
  • 有価証券の評価損益:売っていないのに、時価の変化で損益が出る。
  • 税効果会計:会計上の税金費用と、実際に納める税金がずれる。

(2)② 現在までのキャッシュ・フロー情報だけでよいという主張

投資家が将来キャッシュフローを予測するために、情報ではなく、現在までのキャッシュフロー情報だけを開示すればよいという主張について、「本討議資料」に照らして、正しいか誤りかを示したうえで、その根拠を説明しなさい。

【会計基準に準拠した解答】

結論:誤りである。

本討議資料は、財務報告の目的を、投資のポジションとその成果を測定して開示することとする。このうち、投資の成果を示す利益情報は、基本的には過去の成果を表すが、企業価値評価の基礎となる将来キャッシュ・フローの予測に広く用いられている。

根拠は、次の2点である。

  • キャッシュ・フロー情報は、投資の支出と回収の時期に左右される。たとえば、設備投資の支出は先に生じ、その成果は後の期に表れる。そのため、現在までのキャッシュ・フローだけでは、その期にどれだけの成果をあげたのかが分からない。
  • 投資家は、成果の絶対的な大きさだけでなく、それを生み出した投資のストックと比べた収益性(効率性)も重視する。利益情報は、投資のストックの情報と組み合わせることで、これを示せる。キャッシュ・フロー情報だけでは、これができない。

根拠:討議資料 財務会計の概念フレームワーク 第1章 財務報告の目的(結論の背景を含む)

【やわらかい解答】

結論:誤りだ。

たとえば、ある会社が今年、大きな機械を買ったとする。今年のお金の出入りだけを見ると、大幅なマイナスだ。しかし、その機械は、来年以降、毎年利益を生み出す。お金の出入りだけを見て、「この会社は稼げていない」と判断するのは、早すぎる。

利益の情報があれば、「その機械でいくら稼いだのか」「投じたお金に対して、効率よく稼げているのか」が分かる。投資家は、そうした成果と効率を見て、将来のお金の動きを予想する。だから、お金の出入りだけでは足りず、利益の情報も必要になる。

(3) 下線部b:投資のストックとしての機械設備

下線部bの例として機械設備を想定したとき、次の各問に答えなさい。

(3)① 減価償却の定義と目的

現在の財務報告制度では、機械設備には減価償却という手続きが適用される。このとき減価償却の(a)定義と(b)目的について説明しなさい。

【会計基準に準拠した解答】

(a)定義

減価償却とは、有形固定資産の取得原価を、その耐用期間にわたり、一定の方法によって各期に費用として配分する手続である。

(b)目的

費用配分の原則に従い、固定資産の取得原価を、その固定資産が収益の獲得に貢献する各期に配分する。これにより、収益と費用を各期で対応させ、適正な期間損益を計算することが目的である。

投資のストックである機械設備は、成果(収益)を生み出す元手だ。その原価を成果に対応させて費用化するのが、減価償却である。

(設例)機械設備の取得原価1,000、耐用年数5年、残存価額ゼロ、定額法(単位:万円)

期期首の帳簿価額減価償却費期末の帳簿価額
第1期1,000200800
第2期800200600
第3期600200400
第4期400200200
第5期2002000

根拠:企業会計原則 第二 一A、第三 五、注解20、企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書第三(結論の背景を含む)

【やわらかい解答】

(a)定義

買った機械の代金を、使える年数で割って、毎年少しずつ費用にしていく手続きだ。

(b)目的

機械は、買った年だけでなく、何年にもわたって売上に貢献する。そこで、代金を使う年数に振り分け、「売上を上げた年に、その分の費用をぶつける」ようにする。こうすると、毎年の利益が、実態に近い金額になる。これが目的だ。

たとえば、1,000万円の機械を5年使うなら、毎年200万円ずつを費用にする。

(3)② 将来キャッシュ・フローを割り引いた金額の変動を成果に反映させる方法

機械設備から得られる将来キャッシュフローを割り引いた金額の変動を投資の成果に反映させる計算方法は、「本討議資料」に照らして、正しいか誤りかを示したうえで、その根拠を説明しなさい。

