【令和6年不動産鑑定士試験】会計学解答

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【会計学】令和6年度 不動産鑑定士試験 論文式 過去問と模範解答

問題1:有形固定資産の取得原価と減価償却/問題2:キャッシュ・フロー計算書

問題文の空欄(ア)などをクリックすると解答が出る。同じ記号は連動して切り替わる。

問題1有形固定資産の取得原価とは?取得方法ごとの決め方と、支払利息の扱いを整理

次の文章は、有形固定資産の取得原価に関するものである。これに関連して、以下の各問に答えなさい。

 a減価償却の基礎となる有形固定資産の取得原価の決定は、その取得方法ごとに、現行制度上、次のように定められている。

 まず、購入による場合は、購入代価に原則として当該資産の引取費用等のを含めることによって決められる。次に、自家建設による場合は、適正なに従って製造原価を計算し、これに基づいて取得原価を算定する。ただし、bこれに係る借入資本の支払利息は、原則として製造原価に算入しないものとされている。

 なお、現物出資による場合は、対価として用いられた自社の株式の公正な評価額若しくは取得した財貨又はサービスの公正な評価額のうち、いずれかより高いをもって測定可能な評価額で算定する。また、交換による場合は、交換に供した自己所有の固定資産の適正なをもって取得原価とするが、自己所有の有価証券と交換した場合には当該有価証券の又は適正なをもって取得原価とする。

 そして、贈与による場合は、等を基準として公正に評価した額をもって取得原価とする。

(「企業会計原則第三,五,D」、「原価計算基準第1章,5」、「連続意見書第三」及び「企業会計基準第8号ストック・オプション等に関する会計基準第15項」より一部を抜粋し再構成)

(1) 空欄ア〜オの語句

文中の空欄(ア)から(オ)までに入る適切な語句を答えなさい。

(2) 減価償却の意義・本質と自己金融作用

下線部aの「減価償却」の①意義と本質及び②その自己金融作用について説明しなさい。

【会計基準に準拠した解答】

①意義と本質

減価償却とは、有形固定資産の取得原価を、その耐用期間にわたって、一定の方法により各期に費用として配分する手続である。

その本質は、固定資産の価値の減少を測定することではなく、取得原価を使用期間の各期に配分する「費用配分」にある。これにより、固定資産を使って得た収益と、その取得に要した費用とが、各期において対応する。

②自己金融作用

減価償却費は、現金の支出を伴わない費用である。そのため、販売代金として回収した資金のうち、減価償却費に相当する額は、企業内部に留保される。留保された資金は、固定資産の再投資(取替え)などに充てることができる。この作用を、自己金融作用という。

(設例)設備の取得原価1,000、耐用年数5年、残存価額ゼロ、定額法。毎期、現金売上500、現金支出の費用200とする(単位:万円)

項目毎期の金額
現金売上500
現金支出の費用−200
減価償却費(1,000÷5年)−200
利益(配当などで社外に出しうる額)100
現金の増加額(500−200)300
企業内に留保される額(300−100=減価償却費相当額)200
5年間の留保額の合計1,000

根拠:企業会計原則 第三 五、企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書第三(結論の背景を含む)

【やわらかい解答】

①減価償却とは何か

高い機械を買ったとき、その代金を買った年に全部、費用にするのは不自然だ。その機械は、何年もかけて売上に貢献するからである。そこで、買った値段を使う年数で割って、毎年少しずつ費用にしていく。これが減価償却だ。

大事なのは、「機械の値打ちがいくら下がったか」を測っているわけではない点だ。「買った代金を、使った年数に振り分ける」計算にすぎない。

②自己金融作用とは何か

減価償却費は、帳簿の上では費用だが、その年にお金が出ていくわけではない。お金はすでに、機械を買った時点で払い終わっている。

そのため、売上で入ってきたお金のうち、減価償却費の分は会社の中に残る。この残ったお金で、古くなった機械を買い替えることができる。外から借りなくても、会社が自分で資金を準備できるので、「自己金融」と呼ぶ。

