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【会計学】令和4年度 不動産鑑定士試験 論文式 過去問と模範解答
問題1:のれん/問題2:有価証券
問題文の空欄(ア)などをクリックすると解答が出る。同じ記号は連動して切り替わる。
問題1のれんとは?「差額」が資産になる理由と、償却のルール
次の文章は、のれんの会計処理方法について述べたものである。以下の各問に答えなさい。
のれんの会計処理方法としては、その効果の及ぶ期間にわたり「規則的なを行う」方法と、「規則的なを行わず、のれんの価値が損なわれた時にを行う」方法が考えられる。「規則的なを行う」方法によれば、企業結合の成果たると、その対価の一部を構成する投資消去差額のというの対応が可能になる。また、のれんは投資原価の一部であることに鑑みれば、のれんを規則的にする方法は、投資原価を超えて回収された超過額を企業にとっての利益とみる考え方とも首尾一貫している。(中略)
「規則的なを行う」方法と、「規則的なを行わず、のれんの価値が損なわれた時にを行う」方法との選択適用については、の手段として用いられる可能性もあることから認めないこととした。
(企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」第105項、第108項より一部を抜粋し再構成)
(1) 空欄ア〜オの語句
文中の空欄(ア)から(オ)までに入る適切な語句を答えなさい。
(2) のれんの「効果の及ぶ期間」
下線部の「効果の及ぶ期間」について、企業会計基準では最長何年以内と想定されているか答えなさい。
(3) のれんとは何か、貸借対照表に計上される根拠
のれんとはどのようなものか、また、それが貸借対照表に計上される根拠について答えなさい。
【会計基準に準拠した解答】
のれんとは、取得原価が、受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額(識別可能資産・負債の時価を基礎とした純額)を上回る場合の、その超過額をいう。
のれんは、被取得企業が有するブランド、技術、ノウハウ、顧客基盤などに由来する、他企業を上回る収益を稼得できる能力(超過収益力)を表す。取得企業は、この超過収益力から将来得られる収益を見込んで、時価純額を超える対価を支払っている。したがって、のれんを含む投資消去差額は投資原価の一部であり、将来の収益獲得に貢献する無形の価値に対する支出である。この支出は将来の収益と対応させるべき価値を有するため、費用とせず資産として貸借対照表に計上する。計上後は、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたり、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する。
根拠:企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」第31項、第32項、第105項
【やわらかい解答】
のれんとは、会社を買うときに、その会社の「中身の値打ち」よりも高く払った差額のことだ。
たとえばラーメン店を買う場合を考える。店舗、設備、食材などの時価から借金を引いた中身の値打ちが3,000万円だったとする。ところが、行列ができる人気店で、味のノウハウも常連客もついているので、4,000万円を払って買ったとしよう。この差額の1,000万円がのれんだ。
この1,000万円は、「この店なら今後も人並み以上に稼げるはずだ」という期待に対して払った代金である。捨ててしまったお金ではなく、将来のもうけを生み出す力を買ったお金だ。だから、費用にはせず、資産として貸借対照表に載せる。載せたあとは、その力が続く期間(最長20年)に分けて、少しずつ費用にしていく。
(4) 負ののれんとは何か、発生原因
負ののれんとはどのようなものか、また、それが発生する原因について簡潔に答えなさい。
【会計基準に準拠した解答】
負ののれんとは、取得原価が、受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を下回る場合の、その不足額をいう。
発生原因は、次のとおりである。
- 被取得企業の収益性が低い、または将来の負担(将来の損失や費用の発生見込み)があるため、時価純額を下回る価格で取得された場合
- 売り手が売却を急ぐなど、取引上の交渉の結果として割安に取得できた場合
- 識別可能な資産・負債の把握漏れや、時価の見積りの誤りがある場合
なお、負ののれんが生じる見込みの場合は、原因を検討し、すべての識別可能資産・負債が把握され、配分が適切かを見直す。それでもなお生じる場合は、発生した事業年度の利益として処理する。
根拠:企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」第31項、第33項
【やわらかい解答】
負ののれんとは、会社を買うときに、その会社の「中身の値打ち」よりも安く買えたときの差額のことだ。のれんとは逆向きの差額である。
たとえば、中身の値打ちが3,000万円の店を2,500万円で買えたなら、500万円が負ののれんになる。安く買えた主な理由は次の3つだ。
- その店は赤字続きで、これからも出費がかさみそうなので、買い手が値引きを求めた。
- 売り手が急いで手放したがっていて、買い手が有利に交渉できた。
- 調べ漏れの資産があったり、資産の値打ちを低く見積もりすぎていたりした。
