長いこと出題されてないですね。
問題文は常に表示してあり、各小問の「解答の骨子を見る」をクリックすると骨子が開き、骨子中の「※」は基準・留意事項の原文に直接の記載がない補足である。
過去問
平成3年 貸家及びその敷地の意義と鑑定評価額の決定参考(平成28年より前の出題)
貸家及びその敷地について、次の問に答えなさい。
(1) 貸家及びその敷地とは何か説明しなさい。
解答の骨子を見る
- 不動産の類型とは、その有形的利用及び権利関係の態様に応じて区分される不動産の分類をいう(総論第2章)。
- 建物及びその敷地の類型は、有形的利用及び権利関係の態様に応じて、自用の建物及びその敷地、貸家及びその敷地、借地権付建物、区分所有建物及びその敷地等に分けられる(総論第2章第2節Ⅱ)。
- 貸家及びその敷地とは、建物所有者とその敷地の所有者とが同一人であるが、建物が賃貸借に供されている場合における当該建物及びその敷地をいう(総論第2章第2節Ⅱ)。
- 要件は次の2点である。
- 建物所有者とその敷地の所有者とが同一人であること。
- 建物が賃貸借に供されていること。
- 自用の建物及びその敷地は、同一人であり、その所有者による使用収益を制約する権利の付着していない場合をいう(同Ⅱ)。貸家及びその敷地は、建物が賃貸借に供されている点で自用と区別される。
- 建物は敷地と結合して有機的に効用を発揮し、両者は一体として鑑定評価の対象とされるのが通例である(各論第1章第3節)。
- ※ 建物賃貸借には借地借家法が適用され、借家人が保護される(更新拒絶等に正当事由が必要。借地借家法28条)。そのため所有者の使用収益が制約され、価格が自用の場合と異なり得る。
(2) 貸家及びその敷地の鑑定評価額はどのように決定するか述べなさい。
解答の骨子を見る
- 鑑定評価額は、実際実質賃料(売主が既に受領した一時金のうち売買等に当たって買主に承継されない部分がある場合には、当該部分の運用益及び償却額を含まない。)に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格を標準とし、積算価格及び比準価格を比較考量して決定する(各論第1章第2節Ⅱ)。
- 収益価格を標準とする根拠:収益還元法は賃貸用不動産の価格を求める場合に特に有効であり、収益は不動産の経済価値の本質を形成する(総論第7章第1節Ⅳ1)。
- この場合、次の事項を総合的に勘案する(各論第1章第2節Ⅱ1.〜7.)。
- 将来における賃料の改定の実現性とその程度
- 契約に当たって授受された一時金の額及びこれに関する契約条件
- 将来見込まれる一時金の額及びこれに関する契約条件
- 契約締結の経緯、経過した借家期間及び残存期間並びに建物の残存耐用年数
- 貸家及びその敷地の取引慣行並びに取引利回り
- 借家の目的、契約の形式、登記の有無、転借か否かの別及び定期建物賃貸借(借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借)か否かの別
- 借家権価格
- 貸家及びその敷地を当該借家人が買い取る場合は、自用の建物及びその敷地となることによる市場性の回復等に即応する経済価値の増分が生ずる場合があることに留意する(各論第1章第2節Ⅱ)。
- 収益価格は、直接還元法又はDCF法により求める(総論第7章第1節Ⅳ2)。積算価格は原価法(同Ⅱ)、比準価格は取引事例比較法(同Ⅲ)による。
- ※ 積算価格・比準価格は、賃貸借の付着による影響(借家権価格等。総合勘案事項7)を考慮して修正する整理が一般的である。
平成6年 自用の建物及びその敷地と貸家及びその敷地(説明と鑑定評価の手法)参考(平成28年より前の出題)
(1) 不動産鑑定評価基準に掲げる「不動産の類型」のうち、「自用の建物及びその敷地」と「貸家及びその敷地」のそれぞれについて説明しなさい。