たとえば、1,000万円の設備を5年で償却すると、毎年200万円が社内に残る。5年たつと合計1,000万円がたまり、同じ設備を買い替えられる。

(3) 注解20に記載されていない減価償却の方法

減価償却費の計算方法として「企業会計原則注解,注20」に記載されていないものは次のどれか、記号で答えなさい。

(A)生産高比例法
(B)廃棄法
(C)級数法
(D)定額法
(E)取替法
(F)定率法

(4) 支払利息の取得原価への算入

下線部bに関連して、以下の問にそれぞれ簡潔に答えなさい。

(4)① 支払利息を取得原価に算入しない理由

支払利息を取得原価に算入しない理由は何か答えなさい。

【会計基準に準拠した解答】

支払利息は、資金を調達するという財務活動に伴う費用であり、固定資産の購入や製造そのものに必要な価値の犠牲ではない。したがって、経営目的である給付の生産に関連しない財務費用として、原価に算入しない。

また、利息を原価に算入すると、同じ資産でも、自己資本で賄うか借入で賄うかという資本調達の方法によって、取得原価が変わってしまう。これでは、企業間・期間相互の比較可能性が損なわれる。そのため、原則として算入しない。

根拠:原価計算基準 第1章 5、企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書第三(結論の背景を含む)

【やわらかい解答】

利息は、「お金を借りた代金」であって、「モノをつくる代金」ではないからだ。

たとえば、同じ機械を、自分のお金で買った会社と、借金で買った会社があるとする。借金の利息を機械の値段に足してしまうと、同じ機械なのに、値段が違ってしまう。機械そのものの値段は、どちらも同じはずだ。そこで、利息は機械の値段に入れず、別の費用(支払利息)として扱う。

(4)② 支払利息を例外的に算入できる場合

支払利息を例外的に取得原価に算入することができるのはどのような場合か答えなさい。

【会計基準に準拠した解答】

事業の用に供するための固定資産を自家建設する場合に、その建設に要する資金を借り入れたときの利息のうち、稼働前の期間に属するものは、取得原価に算入することができる。

稼働前の期間は、その資産から収益がまだ生まれていない。そのため、この期間の利息は、資産を使える状態にするために必要な支出といえ、取得原価に含めて、稼働後の各期に費用配分することが認められる。

根拠:企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書第三(結論の背景を含む)

【やわらかい解答】

自分で工場を建てる場合で、建てるためのお金を借りたとき、その工場が動きはじめる前の期間の利息だけは、工場の値段に足してよい、という例外がある。

たとえば、工場の完成まで2年かかり、その間に借入の利息を払ったとする。この間、工場はまだ1円も稼いでいない。この利息は、工場を使えるようにするための費用とみなして、工場の値段に入れる。そして、稼働したあとに、減価償却を通じて、収益と対応させながら費用にしていく。

問題2キャッシュ・フロー計算書とは?3つの区分と、利息・配当金の置き場所

キャッシュ・フロー計算書について、「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」(以下、この問題において「本基準」という。)に基づいて、以下の各問に答えなさい。

(1) キャッシュ・フロー計算書を作成する理由

なぜキャッシュ・フロー計算書を作成するのか、簡潔に説明しなさい。

【会計基準に準拠した解答】

貸借対照表と損益計算書は、発生主義に基づいて作成されるため、企業の資金の収支の状況を、直接には示さない。利益が出ていても、資金が不足する場合もある。

そこで、一会計期間におけるキャッシュ・フローの状況を、活動区分別に報告するために、キャッシュ・フロー計算書を作成する。これにより、企業の資金の獲得能力や支払能力、資金の調達と運用の状況などを、投資家や債権者が判断できるようにする。

根拠:「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」の設定に関する意見書(作成目的を含む)

【やわらかい解答】

損益計算書の「利益」と、手元の「お金」は、一致しないからだ。

たとえば、商品を売っても、代金がまだ入っていなければ、利益は出ているのに、お金は増えていない。この状態で、仕入先への支払いや借金の返済の期日が来れば、黒字なのに払えず、倒産することもある。