見直してもなお差額が残るときは、その年度の利益として計上する。
(5) 買入れのれんは計上できて自己創設のれんは計上できない理由
買入れによるのれんが貸借対照表への計上を認められる一方で、自己創設によるのれんの計上が認められない理由について簡潔に答えなさい。
【会計基準に準拠した解答】
買入れのれんは、企業結合という外部との取引により対価が支払われており、その金額が投資原価(取得原価)の一部として客観的に確定する。そのため、取得原価主義に基づいて資産に計上できる。
これに対し、自己創設のれんは、超過収益力を企業が内部で生み出したものであり、対価の支払いがないので客観的な取得原価が存在しない。また、超過収益力は将来の収益見込みに依存し、客観的な測定が困難である。これを計上すると、経営者の恣意性が介入して財務諸表の信頼性が損なわれるおそれがあるため、計上は認められない。
【やわらかい解答】
理由は「金額に根拠があるかどうか」だ。
他社を買ったときののれんは、実際に代金を払っているので、「いくらの価値か」が買収額というお金の動きではっきり分かる。
一方、自分の会社が長年かけて育てた人気やブランドは、誰にも代金を払っていないので、金額の根拠がない。もし計上を認めると、「うちのブランドは10億円だ」と社長が言えば10億円になってしまい、気分で決算の数字が変わりかねない。決算書の信頼性を守るため、自己創設のれんは載せない。
問題2有価証券の時価評価:売買目的とその他有価証券で評価差額の扱いが違う理由
次の文章は、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」からの抜粋である。これに関連して、以下の各問に答えなさい。
15.時価の変動によりを得ることを目的として保有する有価証券(以下「売買目的有価証券」という。)は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損益として処理する。
16.満期まで所有する意図をもって保有する(以下「満期保有目的の債券」という。)は、取得原価をもって貸借対照表価額とする。ただし、債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債券金額との差額の性格がと認められるときは、に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としなければならない。
(略)
18.売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券(以下「その他有価証券」という。)は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額はに基づき、次のいずれかの方法により処理する。
(1) 評価差額の合計額を純資産の部に計上する。
(2) 時価が取得原価を上回る銘柄に係る評価差額は純資産の部に計上し、時価が取得原価を下回る銘柄に係る評価差額は当期の損失として処理する。
(略)
(1) 空欄ア〜オの語句
空欄(ア)から(オ)にあてはまる適切な語句を答えなさい。
(2) 売買目的有価証券とその他有価証券の時価評価
売買目的有価証券とその他有価証券はいずれも時価評価されるが、時価評価差額の処理は異なる。これに関して、次の問に答えなさい。
(2)① いずれも時価評価される根拠
いずれも時価評価される根拠について、説明しなさい。
【会計基準に準拠した解答】
有価証券は、市場が存在し、市場価格に基づく客観的な時価を容易に入手できる。時価は、投資者にとって有用な情報であり、企業が保有する有価証券の価値を最も適切に表す。
売買目的有価証券は、時価の変動により利益を得る目的で保有するため、時価の変動が投資の成果そのものを表す。その他有価証券も、事業遂行上の必要性から直ちに売買・換金することには制約を伴う場合があるものの、換金の可能性を有している。そのため、いずれも、期末時点の時価を貸借対照表価額とすることが投資者への情報提供として適切である。
根拠:企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第15項、第18項(結論の背景を含む)
【やわらかい解答】
株は市場で毎日値段がつくので、「今いくらか」を誰でも確かめられる。買ったときの値段が古くなっていても、決算書の読み手が知りたいのは、いまその株がいくらの値打ちかだ。
売買目的の株は、値上がりを狙って持っているので、時価はそのまま「運用の成績」になる。持ち合い株などのその他有価証券も、必要になれば売ってお金に換えられる。だから、どちらも決算日の時価で載せるのが、読み手にとって親切である。
(2)② 洗い替え方式のみのその他有価証券と、売買目的有価証券の会計処理の相違
その他有価証券に対しては、のみが採用されるが、売買目的有価証券には他の方法も採用できる。その会計処理の相違について、説明しなさい。
【会計基準に準拠した解答】
洗い替え方式とは、期末に計上した評価差額を翌期首に取得原価へ振り戻し、翌期末に改めて取得原価と時価との差額を評価差額として計上する方法である。
その他有価証券は、洗い替え方式のみが認められる。したがって、翌期首に前期末の評価差額を振り戻し、期末に取得原価と時価との差額を改めて計上する。売却時の損益も、取得原価を基準に算定する。