解答の骨子を見る
- 不動産の類型とは、その有形的利用及び権利関係の態様に応じて区分される不動産の分類をいい、不動産の種別とともに、不動産の経済価値を本質的に決定づけるものである(総論第2章)。
- 建物及びその敷地の類型は、自用の建物及びその敷地、貸家及びその敷地、借地権付建物、区分所有建物及びその敷地等に分けられる(総論第2章第2節Ⅱ)。
- 自用の建物及びその敷地とは、建物所有者とその敷地の所有者とが同一人であり、その所有者による使用収益を制約する権利の付着していない場合における当該建物及びその敷地をいう(同Ⅱ)。
- 貸家及びその敷地とは、建物所有者とその敷地の所有者とが同一人であるが、建物が賃貸借に供されている場合における当該建物及びその敷地をいう(同Ⅱ)。
- 両者の対比
- 共通点:建物所有者と敷地所有者が同一人である。
- 相違点:自用は使用収益を制約する権利が付着していないが、貸家は建物が賃貸借に供されている。
- ※ 貸家及びその敷地は、現実の賃貸借に基づく収益を基礎とするのに対し、自用の建物及びその敷地は、賃貸を想定した収益を基礎とする点で、価格の捉え方が異なる。
(2) これらの鑑定評価の手法について述べなさい。
解答の骨子を見る
- 自用の建物及びその敷地:積算価格、比準価格及び収益価格を関連づけて決定する(各論第1章第2節Ⅰ)。
- 建物の用途変更・改造が最有効使用と認められる場合は、用途変更等を行った後の経済価値の上昇の程度、必要とされる改造費等を考慮して決定する(同Ⅰなお書)。
- 建物の取壊しが最有効使用と認められる場合は、建物の解体による発生材料の価格から取壊し、除去、運搬等に必要な経費を控除した額を、当該敷地の最有効使用に基づく価格に加減して決定する(同Ⅰまた書)。
- 自用の不動産にも、賃貸を想定することにより収益還元法を適用する(総論第7章第1節Ⅳ1)。
- 貸家及びその敷地:実際実質賃料に基づく純収益等の現在価値の総和を求めて得た収益価格を標準とし、積算価格及び比準価格を比較考量して決定する(各論第1章第2節Ⅱ)。
- 総合勘案事項(Ⅱ1.〜7.)を勘案する。
- 借家人が買い取る場合は、自用となることによる市場性の回復等に即応する経済価値の増分に留意する。
- 各価格:積算価格は原価法(総論第7章第1節Ⅱ)、比準価格は取引事例比較法(同Ⅲ)、収益価格は収益還元法(同Ⅳ。直接還元法・DCF法)により求める。
- 対比:自用は3つの価格を関連づける(関連づけ型)。貸家は収益価格を標準とし、他の2つを比較考量する(収益価格標準型)。
平成16年 貸家及びその敷地の鑑定評価(求め方・一時金・純収益)参考(平成28年より前の出題)
貸家及びその敷地の鑑定評価について、次の問に答えなさい。
(1) 鑑定評価額の求め方について簡潔に述べなさい。また、求めるに当たって総合的に勘案すべきこととされている次の事項について説明しなさい。
解答の骨子を見る(鑑定評価額の求め方)
- 鑑定評価額は、実際実質賃料に基づく純収益等の現在価値の総和を求めて得た収益価格を標準とし、積算価格及び比準価格を比較考量して決定する(各論第1章第2節Ⅱ)。
- 実際実質賃料とは、実際に支払われている不動産に係るすべての経済的対価をいう(総論第7章第2節Ⅱ2(1))。
- 収益価格は、直接還元法又はDCF法により求める(総論第7章第1節Ⅳ2)。
- 総合勘案事項(Ⅱ1.〜7.)のうち、本問は2.(授受された一時金)と3.(将来見込まれる一時金)を問う。
① 契約に当たって授受された一時金の額及びこれに関する契約条件
解答の骨子を見る
- 一時金とは、権利金、敷金、保証金等をいう(総論第7章第2節Ⅰ)。賃料の前払的性格を有するもの(権利金等)と、預り金的性格を有するもの(保証金等)がある(総論第7章第1節Ⅳ3(1)ア(ア)、同第2節Ⅰ2)。