そこで、お金の出入りだけを、営業・投資・財務の活動別に示した計算書を作る。会社が、お金を稼ぐ力と、払う力を、持っているかどうかが分かる。

(2) 資金の範囲

次の文章に関連して、以下の各問に答えなさい。

「本基準」には、キャッシュ・フロー計算書が対象とする「資金の範囲は、及びとする。」(第二,一)と規定されている。

(2)① 空欄ア・イの語句

文中の空欄(ア)及び(イ)に入る適切な語句を答えなさい。

(2)② 空欄ア・イの内容

文中の空欄(ア)及び(イ)の内容について、簡潔に答えなさい。

【会計基準に準拠した解答】

(ア)現金

手許現金及び要求払預金をいう。要求払預金には、当座預金、普通預金、通知預金などが含まれる。

(イ)現金同等物

容易に換金可能であり、かつ、価値の変動について僅少なリスクしか負わない短期投資をいう。たとえば、取得日から満期日又は償還日までの期間が3か月以内の、定期預金、譲渡性預金、コマーシャル・ペーパー、売戻し条件付現先、公社債投資信託などである。

根拠:連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準 第二 一(注解を含む)

【やわらかい解答】

(ア)現金

財布の中の現金と、いつでも引き出せる預金のことだ。当座預金や普通預金が、これにあたる。

(イ)現金同等物

すぐに現金にでき、値段が大きく変わる心配もない、短い期間の投資のことだ。たとえば、満期まで3か月以内の定期預金がそうである。ほぼ現金と同じ扱いだと考えればよい。

(3) キャッシュ・フロー計算書の3つの区分

「本基準」によれば、キャッシュ・フロー計算書には3つの区分を設けなければならない(第二,二,1)とされている。これに関して、以下の各問に答えなさい。

(3)① 営業活動・投資活動によるキャッシュ・フロー

「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分及び「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分には、それぞれどのようなキャッシュ・フローが記載されるか、説明しなさい。

【会計基準に準拠した解答】

営業活動によるキャッシュ・フロー

営業損益計算の対象となった取引のほか、投資活動及び財務活動以外の取引によるキャッシュ・フローを記載する。たとえば、商品及び役務の販売による収入、商品及び役務の購入による支出、従業員及び役員に対する報酬の支出などである。

投資活動によるキャッシュ・フロー

固定資産の取得及び売却、現金同等物に含まれない短期投資の取得及び売却などによるキャッシュ・フローを記載する。たとえば、有形固定資産や有価証券の取得による支出と売却による収入、貸付けによる支出と回収による収入などである。

根拠:連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準 第二 二 1

【やわらかい解答】

営業活動

会社の本業で動くお金のことだ。商品を売って受け取るお金、仕入れや経費、給料として払うお金などがここに入る。

投資活動

将来のために、設備や株を買ったり売ったりして動くお金のことだ。工場の機械を買う支出、持っている株を売った収入、お金を貸す支出などがここに入る。

(3)② 直接法と間接法の内容と長所

「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分の表示方法として「直接法」及び「間接法」の2つが認められている。それぞれの表示方法の内容と長所について、簡潔に答えなさい。

【会計基準に準拠した解答】

直接法

内容:主要な取引ごとに、キャッシュ・フローを総額で表示する方法である。たとえば、営業収入、商品の仕入れによる支出、人件費の支出などを、それぞれ総額で示す。

長所:営業活動によるキャッシュ・フローの内容が、収入と支出の総額で、直接に分かる。そのため、将来のキャッシュ・フローを予測するのに有用である。

間接法

内容:税金等調整前当期純利益に、非資金損益項目、営業活動に係る資産及び負債の増減、投資活動及び財務活動の区分に含まれる損益項目を加減して、表示する方法である。

長所:当期純利益と、営業活動によるキャッシュ・フローとの関係が分かる。両者の差の原因が示されるので、利益の質を分析できる。また、直接法に比べて、作成の手間も少ない。

(設例)売上500(うち売上債権の増加30)、仕入原価250(うち仕入債務の増加10)、人件費110(全額現金払い)、減価償却費20。利息と法人税は考えない(単位:万円)

直接法金額間接法金額
営業収入(500−30)470税引前当期純利益(500−250−110−20)120
商品の仕入れによる支出(250−10)−240減価償却費(非資金損益項目)+20
人件費の支出−110売上債権の増加−30
  仕入債務の増加+10
営業活動によるCF120営業活動によるCF120

根拠:連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準 第二 二 1(注解を含む)

