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※は、基準・留意事項に直接の記載がなく、一般的理解で補った部分、または教材により呼称が異なる部分である。
令和7年度 見込地
(1) 土地の種別及び見込地の定義をそれぞれ簡潔に述べなさい。なお、地域の種別についての説明は不要である。
(1) 解答の骨子
1 土地の種別の定義(総論第2章第1節Ⅱ)
土地の種別は、地域の種別に応じて分類される土地の区分であり、宅地、農地、林地、見込地、移行地等に分けられ、さらに地域の種別の細分に応じて細分される。
2 見込地の定義(総論第2章第1節Ⅱ)
見込地とは、宅地地域、農地地域、林地地域等の相互間において、ある種別の地域から他の種別の地域へと転換しつつある地域のうちにある土地をいい、宅地見込地、農地見込地等に分けられる。
3 移行地との区別(総論第2章第1節Ⅱ)
移行地は、宅地地域、農地地域等のうちにあって、細分されたある種別の地域から他の種別の地域へと移行しつつある地域のうちにある土地をいう。
(2) 見込地の同一需給圏の判定に当たって、特に留意すべき基本的な事項について述べなさい。なお、同一需給圏の意義についての説明は不要である。
(2) 解答の骨子
1 見込地の同一需給圏(総論第6章第1節Ⅱ1(2)④)
同一需給圏は、一般に当該土地が転換すると見込まれる土地の種別の同一需給圏と一致する傾向がある。
ただし、熟成度の低い場合には、転換前の土地の種別の同一需給圏と同一のものとなる傾向がある。
2 同一需給圏の判定の前提(総論第6章第1節Ⅱ1(2))
同一需給圏は、不動産の種類、性格及び規模に応じた需要者の選好性によってその地域的範囲を異にするため、需要者の選好性を的確に把握した上で適切に判定する必要がある。
3 補足
※例えば、転換後の種別が住宅地であれば、住宅地の同一需給圏(一般に都心への通勤可能な地域の範囲に一致する傾向。ただし地縁的選好性により狭められる傾向。総論第6章第1節Ⅱ1(2)①ア)が基本となる。
(3)① 不動産の価格に関する諸原則のうち、「変動の原則」及び「予測の原則」について、それぞれ簡潔に説明しなさい。
(3)① 解答の骨子
1 変動の原則(総論第4章Ⅱ)
一般に財の価格は、その価格を形成する要因の変化に伴って変動する。不動産の価格も多数の価格形成要因の相互因果関係の組合せの流れである変動の過程において形成される。したがって、鑑定評価に当たっては、価格形成要因が常に変動の過程にあることを認識して、各要因間の相互因果関係を動的に把握すべきである。特に、最有効使用を判定するためには、この変動の過程を分析することが必要である。
2 予測の原則(総論第4章ⅩⅠ)
財の価格は、その財の将来の収益性等についての予測を反映して定まる。不動産の価格も、価格形成要因の変動についての市場参加者による予測によって左右される。
(3)② 両原則と関連し、地域要因の変動が客観的に予測される場合の最有効使用の判定上の留意点及びこの場合の予測に当たっての留意点を述べなさい。なお、「最有効使用の原則」についての説明は不要である。
(3)② 解答の骨子
1 最有効使用の判定上の留意点(総論第6章第2節Ⅱ2(5))
価格形成要因は常に変動の過程にあることを踏まえ、特に価格形成に影響を与える地域要因の変動が客観的に予測される場合には、当該変動に伴い対象不動産の使用方法が変化する可能性があることを勘案して最有効使用を判定すること。
2 予測に当たっての留意点(留意事項Ⅳ2(2)①)
地域要因の変動の予測に当たっては、予測の限界を踏まえ、鑑定評価を行う時点で一般的に収集可能かつ信頼できる情報に基づき、当該変動の時期及び具体的内容についての実現の蓋然性が高いことが認められなければならない。
3 補足
※最有効使用の判定では、使用収益が将来相当の期間にわたって持続し得ること、効用を十分に発揮し得る時点が予測し得ない将来でないことも求められる(総論第6章第2節Ⅱ2(2)(3))。
(3)③ 見込地の最有効使用を判定する場合の留意点等について、上記②を踏まえ説明しなさい。
(3)③ 解答の骨子
1 見込地の特質