【会計基準に準拠した解答】

結論:誤りである。

根拠は、次の2点である。

  • 将来キャッシュ・フローを割り引いた金額は、企業価値を見積もる計算そのものである。本討議資料は、財務報告の目的を、投資家が企業価値を評価するための基礎となる情報の提供に置いている。企業価値の見積りは投資家が行うものであり、財務報告が企業価値そのものを成果として示すものではない。
  • 機械設備のような事業用の資産は、事業のために使い続けるもので、売却して成果を得ることを予定していない。その将来キャッシュ・フローは不確実で、割引現在価値の変動は、経営者の主観的な見積りに左右される未確定のものだ。投資の成果は、事実として確定した時点で認識するのが、投資のポジションとその成果を測定して開示する目的に合致する。

(設例)機械設備から、毎年末に100の収入を3年間得られる見込み。割引率5%(単位:万円、端数処理は小数第2位まで)

項目取得時1年後
将来キャッシュ・フローの割引現在価値272.32
(95.24+90.70+86.38)
185.94
(95.24+90.70)
1年間に回収したキャッシュ・フロー―100.00
割引現在価値の変動(185.94+100−272.32)―+13.62
見積りが毎年80に下方修正された場合の割引現在価値(80×1.8594)―148.75
その場合の変動(148.75+100−272.32)―−23.57

何も売っておらず、お金も増えていないのに、割引の計算と見積りの変更だけで、+13.62や−23.57という「成果」が動いてしまう。これを投資の成果とするのは適切でない。

根拠:討議資料 財務会計の概念フレームワーク 第1章 財務報告の目的(結論の背景を含む)

【やわらかい解答】

結論:誤りだ。

「この機械が、将来いくら稼ぎそうか」を現在の価値に直した金額は、いわば「機械の予想の値段」だ。その予想が増えたり減ったりしただけで、「儲かった」「損した」と数えるのは、おかしい。まだ何も売っておらず、お金も受け取っていないからだ。

しかも、将来の稼ぎは、見積もる人の考え方で、大きく変わってしまう。会社の予想の値段を決めるのは、投資家の仕事だ。会社は、その判断の材料になる、確かな事実(実際に稼いだ成果)を示せばよい。

だから、機械が実際に稼いだ成果を、利益として示す方法のほうが、財務報告の目的に合っている。

(4) 自己創設のれんの資産計上の禁止

現在の財務報告制度では、自己創設のれんの資産計上は禁止されている。この点について、次の各問に答えなさい。

(4)① 自己創設のれんとは

自己創設のれんとは何かを説明しなさい。

【会計基準に準拠した解答】

自己創設のれんとは、企業が他の企業を取得することなく、自ら内部で創り出した、超過収益力をいう。

超過収益力とは、同種の事業を営む他の企業の平均を超える収益を、継続的にあげる能力である。その源泉は、ブランド、顧客基盤、技術力、優れた経営や従業員の力などにある。

これに対し、他の企業を買収した際に、支払った対価が、取得した識別可能な純資産の時価を超える部分は、のれんとして資産に計上される。

根拠:企業結合に関する会計基準(のれんの定義・結論の背景を含む)、討議資料 財務会計の概念フレームワーク 第1章(結論の背景を含む)

【やわらかい解答】

会社が、自分の力で育てあげた「ブランド力」や「お客さんの信頼」のことだ。同じ業界の他社より、よく儲かる力と言い換えてもよい。

たとえば、同じ商品を売っているのに、あのお店の分だけ行列ができ、高くても売れる。この「人気の力」が、自己創設のれんだ。他の会社を買ったときに、買値の中に含まれる「のれん」とは、育った経緯が異なる。

(4)② 自己創設のれんの資産計上が禁止されている理由

「本討議資料」に照らして、自己創設のれんの資産計上が禁止されている理由について説明しなさい。

【会計基準に準拠した解答】

自己創設のれんは、企業の超過収益力、すなわち企業価値の一部そのものを表す。本討議資料によれば、財務報告の目的は、投資家が企業価値を評価する際の基礎となる、投資のポジションとその成果の情報を提供することにある。企業価値そのものを財務諸表に示すことは、目的に含まれない。