- 契約に当たって一時金が授受される場合、実質賃料は、支払賃料に、一時金の運用益及び償却額を併せたものとなる(総論第7章第2節Ⅰ1)。
- 賃貸用不動産の総収益は、支払賃料に、預り金的性格を有する保証金等の運用益、賃料の前払的性格を有する権利金等の運用益及び償却額並びに駐車場使用料等のその他収入を加えた額(支払賃料等)とする(総論第7章第1節Ⅳ3(1)ア(ア))。
- 売主が既に受領した一時金のうち買主に承継されない部分がある場合は、当該部分の運用益及び償却額を含まない(各論第1章第2節Ⅱかっこ書)。
- 運用利回りは、当該不動産の期待利回り、不動産の取引利回り、長期預金の金利、国債及び公社債利回り、金融機関の貸出金利等を比較考量して決定する(総論第7章第2節Ⅰ2)。
- ※ 契約条件とは、返還の要否・時期・額、償却の有無・方法、契約終了時の取扱い、買主への承継の有無等をいう。
- ※ 一時金の額と契約条件によって、運用益・償却額(総収益への加算額)が変わり、純収益が変わるため、総合勘案事項とされる。
② 将来見込まれる一時金の額及びこれに関する契約条件
解答の骨子を見る
- ※ 将来見込まれる一時金とは、契約更新時の更新料や、テナント入替時の新規契約に伴う権利金・敷金・保証金等の授受をいう。
- 将来の期間についても、一時金の運用益及び償却額は総収益に含まれる(総論第7章第1節Ⅳ3(1)ア(ア))。DCF法では毎期の純収益に織り込む。
- DCF法の適用に当たっては、賃貸借契約の内容並びに賃料及び貸室の稼動率の毎期の変動に留意する(同ア(ア))。
- 収益増加の見通しは、特に予測の限界を見極めなければならない(総論第7章第1節Ⅳ3(1)②)。将来の一時金も過大に見込まない。
- ※ 契約に当たって授受された一時金(①)は既に確定した額であるのに対し、②は将来の見込みであり、不確実性を伴う点が異なる。
(2) 収益価格を求めるために必要となる実際実質賃料に基づく純収益について、説明しなさい。
解答の骨子を見る
- 実際実質賃料とは、実際に支払われている不動産に係るすべての経済的対価をいう(総論第7章第2節Ⅱ2(1))。ただし、売主が既に受領した一時金のうち買主に承継されない部分の運用益及び償却額は含まない(各論第1章第2節Ⅱかっこ書)。
- 純収益とは、不動産に帰属する適正な収益をいい、不動産とこれに関与する資本、労働及び経営(組織)の諸要素の結合によって生ずる総収益から、資本、労働及び経営の貢献度に応じた分配分を控除した残余の部分をいう(総論第7章第1節Ⅳ3(1)①)。
- 純収益は、一般に1年を単位として総収益から総費用を控除して求める(同②)。
- 総収益は、支払賃料等(支払賃料+保証金等の運用益+権利金等の運用益及び償却額+駐車場使用料等のその他収入)とする(同ア(ア))。
- 総費用は、減価償却費(償却前の純収益を求める場合は計上しない)、維持管理費(維持費、管理費、修繕費等)、公租公課(固定資産税、都市計画税等)、損害保険料等の諸経費等を加算して求める(同イ)。
- 直接還元法の純収益は、初年度の純収益を採用する場合と標準化された純収益を採用する場合がある(同②なお書)。
- 総収益・総費用を直接的に把握し、各項目の過去の推移及び将来の動向を慎重に分析して適切に求める。収益増加の見通しは予測の限界を見極める(同②)。
- ※ 空室等による損失は、総収益から控除して把握する(証券化対象不動産の収益費用項目にも「空室等損失」がある。各論第3章第5節Ⅱ)。
平成20年 空室率が比較的高い賃貸事務所ビルの鑑定評価参考(平成28年より前の出題)
空室率が比較的高い賃貸事務所ビルの鑑定評価について、次の問に答えなさい。
(1) 不動産鑑定評価基準において貸家及びその敷地の鑑定評価額決定の際の総合勘案事項の1つとして「将来における賃料の改定の実現性とその程度」が掲げられているが、その理由を述べなさい。