見込地は、ある種別の地域から他の種別の地域へと転換しつつある地域のうちにある土地であり(総論第2章第1節Ⅱ)、地域要因の変動(転換)が前提となる土地であるから、上記②の考え方が特に問題となる。
2 留意点
(1) 転換後の個別的要因を重視:転換又は移行すると見込まれる転換後の種別の地域内の土地の個別的要因をより重視する。ただし、転換の程度が低い場合は、転換前の種別の地域内の土地の個別的要因をより重視する(総論第3章第3節Ⅰ4)。
(2) 周辺地域の地域要因の変化の推移、動向を時系列的に分析し、見込地の変化の動向予測に活用する(留意事項Ⅳ1(1)④なお書き)。
(3) 予測の蓋然性:上記②のとおり、転換の時期及び具体的内容について、一般的に収集可能かつ信頼できる情報に基づく実現の蓋然性が高いことが必要(留意事項Ⅳ2(2)①)。
(4) 熟成度:熟成度の低い宅地見込地は、転換前の種別に基づく価格に宅地となる期待性を加味して考える(各論第1章第1節Ⅳ)。
(5) 宅地見込地では、都市の外延的発展を促進する要因の影響度、宅地化を助長・阻害している行政上の措置又は規制、公共施設・公益的施設の整備の動向、住宅・店舗・工場等の建設の動向、造成の難易及びその必要の程度、造成後の宅地としての有効利用度を総合的に勘案する(各論第1章第1節Ⅳ1〜5)。
3 まとめ
※要するに、見込地の最有効使用は、転換が客観的に見込まれ、かつその実現の蓋然性が高い範囲で判断し、蓋然性が低い、あるいは時期が予測し得ない将来である場合には、転換前の使用を基礎とする。
令和7年度 価格形成要因と市場の特性
(1) 不動産の価格形成要因の定義を簡潔に述べなさい。また、不動産の価格との関連及び鑑定評価における分析等の必要性について述べなさい。
(1) 解答の骨子
1 定義(総論第3章冒頭)
不動産の価格を形成する要因(価格形成要因)とは、不動産の効用及び相対的稀少性並びに不動産に対する有効需要の三者に影響を与える要因をいう。
2 不動産の価格との関連(総論第3章冒頭)
不動産の価格は、多数の要因の相互作用の結果として形成されるが、要因それ自体も常に変動する傾向を持っている。
3 分析等の必要性(総論第3章冒頭)
不動産の鑑定評価に当たっては、価格形成要因を市場参加者の観点から明確に把握し、かつ、その推移及び動向並びに諸要因間の相互関係を十分に分析して、前記三者(効用、相対的稀少性、有効需要)に及ぼす影響を判定することが必要である。
4 分類(総論第3章冒頭)
価格形成要因は、一般的要因、地域要因及び個別的要因に分けられる。
(2) 一般的要因の定義を簡潔に述べなさい。
(2) 解答の骨子
1 定義(総論第3章第1節)
一般的要因とは、一般経済社会における不動産のあり方及びその価格の水準に影響を与える要因をいう。
2 分類(総論第3章第1節)
自然的要因、社会的要因、経済的要因及び行政的要因に大別される。
3 鑑定評価での位置づけ(総論第7章第1節Ⅰ1)
不動産の価格形成全般に影響を与えるものであり、鑑定評価手法の適用における各手順において常に考慮されるべきもので、価格判定の妥当性を検討するために活用しなければならない。
(3)① 地域分析における対象不動産に係る市場の特性について、次の各設問に答えなさい。
① 市場の特性をどのように把握するかを説明し、把握した市場の特性を不動産鑑定評価上どのように反映させるべきかを述べなさい。
(3)① 解答の骨子
1 市場の特性の把握(総論第6章第1節Ⅱ2、留意事項Ⅳ1(3)①)
同一需給圏における市場参加者がどのような属性を有しており、どのような観点から不動産の利用形態を選択し、価格形成要因についての判断を行っているかを的確に把握することが重要である。あわせて同一需給圏における市場の需給動向を的確に把握する必要がある。
2 把握の観点(留意事項Ⅳ1(3)①)
(1) 市場参加者の属性及び行動:業務用不動産の場合は、主たる需要者層及び供給者層の業種、業態、法人か個人かの別並びに需要者の存する地域的な範囲。居住用不動産の場合は、主たる需要者層及び供給者層の年齢、家族構成、所得水準並びに需要者の存する地域的な範囲。さらに、その属性を持つ市場参加者が取引の可否、取引価格、取引条件等について意思決定する際に重視する価格形成要因の内容。