自己創設のれんを資産に計上すると、次の問題が生じる。

  • その金額は、将来の超過収益の見積りに依存し、経営者の主観が入り込む。信頼性のある測定が難しい。
  • 事実として確定していない、将来の期待を、資産として財務諸表に持ち込むことになる。投資家が自ら行う企業価値の見積りと重複し、情報の信頼性を損なう。

そのため、自己創設のれんの資産計上は禁止されている。

根拠:討議資料 財務会計の概念フレームワーク 第1章 財務報告の目的(結論の背景を含む)

【やわらかい解答】

理由は、「いくらの価値があるのか」を、誰も確かには決められないからだ。

自社のブランド力に「10億円の価値がある」と書いてよいなら、社長が「いや、50億円だ」と言い張ることもできてしまう。これでは、貸借対照表の数字が信用できなくなる。

会社の価値を見積もるのは、投資家の仕事だ。会社は、「実際にいくら使って、いくら稼いだのか」という、確かな事実を示すことに徹する。そのため、自分で育てたのれんは、資産にしない。

(5) 利害調整に会計情報が用いられる例

上記「本討議資料」の抜粋箇所は財務報告の主たる目的について述べているが、開示される会計情報は利害調整にも用いられる。このとき利害調整に会計情報が用いられる例を2つ答えなさい。

【会計基準に準拠した解答】

①配当規制(分配可能額の算定)

株主と債権者の利害を調整するため、株主への配当は、会計上の純資産などから算定される分配可能額の範囲内に限られる(会社法461条)。会計情報が、配当の限度額の算定に用いられる。

②債務契約(財務制限条項)

貸し手(債権者)と企業との間の借入契約において、純資産額や利益の水準を一定以上に保つことなどが条件とされる。会計情報が、契約の遵守状況の判断に用いられる。

なお、このほか、経営者の業績連動型報酬の算定や、課税所得の計算の出発点としても、会計情報は用いられる。

【このほかの例(このうち2つを書けばよい)】

  • 経営者報酬契約:業績連動型の報酬(利益や売上高に連動する賞与など)の算定に用いられる。株主と経営者の利害を調整する。
  • 課税所得の計算:法人税の課税所得は、確定した決算の利益を出発点に算定される。企業と国(課税当局)の利害を調整する。
  • 労使交渉:賃金や賞与の水準の交渉で、企業の業績(利益)が、判断材料になる。
  • 債権者保護のための債務超過の判定:貸借対照表の純資産が、債務超過か否かの判断に用いられる。
  • 企業結合・合併における株式の交換比率の算定:純資産や利益の情報が、株主間の利害調整のため、算定の基礎になる。
  • 原価補償契約・公共料金の算定:発注者と受注者の間で、原価計算の結果が、契約金額や料金の決定に用いられる(総括原価方式など)。
  • 金融機関などの規制:自己資本比率の維持など、会計情報に基づく規制が、預金者・債権者の保護に用いられる。
  • 上場維持基準・開示規制:債務超過などの会計情報が、市場への参加の可否を判断する基準になる。

根拠:会社法461条(配当等の財源規制)、討議資料 財務会計の概念フレームワーク 第1章(結論の背景を含む)

【やわらかい解答】

①配当の上限

会社が、利益もないのに、株主へお金を配りすぎると、会社の財産が減り、お金を貸した人が困る。そこで、決算の数字から、「配ってよい上限」を計算する。会計情報で、株主と貸した人の利益のバランスをとっている。

②借入契約の条件

銀行がお金を貸すとき、「純資産を一定以上に保つこと」といった条件をつけることがある。決算の数字がこの条件を下回ると、銀行は、返済を早めるよう求められる。会計情報が、銀行と会社の約束を守らせるものさしになっている。

ほかにもある例

  • 社長や役員のボーナス:利益が増えたら報酬も増える、という約束の計算に使う。
  • 税金の計算:決算の利益をもとに、会社が納める税金を計算する。
  • 給料の交渉:会社が儲かっているかどうかが、従業員との話し合いの材料になる。
  • 債務超過かどうかの判定:借金のほうが財産より多いかを、決算の数字で確かめる。
  • 合併のときの株の交換比率:両社の決算の数字をもとに、損得が出ないように決める。
  • 取引先との価格の取り決め:かかった費用を基準に、代金を決める契約がある。
  • 銀行などの規制:財務の健全さ(自己資本比率など)を、決算の数字で確かめる。