解答の骨子を見る
- 「将来における賃料の改定の実現性とその程度」は、貸家及びその敷地の総合勘案事項の1つである(各論第1章第2節Ⅱ1.)。
- 貸家及びその敷地の収益価格は、実際実質賃料に基づく純収益等の現在価値の総和として求める(同Ⅱ)。つまり、現行の契約内容に基づく収益が出発点となる。
- ※ 継続中の契約の賃料(実際実質賃料)は、市場の賃料(新規賃料)と乖離していることがある。乖離が将来是正される(改定が実現する)か、その程度がどうかによって、将来の純収益が変動し、収益価格に影響する。
- ※ 賃料は、借地借家法32条1項に基づく増減請求等により改定され得るが、改定が実現するか否か、いつ・どの程度実現するかは、契約内容や市況による。
- ※ 空室率が比較的高い場合は、需給が緩んでおり、現行賃料が市場賃料より高ければ減額改定の可能性があり、低くても増額改定は容易でない。改定の実現性を慎重に見極める必要がある。
- 賃貸用不動産のDCF法の適用に当たっては、賃貸借契約の内容並びに賃料及び貸室の稼動率の毎期の変動に留意する(総論第7章第1節Ⅳ3(1)ア(ア))。
- 収益増加の見通しは、特に予測の限界を見極めなければならない(同②)。賃料改定の実現性を過大に見込んではならない。
- ※ 以上より、将来の賃料改定の実現性とその程度を見極め、将来の純収益に適切に反映させるため、総合勘案事項とされている。
(2) 空室部分の賃料を査定する方法について述べなさい。
解答の骨子を見る
- ※ 空室部分には現に賃貸借がなく実際実質賃料がないため、将来賃貸される場合に得られる新規賃料(市場で成約が見込まれる賃料)を査定し、収益価格の算定に反映する。
- 建物及びその敷地の正常賃料の鑑定評価額は、積算賃料及び比準賃料を関連づけて決定する。純収益を適切に求めることができるときは、収益賃料を比較考量して決定する(各論第2章第2節Ⅰ2.)。
- 建物及びその敷地の一部を対象とする場合は、当該建物及びその敷地の全体と当該部分との関連について総合的に比較考量して求める(同なお書)。※ 階層・位置による効用差を考慮する。
- 各手法
- 賃貸事例比較法:多数の新規の賃貸借等の事例を収集して適切な事例を選択し、実際実質賃料に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って比準賃料を求める(総論第7章第2節Ⅱ2)。
- 積算法:基礎価格に期待利回りを乗じ、必要諸経費等を加算して積算賃料を求める。必要諸経費等には、減価償却費、維持管理費、公租公課、損害保険料、貸倒れ準備費、空室等による損失相当額がある(同Ⅱ1)。
- 収益分析法:一般の企業経営に基づく総収益を分析して収益純賃料を求め、必要諸経費等を加算して収益賃料を求める(同Ⅱ3)。
- 賃料の鑑定評価は、実質賃料を求めることを原則とする。算定の期間は、建物及びその敷地の賃料にあっては1月を単位とする(総論第7章第2節Ⅰ及びⅠ3.)。
- ※ 賃貸事例比較法は、同一ビル内・近隣の類似ビルの成約事例と比較できるため、中心となる。収益分析法は、賃借人の事業収益から賃料相当部分を適切に求めにくく、適用は限定的である。
- ※ 空室が長期化している場合は、募集賃料と成約賃料の乖離やフリーレント等の賃貸条件を考慮し、実際に成約が見込まれる水準を査定する。
予想問題
予想問題1 貸家及びその敷地の収益価格(DCF法の適用)
狙い:DCF法の適用上の留意点は総論第7章第1節Ⅳ3(1)及び留意事項Ⅴ(4)②に明記されているが、貸家の過去問ではDCF法の適用そのものは問われていない。未出題の手法として狙い目。
貸家及びその敷地の鑑定評価額を決定するに当たり、収益価格をDCF法により求める場合について、次の問に答えなさい。
(1) 毎期の純収益を求めるに当たって留意すべき事項を、賃貸借契約の内容及び貸室の稼働率に関連づけて述べなさい。