(2) 市場の需給動向:同一需給圏内に存し、用途、規模、品等等が対象不動産と類似する不動産に係る需給の推移及び動向、並びにそれが対象不動産の価格形成に与える影響の内容及びその程度。
3 不動産鑑定評価上の反映(総論第6章第1節Ⅱ2)
把握した市場の特性は、近隣地域における標準的使用の判定に反映させるとともに、鑑定評価の手法の適用、試算価格又は試算賃料の調整等における各種の判断においても反映すべきである。
(3)② 地域分析における対象不動産に係る市場の特性について、次の各設問に答えなさい。
② 市場の特性を把握するための資料について、留意すべき事項を述べなさい。
(3)② 解答の骨子
1 資料の収集(留意事項Ⅳ1(3)②)
(1) 平素から、不動産業者、建設業者及び金融機関等からの聴聞等によって、取引等の情報(取引件数、取引価格、売り希望価格、買い希望価格等)を収集しておく必要がある。
(2) あわせて、公的機関、不動産業者、金融機関、商工団体等による地域経済や不動産市場の推移及び動向に関する公表資料を幅広く収集し、分析することが重要である。
2 補足
※資料を使用するに当たっては、資料の信頼性や対象不動産の種類・依頼目的への即応性の検討が必要である(総論第8章第6節)。
(4)① 子育て支援策が拡充され、子育て世帯の流入がみられる自治体内に存する戸建住宅地の鑑定評価を行うことを前提に、次の各設問に答えなさい。
① 不動産鑑定評価基準において例示されている社会的要因のうち、本件鑑定評価に関連のあるものを4つ挙げなさい。
(4)① 解答の骨子
1 社会的要因の例示(総論第3章第1節Ⅱ)
基準が例示する社会的要因:人口の状態/家族構成及び世帯分離の状態/都市形成及び公共施設の整備の状態/教育及び社会福祉の状態/不動産の取引及び使用収益の慣行/建築様式等の状態/情報化の進展の状態/生活様式等の状態。
2 本件に関連のあるもの(4つ)
(1) 人口の状態(子育て世帯の流入による人口の変化)
(2) 家族構成及び世帯分離の状態(子育て世帯という世帯構成、世帯分離の動向)
(3) 教育及び社会福祉の状態(子育て支援策、保育・教育環境)
(4) 都市形成及び公共施設の整備の状態(保育施設、公園、学校等の整備)
※次点:生活様式等の状態(共働き世帯の増加、職住近接志向など)。
(4)② 子育て支援策が拡充され、子育て世帯の流入がみられる自治体内に存する戸建住宅地の鑑定評価を行うことを前提に、次の各設問に答えなさい。
② 子育て支援策の拡充による子育て世帯の流入が戸建住宅地の価格に及ぼす影響とその理由について、典型的な市場参加者の属性及び行動に触れつつ、具体的に説明しなさい。
(4)② 解答の骨子
1 着眼点(総論第3章冒頭、総論第6章第1節Ⅱ2、留意事項Ⅳ1(3)①)
価格形成要因は、不動産の効用及び相対的稀少性並びに有効需要に与える影響から判断する。居住用不動産では、主たる需要者層の年齢、家族構成、所得水準、需要者の存する地域的範囲と、その者が重視する価格形成要因(意思決定の観点)を把握する。
2 典型的な市場参加者の属性(※)
※典型的な需要者は、子育て世帯であり、年齢は比較的若く(30〜40歳代が中心)、家族構成は夫婦と未成年の子、所得水準は中位で、住宅取得は住宅ローンに依存し、取得可能な価格帯に制約がある。多くは当該自治体内外の同一需給圏から流入する。
3 典型的な市場参加者の行動(※)
※保育施設・学校・医療費助成等の子育て支援策の内容、教育環境、公園や安全な道路等の周辺環境、通勤・通学の利便性、住宅の広さ・間取り・敷地規模と価格のバランスを重視して、居住地及び住宅を選択する。支援策の拡充は、同一需給圏内の他地域との代替・競争関係(代替の原則・競争の原則)で当該自治体が選好される要因となる。
4 価格への影響とその理由(※)
※(1) 有効需要の増加:子育て世帯の流入により、戸建住宅地の需要が増加する。需要と供給の原則により、供給が不変であれば価格上昇圧力となる。
※(2) 選好の変化:子育て世帯に評価される要因(学校・保育施設への近接、公園、安全性、ファミリー向けの規模)を備えた地域では、価格形成要因の評価が高まり、他地域との格差が拡大し得る。
