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令和4年 不動産鑑定士試験 論文式 会計学
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問題1 のれんとは?「目に見えない価値」を資産に計上し、償却していく理由
次の文章は、のれんの会計処理方法について述べたものである。以下の各問に答えなさい。
のれんの会計処理方法としては、その効果の及ぶ期間にわたり「規則的なを行う」方法と、「規則的なを行わず、のれんの価値が損なわれた時にを行う」方法が考えられる。「規則的なを行う」方法によれば、企業結合の成果たると、その対価の一部を構成する投資消去差額のというの対応が可能になる。また、のれんは投資原価の一部であることに鑑みれば、のれんを規則的にする方法は、投資原価を超えて回収された超過額を企業にとっての利益とみる考え方とも首尾一貫している。(中略)
「規則的なを行う」方法と、「規則的なを行わず、のれんの価値が損なわれた時にを行う」方法との選択適用については、の手段として用いられる可能性もあることから認めないこととした。
(企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」第105項、第108項より一部を抜粋し再構成)
(1) 空欄補充:(ア)から(オ)に入る語句
文中の空欄(ア)から(オ)までに入る適切な語句を答えなさい。
(2) のれんの償却期間:「効果の及ぶ期間」は最長何年か
下線部の「効果の及ぶ期間」について、企業会計基準では最長何年以内と想定されているか答えなさい。
【会計基準に準拠した解答】
最長20年以内と想定されている。のれんは、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたり、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する。
根拠:企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」第32項
【やわらかい解答】
答えは20年である。のれんは「買収した会社が、これからもうけを生み続けてくれる期間」にわたって、少しずつ費用にしていく。その期間の上限が20年だ。たとえば効果が10年続くと見込むなら10年で償却し、もっと長く続きそうでも20年を超えて償却期間を取ることはできない。
(3) のれんとは何か、なぜ貸借対照表に計上されるのか
のれんとはどのようなものか、また、それが貸借対照表に計上される根拠について答えなさい。
【会計基準に準拠した解答】
のれんとは:企業結合(買収)において、取得原価が、受け入れた資産と引き受けた負債に配分された純額(識別可能資産・負債の時価を基礎とした額)を上回る場合の、その超過額である。
計上の根拠:この超過額は、被取得企業が持つ、個々には識別できない無形の価値(ブランド、ノウハウ、組織力、シナジーなど)から生じる超過収益力に対して支払った対価である。取得企業は、将来の超過収益によって回収することを見込んで対価を支払っている。したがって、のれんは投資原価の一部であり、将来の収益獲得に貢献する資産として貸借対照表に計上する。取得原価は現実の取引で確定した金額であるため、測定の客観性も確保されている。
根拠:企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」第31項、第105項
【やわらかい解答】
のれんは、会社を買うときに「帳簿上の財産の値段」を超えて払った上乗せ分である。
たとえば、財産の時価から借金を引いた純額が8億円のA社を、10億円で買ったとする。上乗せの2億円がのれんだ。なぜ上乗せして払うのか。A社には、ブランド、顧客との信頼関係、優秀な従業員など、財産としては数えにくいが他社より多く稼ぐ力があるからだ。
この「稼ぐ力」に払った2億円は、将来の利益で取り戻すための投資である。使ってなくなる費用ではなく、将来もうけを生む権利を買ったと考えられるので、資産として貸借対照表に載せる。
(4) 負ののれんとは何か、なぜ発生するのか
負ののれんとはどのようなものか、また、それが発生する原因について簡潔に答えなさい。
【会計基準に準拠した解答】
負ののれんとは:取得原価が、受け入れた資産と引き受けた負債に配分された純額を下回る場合の、その不足額である。
発生原因:被取得企業の収益性が低いなど、将来の損失や負担が見込まれるため、その分だけ純資産の時価より安く取得できた(割安購入となった)場合に生じる。また、識別可能資産・負債の把握漏れや配分の誤りといった、取得原価の配分の問題から生じる場合もある。
なお、まず識別可能資産・負債の把握と配分を見直し、それでもなお不足額が生じる場合に、負ののれん発生益として当期の利益に計上する。
根拠:企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」第33項
【やわらかい解答】
負ののれんは、「買ってみたら思ったより安かった」ときの差額である。
たとえば、財産の時価の純額が10億円の会社を8億円で買えたとする。安く買えた2億円が負ののれんだ。