問題2固定資産の減損とは?認識・測定の流れと、時価評価との違い

次の文章は「固定資産の減損に係る会計基準」(以下、この問題において「本基準」という。)からの抜粋である。これに関連して、以下の各問に答えなさい。

2.減損損失の認識

 (1)減損のがある資産又は資産グループについての減損損失を認識するかどうかの判定は、資産又は資産グループから得られるの総額と帳簿価額を比較することによって行い、資産又は資産グループから得られるの総額が帳簿価額を下回る場合には、減損損失を認識する。

 (2)減損損失を認識するかどうかを判定するためにを見積る期間は、資産の経済的又はa資産グループ中の主要な資産の経済的とのいずれか短い方とする。

3.減損損失の測定

 減損損失を認識すべきであると判定された資産又は資産グループについては、帳簿価額をまで減額し、当該減少額を減損損失としてb当期の損失とする。

(1) 空欄ア〜オの語句

文中の空欄(ア)から(オ)までに入る適切な語句を答えなさい。

(2) 下線部a・b:主要な資産の定義と減損損失の表示区分

上記の文中の①下線部aに関して主要な資産の定義を説明するとともに、②下線部bに関して減損損失の損益計算書における表示区分を述べなさい。

【会計基準に準拠した解答】

①主要な資産の定義

主要な資産とは、資産グループの将来キャッシュ・フローの生成能力にとって、最も重要な構成資産をいう。資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数が、将来キャッシュ・フローを見積る期間(20年を上限)を決める基準となる。

②損益計算書における表示区分

減損損失は、原則として、特別損失に計上する。

根拠:固定資産の減損に係る会計基準 二 2(注解を含む)、四 2

【やわらかい解答】

①主要な資産

グループの稼ぎにとって、いちばん大事な資産のことだ。たとえば、工場全体で1つの資産グループなら、製品をつくる中心の機械がこれにあたる。

②表示区分

減損損失は、毎年起こるものではなく、たまたま起こる損失だ。そのため、損益計算書では、原則として「特別損失」に載せる。

(3) 固定資産の減損とはどのような状態か

「固定資産の減損」とはどのような状態か、「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」に基づいて、説明しなさい。

【会計基準に準拠した解答】

固定資産の減損とは、資産の収益性の低下により、投資額の回収が見込めなくなった状態をいう。

減損処理とは、このような場合に、一定の条件の下で、回収可能性を反映するように、固定資産の帳簿価額を減額する会計処理である。

この処理は、取得原価基準の下で行われる、帳簿価額の臨時的な減額であり、資産の時価の変動を損益に反映する時価評価とは異なる。

根拠:固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書 二(基本的考え方)(結論の背景を含む)

【やわらかい解答】

「その資産に投じたお金を、もう取り返せそうにない」という状態だ。

たとえば、1,000万円で買った機械が、需要の減少で、今後は合計700万円分しか稼げないとする。このとき、帳簿に1,000万円のままで載せておくのは、実態とずれている。そこで、取り返せる額(700万円)まで、帳簿の金額を切り下げる。この切り下げが、減損処理だ。

(4) 「本基準」の対象となる資産

以下に掲げる各資産から「本基準」の対象となるものをすべて選択し、記号で答えなさい。

(a)のれん (b)繰延税金資産 (c)投資不動産 (d)土地
(e)開業費 (f)その他有価証券 (g)建物 (h)前払年金費用

(5) 回収可能価額

減損損失の測定に際して、上記空欄について、①その定義及び②帳簿価額と比較する理由を簡潔に答えなさい。

【会計基準に準拠した解答】

①定義

回収可能価額とは、資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額をいう。正味売却価額は、資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定される金額である。使用価値は、資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生じると見込まれる、将来キャッシュ・フローの現在価値である。