※(3) 予測の原則:支援策が継続され、流入が続くとの市場参加者の予測が価格に織り込まれる。ただし、財政状況による支援策の変更、人口の増減、少子化の進行等の不確実性があり、予測の限界に留意が必要である(留意事項Ⅳ2(2)①)。
※(4) 価格帯の制約:需要者の所得水準による取得可能価格帯の制約から、価格の上昇は需要者の支払能力の範囲に限られ、敷地規模の小さい分譲・戸建への需要が強まる等、規模別に影響が異なる。
※(5) 影響は、支援策の内容や自治体内の地域ごと(駅近・学区・環境)に異なるため、近隣地域の標準的使用の判定や、取引事例比較法における地域要因・個別的要因の比較に反映させる(総論第6章第1節Ⅱ2)。
令和7年度 自用の建物及びその敷地
(1)① 自用の建物及びその敷地の鑑定評価額の求め方について、次の各問に答えなさい。
① 建物の用途等が更地としての最有効使用に一致している場合、鑑定評価額をどのように決定するか述べなさい。
(1)① 解答の骨子
1 鑑定評価額の決定(各論第1章第2節Ⅰ)
自用の建物及びその敷地の鑑定評価額は、積算価格、比準価格及び収益価格を関連づけて決定するものとする。
2 各価格の意義(総論第7章第1節)
積算価格:原価法による試算価格(Ⅱ1)。比準価格:取引事例比較法による試算価格(Ⅲ1)。収益価格:収益還元法による試算価格(Ⅳ1)。自用の不動産であっても、賃貸を想定することにより収益還元法を適用する(Ⅳ1)。
3 補足
※現実の建物の用途等が更地としての最有効使用に一致する場合は、現状のまま継続使用することが最有効使用であり、用途変更・取壊し等の費用を考慮する必要はない。試算価格の調整(総論第8章第8節)を経て決定する。
(1)② 自用の建物及びその敷地の鑑定評価額の求め方について、次の各問に答えなさい。
② 建物の用途等が更地としての最有効使用に一致していない場合、建物及びその敷地の最有効使用の判定に当たって特に留意すべき内容に触れながら、鑑定評価額をどのように決定するか説明しなさい。
(1)② 解答の骨子
1 最有効使用の判定上の留意点
(1) 更地と建物及びその敷地の最有効使用は一致しない場合がある:現実の建物の用途等が更地としての最有効使用に一致していない場合には、更地としての最有効使用を実現するために要する費用等を勘案する必要があるため、建物及びその敷地と更地の最有効使用の内容が必ずしも一致するものではない(総論第6章第2節Ⅱ2(6))。
(2) 比較考量:現実の建物の用途等を継続する場合の経済価値と、建物の取壊しや用途変更等を行う場合のそれらに要する費用等を適切に勘案した経済価値を十分比較考量する(総論第6章第2節Ⅱ2(7))。
(3) 比較考量に当たっての留意点(留意事項Ⅳ2(2)②):ア 物理的、法的にみた当該建物の取壊し、用途変更等の実現可能性。イ 取壊し、用途変更等を行った後における対象不動産の競争力の程度等を踏まえた収益の変動予測の不確実性及び取壊し、用途変更に要する期間中の逸失利益の程度。
2 鑑定評価額の決定(各論第1章第2節Ⅰ)
(1) 現実の用途等を継続することが最有効使用の場合:積算価格、比準価格及び収益価格を関連づけて決定する。
(2) 用途変更又は改造して使用することが最有効使用の場合:用途変更等を行った後の経済価値の上昇の程度、必要とされる改造費等を考慮して決定する。
(3) 建物を取り壊すことが最有効使用の場合:建物の解体による発生材料の価格から取壊し、除去、運搬等に必要な経費を控除した額を、当該敷地の最有効使用に基づく価格に加減して決定する。
(2)① 不動産鑑定評価基準運用上の留意事項に示されている建物に関する個別的要因について、次の各問に答えなさい。
① 建物の各用途に共通する個別的要因のうち、建物の耐震性について特に留意する必要がある点を述べなさい。
(2)① 解答の骨子
1 建物の性能としての耐震性(留意事項Ⅱ2(1)②)
建物の耐震性については、建築基準法に基づく耐震基準との関係及び建築物の耐震改修の促進に関する法律に基づく耐震診断の結果について特に留意する必要がある。
2 位置づけ(総論第3章第3節Ⅱ5)
耐震性、耐火性等の建物の性能は、建物に関する個別的要因として基準に例示されている。