安くなる理由は主に2つある。1つ目は、赤字続きで先行きが暗く、売り手が安くても手放したいと考えている場合だ。将来のリストラ費用や損失を見込んで、値引きされている。2つ目は、調べ漏れである。時価評価し忘れた財産があると、実際より安く買ったように見えてしまう。
(5) 買入れのれんは計上できて、自己創設のれんは計上できない理由
買入れによるのれんが貸借対照表への計上を認められる一方で、自己創設によるのれんの計上が認められない理由について簡潔に答えなさい。
【会計基準に準拠した解答】
買入れによるのれんは、企業結合という外部との取引で対価が支払われ、取得原価が客観的に確定する。したがって、取得原価の配分残余として、その金額を客観的に測定できる。
これに対し、自己創設のれんは、企業が自らの超過収益力を内部で評価するものであり、金額を裏付ける取引が存在しない。測定は経営者の見積りに依存して恣意的となり、財務諸表の信頼性を損なう。また、自己創設のれんの形成に要した支出は、広告宣伝費や人件費などとして発生時に費用処理されており、これを資産計上することは、未実現の企業評価益の計上にあたる。取得原価主義の下では認められない。
【やわらかい解答】
買ったのれんには「いくらで買ったか」という証拠が残る。金額がはっきりしているので、決算書に載せても疑われない。
一方、自分で育てたブランド力には、レシートがない。いくらの価値があるかは人によって言い分が違う。自社で自由に見積もって資産に載せてよいなら、利益をいくらでも膨らませられてしまい、決算書が信用されなくなる。たとえば、老舗のそば屋が「うちの暖簾は1億円」と勝手に載せられたら、誰も決算書を信じないだろう。だから、自己創設のれんは計上しない。
問題2 有価証券の時価評価とは?売買目的とその他有価証券で評価差額の扱いが違う理由
次の文章は、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」からの抜粋である。これに関連して、以下の各問に答えなさい。
15.時価の変動によりを得ることを目的として保有する有価証券(以下「売買目的有価証券」という。)は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損益として処理する。
16.満期まで所有する意図をもって保有する(以下「満期保有目的の債券」という。)は、取得原価をもって貸借対照表価額とする。ただし、債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債券金額との差額の性格がと認められるときは、に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としなければならない。
(略)
18.売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券(以下「その他有価証券」という。)は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額はに基づき、次のいずれかの方法により処理する。
(1) 評価差額の合計額を純資産の部に計上する。
(2) 時価が取得原価を上回る銘柄に係る評価差額は純資産の部に計上し、時価が取得原価を下回る銘柄に係る評価差額は当期の損失として処理する。
(略)
(1) 空欄補充:(ア)から(オ)に入る語句
空欄(ア)から(オ)にあてはまる適切な語句を答えなさい。
売買目的有価証券とその他有価証券はいずれも時価評価されるが、時価評価差額の処理は異なる。これに関して、次の問に答えなさい。
(2)① いずれも時価評価される根拠
いずれも時価評価される根拠について、説明しなさい。
【会計基準に準拠した解答】
有価証券の時価は、市場で形成される客観的な価格であり、企業の投資活動の成果を表す。時価は、投資者の意思決定にとって有用な情報である。
売買目的有価証券は、時価の変動により利益を得ることを目的として保有され、時価で売却・換金することが事業遂行上も制約されない。したがって、時価で評価することが適切である。
その他有価証券は、直ちに売買・換金を行うことを目的とはしていない。しかし、事業遂行上の必要などから売却を行う場合があり、市場の動向によっては売却することも想定される。したがって、時価情報は投資者にとって有用であり、時価で評価する。
根拠:企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第15項、第18項および結論の背景
【やわらかい解答】
株式や債券は、市場で毎日値段がつく。買ったときの値段(取得原価)のまま載せても、今いくらで売れるかは分からない。決算書を読む人が知りたいのは「今の価値」だ。だから時価で載せる。
売買目的の株は、値上がりで利益を出すために持っているので、時価で評価するのは当然だ。その他有価証券は、取引先との関係などで持っている株が多く、すぐ売るつもりはない。それでも、必要になれば売ることもあるので、今の値段を示しておくほうが読む人に親切だ。
(2)② 洗替え方式と切放し方式:会計処理の相違
その他有価証券に対しては、のみが採用されるが、売買目的有価証券には他の方法も採用できる。その会計処理の相違について、説明しなさい。
【会計基準に準拠した解答】