②帳簿価額と比較する理由

帳簿価額は、その資産に投下した資金のうち、まだ回収されていない残高を表す。減損とは、投資額の回収が見込めなくなった状態であるから、回収できる金額(回収可能価額)と、回収すべき金額(帳簿価額)とを比べ、回収できない部分を損失として処理する必要がある。

また、企業は、売却するか使い続けるかのうち、有利な方を選べる。そのため、回収できる金額は、正味売却価額と使用価値のうち、高い方になる。

(設例)機械の帳簿価額1,000。割引前の将来キャッシュ・フローの総額900。時価650、処分費用見込額50。使用価値(将来キャッシュ・フローの現在価値)700(単位:万円)

手順内容金額
認識の判定割引前将来キャッシュ・フローの総額900は、帳簿価額1,000を下回る。そのため、減損損失を認識する900<1,000
正味売却価額時価650−処分費用見込額50600
使用価値将来キャッシュ・フローの現在価値700
回収可能価額600と700のいずれか高い方700
減損損失帳簿価額1,000−回収可能価額700300

なお、割引前将来キャッシュ・フローの総額が1,100であれば、帳簿価額1,000を上回るため、減損損失は認識しない。

根拠:固定資産の減損に係る会計基準 二 2、二 3、注解(回収可能価額・正味売却価額・使用価値の定義)

【やわらかい解答】

①回収可能価額とは

「その資産から、最大でいくら回収できるか」という金額だ。回収の方法は2つある。1つは、今すぐ売る方法(売った金額から、売る手間の費用を引いたもの)。もう1つは、使い続けて稼ぐ方法(今後稼げる金額を、今の価値に直したもの)だ。この2つのうち、多いほうが回収可能価額になる。

②なぜ帳簿価額と比べるのか

帳簿価額は、「これから回収しなければならない金額」だ。回収できる最大の金額(回収可能価額)が、それより少なければ、その差は、もう取り返せない。この取り返せない分が、損失になる。

たとえば、売れば600万円、使えば700万円の機械なら、会社は、使うほうを選ぶ。回収できるのは700万円だ。帳簿が1,000万円なら、差額の300万円が、取り返せない損失になる。

(6) 減損処理後の貸借対照表における表示

減損処理を行った資産の貸借対照表における表示について、原則的な方法を説明しなさい。

【会計基準に準拠した解答】

原則として、減損処理を行った資産の帳簿価額から減損損失を直接控除し、控除後の金額を、その後の取得原価とする(直接控除形式)。

ただし、減価償却を行う有形固定資産については、減損損失累計額を、減価償却累計額に合算して、取得原価から間接控除する形式も認められる(間接控除形式)。

(設例)建物の取得原価1,000、減価償却累計額400、回収可能価額450。減損損失は、帳簿価額600−450=150(単位:万円)

項目直接控除形式(原則)間接控除形式(容認)
取得原価450
(600−150が新たな取得原価)
1,000
減価償却累計額(減損損失累計額を含む)―−550
(400+150)
貸借対照表の帳簿価額450450

どちらの形式でも、貸借対照表に載る帳簿価額は、450で同じである。

根拠:固定資産の減損に係る会計基準 四 1

【やわらかい解答】

原則は、「減らした分を、資産の金額から直接引いてしまう」やり方だ。

たとえば、帳簿の金額が600万円の建物で、150万円の減損損失が出たなら、600−150=450万円を、新しい取得原価として載せる。すっきりした、分かりやすい表示だ。

ただし、減価償却をしている資産なら、「減価償却累計額」の中に減損の分も合算して、取得原価1,000万円から引く、という書き方も認められている。どちらでも、最終的な帳簿の金額(450万円)は同じになる。

(7) 減損損失の戻入れを行わない理由

減損処理後に見積り等の変更により減損損失が減額される場合には、減損損失の戻入れを行う必要があるという考え方がある。「本基準」では、「減損損失の戻入れは、行わない」(三,2)とされるが、その理由を2つ答えなさい。

【会計基準に準拠した解答】

①取得原価基準の枠組みを維持するため

減損損失は、減損の存在が相当程度確実な場合に限って認識・測定される。減損処理後の帳簿価額は、新たな取得原価とみなされる。これを戻し入れて、帳簿価額を増額すると、取得原価基準の枠を超えて、評価益を計上するのと同じ結果になる。