(2)② 不動産鑑定評価基準運用上の留意事項に示されている建物に関する個別的要因について、次の各問に答えなさい。
② 対象不動産が戸建住宅である場合に、建物の用途毎に特に留意すべき個別的要因として例示されているもののうち、戸建住宅に関連のあるものを挙げなさい。
(2)② 解答の骨子
1 住宅について例示されているもの(留意事項Ⅱ2(2)①)
(1) 屋根、外壁、基礎、床、内装、間取り、台所・浴室・便所等の給排水設備・衛生設備の状況等に留意する必要がある。
(2) 住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく日本住宅性能表示基準による性能表示、長期優良住宅の普及の促進に関する法律に基づき認定を受けた長期優良住宅建築等計画等にも留意する必要がある。
2 区分所有建物の事項は除く
区分所有建物の場合に留意するとされる各論第1章第2節Ⅳ1及び留意事項Ⅷ2(2)の事項は、戸建住宅には該当しない。
3 補足
※このほか、建物の各用途に共通する個別的要因(設計、設備等の機能性、耐震性等の建物の性能、維持管理の状態、有害な物質の使用の有無、法令の遵守の状況。留意事項Ⅱ2(1))も戸建住宅に当然関連する。
令和7年度 証券化対象不動産と収益還元法
(1) 収益還元法の定義を簡潔に述べなさい。
(1) 解答の骨子
1 定義(総論第7章第1節Ⅳ1)
収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法による試算価格を収益価格という)。
2 補足
※本件は資産の流動化に係る不動産取引の目的であり、証券化対象不動産に該当する(各論第3章第1節Ⅰ(1))。
(2)① 本鑑定評価における建物及びその敷地の最有効使用を、現実の建物の用途等を継続して利用することと判定した場合において、次の各問に答えなさい。
① 収益価格を求める方法について、式を記載しつつ、説明しなさい。なお、純収益の算定方法及び採用利回りの求め方の記載は不要である。
(2)① 解答の骨子
1 収益価格を求める方法(総論第7章第1節Ⅳ2)
収益価格を求める方法には、一期間の純収益を還元利回りによって還元する直接還元法と、連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計するDCF法(Discounted Cash Flow法)がある。
2 証券化対象不動産における適用(各論第3章第5節)
証券化対象不動産の鑑定評価における収益価格を求めるに当たっては、DCF法を適用しなければならない。この場合において、併せて直接還元法を適用することにより検証を行うことが適切である。
3 式(総論第7章第1節Ⅳ2)
(1) DCF法:P = Σk=1〜n ak/(1+Y)k + PR/(1+Y)n
P:収益価格、ak:毎期の純収益、Y:割引率、n:保有期間(売却を想定しない場合には分析期間)、PR:復帰価格
(2) 復帰価格(保有期間の満了時点における対象不動産の価格):PR = an+1/Rn (an+1:n+1期の純収益、Rn:最終還元利回り)
(3) 直接還元法:P = a/R (a:一期間の純収益、R:還元利回り)
4 留意点(留意事項Ⅴ(4)②ア)
建物等の純収益の算定においては、基本的には減価償却費を控除しない償却前の純収益を用い、建物等の償却については復帰価格において考慮される。※DCF法は、純収益及び復帰価格を予測して明示するため、収益価格を求める過程の説明性に優れる(留意事項Ⅴ(4)②)。
(2)② 本鑑定評価における建物及びその敷地の最有効使用を、現実の建物の用途等を継続して利用することと判定した場合において、次の各問に答えなさい。
② 上記①で用いる還元利回りと割引率との相違点を述べ、その相互関係について説明しなさい。
(2)② 解答の骨子
1 共通点(総論第7章第1節Ⅳ3(2)①)
還元利回り及び割引率は、共に不動産の収益性を表し、収益価格を求めるために用いるものである。
2 相違点(総論第7章第1節Ⅳ3(2)①)
(1) 還元利回り:直接還元法の収益価格及びDCF法の復帰価格の算定において、一期間の純収益から対象不動産の価格を直接求める際に使用される率であり、将来の収益に影響を与える要因の変動予測と予測に伴う不確実性を含む。