洗替え方式は、期末に計上した評価差額を翌期首に振り戻し、帳簿価額を取得原価に戻す方法である。切放し方式は、評価後の時価を翌期以降の帳簿価額(新たな取得原価)とし、振り戻しを行わない方法である。
その他有価証券は洗替え方式のみが認められる。売買目的有価証券は、洗替え方式と切放し方式のいずれかを選択できる。
| 洗替え方式 | 切放し方式 | |
|---|---|---|
| 翌期首 | 評価差額を振り戻し、帳簿価額を取得原価に戻す | 振り戻さず、前期末の時価を帳簿価額として引き継ぐ |
| 売却時 | 売却価額と取得原価の差額で売却損益を認識する | 売却価額と前期末の時価(帳簿価額)の差額で売却損益を認識する |
| 採用できる有価証券 | その他有価証券、売買目的有価証券 | 売買目的有価証券のみ |
根拠:企業会計基準第10号 第15項、第18項、金融商品会計に関する実務指針
【やわらかい解答】
取得原価100万円の株が、期末に120万円になったとする。翌期にこの株を130万円で売った場合を考える。
- 洗替え方式:翌期の初めに、いったん100万円に戻してから始める。売却益は、130万円−100万円=30万円と数える(前期に計上した評価益20万円の戻しは別に処理する)。
- 切放し方式:120万円を新しいスタート地点にして翌期を始める。売却益は、130万円−120万円=10万円と数える。
つまり、評価した結果を翌期に「リセットするか、引き継ぐか」の違いである。その他有価証券は洗替え方式だけ、売買目的有価証券はどちらも選べる。
(2)③ 時価評価差額の処理が異なる理由
時価評価差額の処理が異なる理由について、説明しなさい。
【会計基準に準拠した解答】
売買目的有価証券は、時価の変動により利益を得ることを目的として保有される。時価の変動そのものが企業の財務活動の成果であり、保有期間中でも時価で売却・換金できる。したがって、評価差額は当期の損益として処理する。
これに対し、その他有価証券は、事業遂行上の必要などから直ちに売買・換金を行うことには制約がある。評価差額は、売却されていない未実現のものであり、投資のリスクから解放されたとはいえない。時価の変動を当期の成果とみなすことは適当でない。したがって、評価差額は損益に計上せず、純資産の部に計上する。
根拠:企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第15項、第18項および結論の背景
【やわらかい解答】
売買目的の株は、値上がりで稼ぐために持っている。値上がり分は、まさに会社の「かせぎ」なので、その期の損益に入れる。
その他有価証券は、取引先との付き合いなどで持っていて、気軽には売れない。値上がりしても、まだ売っていないので、お金は手元に入っていない。それを「もうけ」として利益に入れてしまうと、実態とずれる。だから、いったん純資産の部に置いておき、売って現金になったときに初めて損益にする。
(2)④ 時価が取得原価を下回る銘柄の評価差額を損失とする理由
その他有価証券の評価差額について、時価が取得原価を下回る銘柄に係る評価差額を当期の損失として処理する方法も認められているが、その理由を簡潔に述べなさい。
【会計基準に準拠した解答】
これは部分純資産直入法(第18項(2))であり、保守主義の観点によるものである。時価が取得原価を下回る場合は、投資額の一部を回収できないおそれがあるため、その評価損を早期に損失として認識することが、財政状態を保守的に示すうえで妥当である。
根拠:企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第18項(2)および結論の背景
【やわらかい解答】
値上がり分は「まだ売っていないから」利益にはしない。一方、値下がり分は、損をしている可能性が高いので、早めに損として見せておくほうが安全だ。うれしい話は慎重に、悪い話は早めに伝える。この考え方を「保守主義」という。
出題の要旨
国土交通省HPのコピペです。
【問題1】
この問題は、のれんの会計処理方法を通して、会計学上の資産とは何かについての基本的な理解を問うたものである。論点は、のれんが資産として貸借対照表上に計上される根拠を会計学的に明らかにした上で、現行制度上、どのような会計処理をすべきかについて、企業会計基準に照らして説明することを求めている。 また、のれんに対するより深い理解を測るために、負ののれんが発生する原因、自己創設のれんの計上が認められない理由についても問うている。
【問題2】
この問題は、有価証券の評価に関する基本的な理解を問うものである。(1)は基準の穴埋め問題であるが、保有目的別に分類される有価証券の評価の理解を問うている。(2)は売買目的有価証券とその他有価証券の評価に関する差異を理解しているかを問うている。①は有価証券の時価評価の意味、②は洗い替え方式と切り放し方式の相違について、③は時価評価差額の処理がなぜ異なるのか、④はその他有価証券の部分純資産直入法が認められる理由を、それぞれ理解しているかを問うている。

1992年生まれ。3人目の育休中。
初めて不動産投資をするときにつまづくことが多く、当時知りたかったことをまとめています。最近は不動産鑑定士の勉強についての記事ばかりです。ドメイン分ければ良かったか・・・。