【やわらかい解答】

直接法

お金の出入りを、そのまま並べる方法だ。「売上で470万円入った」「仕入れで240万円出た」「給料で110万円出た」と書いていく。お金がどこから入り、どこへ出たかが、一目で分かる。これが長所である。

間接法

損益計算書の「利益」からスタートして、お金の動きに直す方法だ。利益120万円に、お金が出ていない費用(減価償却費20万円)を足す。代金をまだ受け取っていない分(売上債権の増加30万円)は引く。まだ払っていない分(仕入債務の増加10万円)は足す。こうして、お金の動き120万円にたどり着く。

利益とお金が、なぜ食い違うのかが分かるのが長所だ。作るのも簡単なので、実務では、間接法がよく使われている。

(3)③ 法人税等に係るキャッシュ・フローの区分

「本基準」には、「法人税等(住民税及び利益に関連する金額を課税標準とする事業税を含む。)に係るキャッシュ・フローは、「によるキャッシュ・フロー」の区分に記載する。」(第二,二,2)と規定されている。(ウ)に入る適切な語句を答えなさい。

(3)④ 利息及び配当金の表示区分

「本基準」では、継続的な適用を条件として、利息及び配当金の表示区分について、以下のA又はBの2つの方法の選択適用が認められている。以下の空欄(エ)から(キ)までに入る適切な語句を答えなさい。

A:受取利息、受取配当金及び支払利息は「によるキャッシュ・フロー」の区分に記載し、支払配当金は「によるキャッシュ・フロー」の区分に記載する方法

B:受取利息及び受取配当金は「によるキャッシュ・フロー」の区分に記載し、支払利息及び支払配当金は「によるキャッシュ・フロー」の区分に記載する方法

(3)⑤ Bの方法の考え方

利息及び配当金について、上記④の2つの方法のうち、Bの方法はどのような観点から利息及び配当金を捉えていると考えられるか、簡潔に説明しなさい。

【会計基準に準拠した解答】

Bの方法は、利息及び配当金を、資金の運用と調達の成果として捉える観点に立つ。

受取利息及び受取配当金は、資金の運用(投資)から得られる成果である。そのため、投資活動によるキャッシュ・フローに記載する。支払利息及び支払配当金は、資金の調達に要するコストである。そのため、財務活動によるキャッシュ・フローに記載する。

なお、Aの方法は、利息の収支が損益計算に含まれることから、営業活動によるキャッシュ・フローに記載する。これは、損益計算書との対応を重視した観点である。

根拠:連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準 第二 二 2(結論の背景を含む)

【やわらかい解答】

Bの方法は、「お金を運用した結果」と「お金を借りたコスト」として、利息や配当金を見る考え方だ。

たとえば、会社が余ったお金で株を買い、配当をもらったとする。この配当は、投資したお金から得た成果なので、「投資活動」に入れる。反対に、借金の利息や、株主への配当を払うのは、お金を集めたことへのお礼のようなものだ。だから、「財務活動」に入れる。

これに対してAの方法は、利息も損益計算書に出てくる項目だから、損益と同じく「営業活動」に入れる、という考え方だ(配当の支払いだけは、財務活動)。

出題の要旨

国土交通省HPのコピペです。

【問題1】
この問題は、減価償却の基礎となる有形固定資産の取得原価の算定方法及び減価償却についての基本的な理解を問うものである。論点は、購入や自家建設など取得方法によって異なる取得原価の算定方法について、基本的な知識を問うとともに、会計学上重要かつ基本的な概念である減価償却の意義、目的、そして、その効果について問うている。
【問題2】
この問題は、キャッシュ・フロー計算書についての基本的な理解を問うものである。(1)はキャッシュ・フロー計算書の作成目的について問うている。(2)はキャッシュ・フロー計算書の「資金の範囲」について問うている。(3)はキャッシュ・フロー計算書の表示方法に関して問うている。①は「営業活動」及び「投資活動」によるキャッシュ・フローの内容、②は「営業活動によるキャッシュ・フロー」の表示方法としての「直接法」及び「間接法」の内容とその長所、③は法人税等に係るキャッシュ・フローの表示方法について、④及び⑤は利息及び配当金の表示方法について、それぞれ理解しているかを問うている。

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