解答の骨子を見る
- DCF法は、連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計する方法である(総論第7章第1節Ⅳ2)。
- 賃貸用不動産についてのDCF法の適用に当たっては、特に賃貸借契約の内容並びに賃料及び貸室の稼動率の毎期の変動に留意しなければならない(同3(1)ア(ア))。
- 毎期の純収益及び復帰価格並びにその発生時期が明示されるため、純収益の見通しについて十分な調査を行うことが必要である(同3(1)②)。
- 収益増加の見通しは、特に予測の限界を見極めなければならない(同②)。
- 総収益は支払賃料等(支払賃料+一時金の運用益及び償却額+その他収入)、総費用は減価償却費、維持管理費、公租公課、損害保険料等の諸経費等を加算して求める(同ア・イ)。
- 貸家及びその敷地では、実際実質賃料に基づく純収益を把握し、売主が受領した一時金のうち買主に承継されない部分の運用益及び償却額を含まない(各論第1章第2節Ⅱ)。
- ※ 契約期間中は契約賃料、契約期間満了後・テナント入替後は市場賃料に基づくなど、期間ごとに賃料水準を区分して把握する。賃料改定の実現性、空室期間・入替期間、一時金の授受も毎期に反映する。
(2) 復帰価格を求めるに当たって留意すべき事項について述べなさい。
解答の骨子を見る
- 復帰価格とは、保有期間の満了時点における対象不動産の価格をいい、n+1期の純収益を保有期間満了時点における還元利回り(最終還元利回り)で還元して求める(総論第7章第1節Ⅳ2(2))。
- 保有期間満了時点において売却を想定する場合には、売却に要する費用を控除することが必要である(留意事項Ⅴ(4)②エ)。
- n+1期の純収益を最終還元利回りで還元して復帰価格を求める場合は、n+1期以降の純収益の変動予測及び予測に伴う不確実性を、n+1期の純収益及び最終還元利回りに的確に反映させることが必要である(同エ)。
- なお、保有期間満了時点以降において、建物の取壊しや用途変更が既に計画されている場合、又は建物が老朽化していること等により取壊し等が見込まれる場合は、それらに要する費用を考慮して復帰価格を求めることが必要である(同エ)。
- 関連事項:最終還元利回りは、価格時点の還元利回りをもとに、保有期間満了時点における市場動向並びにそれ以降の収益の変動予測及び予測に伴う不確実性を反映させて求める(同オ)。
- 関連事項:毎期の純収益には、基本的に減価償却費を控除しない償却前の純収益を用い、建物等の償却は復帰価格において考慮される(同ア)。
- DCF法の適用に当たっては、特に保有期間中における大規模修繕費等の費用の発生時期に留意しなければならない(総論第7章第1節Ⅳ3(1)イ)。
- ※ 貸家及びその敷地では、保有期間満了時点の契約の残存期間、賃料水準(契約賃料のままか市場賃料へ移行後か)、空室の見込み、建物の残存耐用年数・老朽化の程度を踏まえて、n+1期の純収益と最終還元利回りを査定する。
予想問題2 借家人が買い取る場合の貸家及びその敷地の鑑定評価
狙い:借家人による買取りは、貸家及びその敷地の条文の後段にのみ書かれた論点で、未出題。貸家の価格が自用の価格に近づく方向になる、結論が反転する対比の問題として出題されやすい。
貸家及びその敷地を当該借家人が買い取る場合の鑑定評価について、次の問に答えなさい。
(1) 通常の貸家及びその敷地の鑑定評価に比べて、留意すべき事項を述べなさい。
解答の骨子を見る
- 貸家及びその敷地を当該借家人が買い取る場合の鑑定評価に当たっては、当該貸家及びその敷地が自用の建物及びその敷地となることによる市場性の回復等に即応する経済価値の増分が生ずる場合があることに留意すべきである(各論第1章第2節Ⅱ後段)。