売買目的有価証券は、洗い替え方式のほか、切放し方式も採用できる。切放し方式は、期末の時価を翌期以降の新たな取得原価とみなし、翌期首に振り戻しを行わない方法である。この場合、翌期末の評価差額は前期末の時価との差額となり、売却損益も前期末の時価を基準に算定する。
(設例)取得原価100、前期末時価120、当期末時価110の売買目的有価証券(単位:円)
| 項目 | 洗い替え方式 | 切放し方式 |
|---|---|---|
| 前期末の評価差額(120−100) | +20 | +20 |
| 当期首の振戻し | −20 | なし |
| 当期末の評価差額の算定 | 110−100=+10 | 110−120=−10 |
| 当期の評価損益の合計 | −20+10=−10 | −10 |
| 当期末の帳簿価額 | 110 | 110 |
| 売却損益の算定基礎 | 取得原価(100) | 前期末の時価(120) |
当期の評価損益の合計は両方式で一致するが、期首の振戻し仕訳の有無と、売却損益・評価差額の算定基礎が異なる。
【やわらかい解答】
洗い替え方式は、毎年いったん「買った値段」に巻き戻してから、あらためて期末の時価と比べる方法だ。切放し方式は、巻き戻さずに、前の期末の時価をそのまま「新しい買値」として次の期を始める方法である。
100円で買った株が、去年の期末に120円、今年の期末に110円だったとする。洗い替え方式なら、期首に去年の+20を取り消し、期末に「110−100=+10」と計算し直す。切放し方式なら、120円を新しい出発点として「110−120=−10」と計算する。1年間の損益の合計はどちらも−10円だが、途中の巻き戻しをするかどうかが違う。
その他有価証券では、切放し方式は使えず、必ず洗い替え方式にする。売買目的の株は、どちらを選んでもよい。
(2)③ 時価評価差額の処理が異なる理由
時価評価差額の処理が異なる理由について、説明しなさい。
【会計基準に準拠した解答】
売買目的有価証券は、時価の変動により利益を得ることを目的として保有し、事業遂行上の制約なく、いつでも売買・換金できる。したがって、時価の変動は投資の成果を表すため、評価差額を当期の損益として処理する(第15項)。
これに対し、その他有価証券は、保有目的が様々で、持合い株式のように事業遂行上の必要から直ちに売買・換金することに制約を伴うものを含む。そのため、時価の変動を直ちに投資の成果とみることは適当でない。また、評価差額は売却するまでは未実現であり、財務活動の成果として当期の損益に計上できない。そこで、評価差額は損益とせず、純資産の部に計上する(第18項)。
根拠:企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第15項、第18項(結論の背景を含む)
【やわらかい解答】
ポイントは、「その株を持つ目的」である。
売買目的の株は、値上がりしたら売って利益を出すために持っている。だから、値段が動いたことがそのまま会社の成績になり、損益に入れる。
その他有価証券は、取引先との関係維持のために持っている株のように、簡単には売れない事情があるものが多い。値上がりしても、売らないかぎり現金が増えたわけではないので、「もうけた」とは言いにくい。そこで損益には入れず、純資産の部に置いておく。
(2)④ 時価下落銘柄の評価差額を損失とする方法が認められる理由
その他有価証券の評価差額について、時価が取得原価を下回る銘柄に係る評価差額を当期の損失として処理する方法も認められているが、その理由を簡潔に述べなさい。
【会計基準に準拠した解答】
時価が取得原価を下回る場合、投資額の回収可能性が低下している可能性がある。そこで、保守主義の観点から、評価損を純資産に留めず、当期の損失として早期に認識する処理を容認している。
根拠:企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第18項(2)(結論の背景を含む)
【やわらかい解答】
値下がりした株は、そのまま値が戻らず、投資したお金が回収できない可能性がある。会計では「悪い話は早めに、良い話は慎重に」という考え方(保守主義)がある。値上がり分は純資産に置いておくだけにして、値下がり分は損失として早めに決算書に出しておく。この方法が選べるのは、そのためだ。
出題の要旨
国土交通省HPのコピペです。
【問題1】
この問題は、のれんの会計処理方法を通して、会計学上の資産とは何かについての基本的な理解を問うたものである。論点は、のれんが資産として貸借対照表上に計上される根拠を会計学的に明らかにした上で、現行制度上、どのような会計処理をすべきかについて、企業会計基準に照らして説明することを求めている。 また、のれんに対するより深い理解を測るために、負ののれんが発生する原因、自己創設のれんの計上が認められない理由についても問うている。
【問題2】
この問題は、有価証券の評価に関する基本的な理解を問うものである。(1)は基準の穴埋め問題であるが、保有目的別に分類される有価証券の評価の理解を問うている。(2)は売買目的有価証券とその他有価証券の評価に関する差異を理解しているかを問うている。①は有価証券の時価評価の意味、②は洗い替え方式と切り放し方式の相違について、③は時価評価差額の処理がなぜ異なるのか、④はその他有価証券の部分純資産直入法が認められる理由を、それぞれ理解しているかを問うている。

1992年生まれ。3人目の育休中。
初めて不動産投資をするときにつまづくことが多く、当時知りたかったことをまとめています。最近は不動産鑑定士の勉強についての記事ばかりです。ドメイン分ければ良かったか・・・。