②事務負担を増大させるおそれがあるため

戻入れを行うには、減損処理後も、毎期、将来キャッシュ・フローの見積りなどを見直して、戻入れの要否を判定しなければならない。これは、企業の事務負担を増大させるおそれがある。

根拠:固定資産の減損に係る会計基準 三 2(意見書の結論の背景を含む)

【やわらかい解答】

①評価益を認めることになってしまうから

減損は、「もう取り返せないお金」を損として認める処理だ。値段が上がるたびに、元の金額まで戻すことを認めると、「値上がり益」を計上するのと同じになる。取得したときの価格を基準にする、という会計の基本ルールから外れてしまう。

②手間がかかりすぎるから

戻入れを認めるなら、減損処理をした資産について、毎年、「回復していないか」を調べ直す必要がある。会社の負担が重くなる。

(8) 時価評価と減損処理の基本的な相違点

金融商品に適用されている時価評価と、固定資産に適用されている減損処理の基本的な相違点について、簡潔に説明しなさい。

【会計基準に準拠した解答】

時価評価は、投資の価値の変動そのものを、市場価格によって測定し、その評価差額を、損益(又は純資産)に反映する会計処理である。価値が上がる場合も下がる場合も反映され、洗替え方式では、翌期に評価差額が戻される。

これに対し、減損処理は、取得原価基準の下で、投資額の回収が見込めなくなった場合に、回収可能性を反映するように、帳簿価額を切り下げる会計処理である。価値が上がる場合は反映されず、一度切り下げた帳簿価額は、戻し入れない。

(設例)取得原価1,000。期末に価値が700に下落し、翌期末に900へ回復。減価償却は考えない。減損処理は、認識の要件を満たすものとする(単位:万円)

時点時価評価(洗替え方式)減損処理
取得時帳簿価額1,000帳簿価額1,000
期末(価値が700に下落)評価損300を計上し、700減損損失300を計上し、700
翌期末(価値が900に回復)評価益200を計上し、900戻入れは行わない。700のまま

なお、価値が取得原価を超えて上昇した場合も、時価評価では反映されるが、減損処理では反映されない。

根拠:固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書 二(結論の背景を含む)、固定資産の減損に係る会計基準 三 2、金融商品に関する会計基準(時価評価)

【やわらかい解答】

時価評価は、「今の値段」に合わせて、帳簿を毎回書き換える方法だ。値段が下がれば損、上がれば益になる。値段が戻れば、帳簿も元に戻る。

減損処理は、「もう取り返せない」と判断したときだけ、帳簿の金額を切り下げる方法だ。値段が上がっても、帳簿は上げない。一度下げた金額は、戻さない。

たとえば、1,000万円の資産の価値が700万円に下がり、のちに900万円まで戻ったとする。時価評価なら、帳簿も900万円に戻る。減損処理なら、帳簿は700万円のままだ。「値段の変化を追いかける」のが時価評価、「取り返せない分だけ削る」のが減損処理、という違いがある。

出題の要旨

国土交通省HPのコピペです。

【問題1】
本問題は、財務報告の主たる目的と利益計算についての理解を問うものである。論点としては、財務報告の主たる目的が投資家の意思決定に資する情報を提供することであることを示した上で、利益情報とキャッシュフロー情報の優劣、利益計算と事業投資、財務報告の目的からみた自己創設のれんの資産計上、財務報告の副次的な利用を取り上げている。概念フレームワーク自体の内容を問うことよりも、上記論点にみられるような企業会計の基本的な考え方の理解を確認することを目的としている。
【問題2】
この問題は、固定資産の減損に関する認識・測定・開示についての基本的な理解を問うものである。(1)は、基準の穴埋め問題であり、減損損失の認識・測定に関する基礎的な理解を問うている。(2)は、基礎的な用語の定義及び減損損失の損益計算書における表示について、(3)から(6)は、減損処理に関する具体的な理解について問うている。(7)は、減損損失の戻入れを行わない理由について、(8)は、減損処理と時価評価との相違点について、それぞれ理解しているかを問うている。

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