- 通常の貸家及びその敷地は、実際実質賃料に基づく収益価格を標準とし、積算価格及び比準価格を比較考量して決定し、総合勘案事項1.〜7.を勘案する(同Ⅱ)。
- ※ 総合勘案事項のうち、借家権価格(7.)の取扱いに特に注意する。借家人が買い取ることで賃貸借の付着が解消されるため、借家権相当部分が価格に帰属し得る。
(2) 上記の留意事項が必要となる理由を、自用の建物及びその敷地の価格との関係から説明しなさい。
解答の骨子を見る
- 自用の建物及びその敷地は、使用収益を制約する権利の付着していない場合における建物及びその敷地である(総論第2章第2節Ⅱ)。貸家及びその敷地は、建物が賃貸借に供されている場合である(同Ⅱ)。
- 自用の建物及びその敷地の鑑定評価額は、積算価格、比準価格及び収益価格を関連づけて決定する(各論第1章第2節Ⅰ)。貸家及びその敷地とは、決定の方法が異なる。
- 借家権の鑑定評価額は、自用の建物及びその敷地の価格から貸家及びその敷地の価格を控除し、所要の調整を行って得た価格を比較考量して決定する(各論第1章第3節Ⅲ)。
- ※ 通常は、貸家及びその敷地の価格は、借家権の分だけ自用の建物及びその敷地の価格より低くなる。
- ※ 借家人が買い取る場合は、借家人が所有権を取得することで賃貸借関係が消滅し(混同。民法520条)、自用となる。そのため、借家権相当部分が借家人に帰属し、貸家及びその敷地の価格に増分が生じ、自用の価格に近づく方向となる(結論が反転する)。
予想問題3 貸家及びその敷地の総合勘案事項(契約内容に関する事項)
狙い:過去問は総合勘案事項の1.(平成20年)と2.・3.(平成16年)が出題済み。残る4.(契約締結の経緯・期間・耐用年数)と6.(借家の目的・契約形式・定期建物賃貸借等)が未出題で狙い目。
貸家及びその敷地の鑑定評価額を決定するに当たり、総合的に勘案すべきこととされている次の事項について、それぞれ説明しなさい。
① 契約締結の経緯、経過した借家期間及び残存期間並びに建物の残存耐用年数
解答の骨子を見る
- 総合勘案事項4.である(各論第1章第2節Ⅱ4.)。
- ※ 契約締結の経緯:親族間・関係会社間の契約など、特殊な事情による賃料の優遇・割高がないかを確認し、契約賃料が市場賃料と乖離している原因を把握する。
- ※ 経過した借家期間及び残存期間:契約期間満了までの収益の確実性、更新の見込み、賃料改定の機会を判断する。
- ※ 建物の残存耐用年数:収益を得られる期間を画する。残存耐用年数が短いと、収益期間の制約や復帰価格に影響する。
- 収益価格は純収益等の現在価値の総和であるため、収益が得られる期間・見通しが価格に直結する(各論第1章第2節Ⅱ、総論第7章第1節Ⅳ1)。
② 借家の目的、契約の形式、登記の有無、転借か否かの別及び定期建物賃貸借か否かの別
解答の骨子を見る
- 総合勘案事項6.である(各論第1章第2節Ⅱ6.)。定期建物賃貸借とは、借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借をいう。
- ※ 借家の目的:事務所・店舗・住居など用途により、賃料水準、契約期間、稼働率の変動が異なる。
- ※ 契約の形式:普通借家か定期借家かなど、更新の有無や賃料改定の方法が異なる。
- ※ 登記の有無:賃借権の登記の有無は、第三者に対する権利の対抗力に関わる。
- ※ 転借か否か:転貸借の場合は、賃借人(転貸人)と転借人の関係を踏まえ、収益の安定性を判断する。
- ※ 定期建物賃貸借か否か:契約期間満了により更新されず終了するため、満了後の再契約・空室化のリスクを将来の純収益に織り込む。賃料改定に関する特約が定められる場合もあるため、その内容を確認する。
予想問題4 借家権の鑑定評価
狙い:総合勘案事項7.(借家権価格)及び貸家及びその敷地の価格と表裏の関係にあり、出題済みの貸家の評価を逆から問える。他の記事で扱う場合は外す。
借家権の鑑定評価について、次の問に答えなさい。
(1) 借家権とは何か説明しなさい。
解答の骨子を見る
- 借家権とは、借地借家法(廃止前の借家法を含む。)が適用される建物の賃借権をいう(各論第1章第3節Ⅲ)。
- ※ 借家権の価格は、貸家及びその敷地の総合勘案事項7.にも挙げられている(各論第1章第2節Ⅱ7.)。
(2) 借家権の取引慣行がある場合における借家権の鑑定評価額の決定方法について述べなさい。
解答の骨子を見る
- 借家権の取引慣行がある場合の鑑定評価額は、当事者間の個別的事情を考慮して求めた比準価格を標準とし、自用の建物及びその敷地の価格から貸家及びその敷地の価格を控除し、所要の調整を行って得た価格を比較考量して決定する(各論第1章第3節Ⅲ)。
- 借家権割合が求められる場合は、借家権割合により求めた価格をも比較考量する(同Ⅲ)。
- この場合、貸家及びその敷地の総合勘案事項1.〜6.を総合的に勘案する(同Ⅲ)。
- 賃貸人から建物の明渡しの要求を受け、借家人が不随意の立退きに伴い事実上喪失することとなる経済的利益等の場合(同Ⅲ)
- 当該建物及びその敷地と同程度の代替建物等の賃借の際に必要とされる新規の実際支払賃料と現在の実際支払賃料との差額の一定期間に相当する額に、賃料の前払的性格を有する一時金の額等を加えた額、並びに自用の建物及びその敷地の価格から貸家及びその敷地の価格を控除し、所要の調整を行って得た価格を関連づけて決定する。
- 当事者間の個別的事情を考慮するほか、貸家及びその敷地の総合勘案事項1.〜6.を総合的に勘案する。
予想問題5 建物が賃貸されている他の類型との比較
狙い:借地権付建物(建物賃貸)・区分所有建物及びその敷地(専有部分賃貸)は、貸家及びその敷地と同じ枠組み(実際実質賃料に基づく収益価格を標準)で書かれている。共通点と相違点を問う組み合わせ問題。
建物が賃貸されている次の不動産の鑑定評価額の決定方法について、貸家及びその敷地の場合と比較しながら述べなさい。
① 借地権付建物で、当該建物が賃貸されているもの
解答の骨子を見る
- 鑑定評価額は、実際実質賃料に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格を標準とし、積算価格及び比準価格を比較考量して決定する(各論第1章第2節Ⅲ2.)。
- 総合勘案事項:借地権②ア(ア)から(キ)までに掲げる事項(定期借地権の場合は(ア)から(ケ)まで)及び貸家及びその敷地の総合勘案事項Ⅱ1.〜7.(同Ⅲ2.)。
- 貸家及びその敷地との共通点:実際実質賃料に基づく収益価格を標準とし、積算価格及び比準価格を比較考量する。
- 貸家及びその敷地との相違点:敷地が借地権であるため、借地権に関する事項(ア)〜(キ)が加わる。
② 区分所有建物及びその敷地で、専有部分が賃貸されているもの
解答の骨子を見る
- 鑑定評価額は、実際実質賃料に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格を標準とし、積算価格及び比準価格を比較考量して決定する(各論第1章第2節Ⅳ2.(2))。
- 総合勘案事項:貸家及びその敷地の総合勘案事項Ⅱ1.〜7.(同Ⅳ2.(2))。
- 貸家及びその敷地との共通点:決定方法、総合勘案事項ともに同じである。
- 貸家及びその敷地との相違点:対象が専有部分及び共用部分の共有持分・敷地利用権である(総論第2章第2節Ⅱ)。
- ※ 区分所有建物及びその敷地では、専有部分の個別的要因(階層・位置等。各論第1章第2節Ⅳ1.)も併せて検討する。

1992年生まれ。3人目の育休中。
初めて不動産投資をするときにつまづくことが多く、当時知りたかったことをまとめています。最近は不動産鑑定士の勉強についての記事ばかりです。ドメイン分ければ良かったか・・・。