(2) 割引率:DCF法において、ある将来時点の収益を現在時点の価値に割り戻す際に使用される率であり、還元利回りに含まれる変動予測と予測に伴う不確実性のうち、収益見通しにおいて考慮された連続する複数の期間に発生する純収益や復帰価格の変動予測に係るものを除く。
3 相互関係
(1) 純収益の変動予測は、直接還元法では還元利回りに織り込まれるが、DCF法では毎期の純収益として明示されるため、割引率には含まれない。このため、割引率は、収益見通しにおいて考慮されなかった収益予測の不確実性の程度に応じて異なる(留意事項Ⅴ(4)②イ)。
(2) 純収益が永続的に得られ、かつ一定の趨勢を有すると想定される場合には、R=Y-g(R:還元利回り、Y:割引率、g:純収益の変動率)の関係がある(留意事項Ⅴ(4)①オ(エ))。
(3) ※この式によれば、純収益の変動率gが正であれば還元利回りは割引率より低く、gが負であれば還元利回りは割引率より高くなる。また、復帰価格の算定に用いる最終還元利回りは、保有期間満了時点における還元利回りである(総論第7章第1節Ⅳ2(2))。
(3) 本鑑定評価においては、不動産鑑定評価基準各論第3章の対象とはならない鑑定評価と比較して、調査内容及び鑑定評価で用いた数値等の判断根拠をより具体的に明示することや、統一された収益費用項目を用いる必要があるが、この理由について説明しなさい。
(3) 解答の骨子
1 証券化対象不動産の鑑定評価の特質(各論第3章第1節Ⅱ)
(1) 証券化対象不動産の鑑定評価は、依頼者のみならず広範な投資家等に重大な影響を及ぼすこと、また不動産鑑定評価制度に対する社会的信頼性の確保等について重要な責任があることを考慮して行わなければならない(Ⅱ(1))。
(2) 証券化対象不動産の鑑定評価書は、依頼者及び利害関係者その他の者がその内容を容易に把握・比較することができるよう、記載方法等を工夫し、鑑定評価に活用した資料等を明示することができるようにするなど、説明責任が十分に果たされるものとしなければならない(Ⅱ(2))。
2 判断根拠をより具体的に明示する理由(各論第3章第5節Ⅰ)
(1) DCF法の適用に当たっては、活用する資料(依頼者から入手した資料をそのまま活用する場合、修正する場合、自らが入手した場合)の区分に応じ、妥当性や判断の根拠等を記載しなければならない(Ⅰ(1))。
(2) 最終還元利回り、割引率、収益及び費用の将来予測等の個々の項目に加え、それらを採用して収益価格を求める過程及びその理由について、経済事情の変動の可能性、具体的に検証した事例及び論理的な整合性等を明確にして記載しなければならない(Ⅰ(2))。
(3) ※投資家等が、鑑定評価額を投資判断の根拠とするため、利用者が評価の妥当性を自ら検証できる程度の透明性が必要である。DCF法は予測の要素が大きく、恣意性が入りやすいため、判断根拠の明示によりこれを抑制する。
3 統一された収益費用項目を用いる理由(各論第3章第5節Ⅱ)
(1) DCF法の適用により収益価格を求めるに当たっては、収益又は費用の額を、連続する複数の期間ごとに、基準が定める収益費用項目に区分して記載し、項目の定義も統一される(Ⅱ(1))。
(2) 収益費用項目及びその定義を依頼者に提示・説明した上で必要な資料を入手し、各項目の定義に該当していることを確認しなければならない(Ⅱ(2))。
(3) 複数の不動産鑑定士が共同して複数の証券化対象不動産の鑑定評価を行う場合に、収益及び費用の将来予測等について対象不動産相互間の論理的な整合性を図らなければならない(Ⅰ(2))。
(4) ※項目と定義を統一することにより、他の不動産や他の鑑定評価書との比較可能性が確保され、不動産鑑定士による項目の取扱いの違いによる収益価格のばらつきを抑え、鑑定評価の信頼性が高まる。
注:本稿で根拠とした鑑定評価基準・留意事項は平成26年改正版である。令和7年度試験は令和6年9月1日時点で施行されている法令及び諸規程により出題されているため、条文の位置や文言が本稿の引用と異なる可能性がある。
問題1:見込地の判定と価格に関する諸原則
(1) 土地の種別及び見込地の定義
土地の種別及び見込地の定義をそれぞれ簡潔に述べなさい。なお、地域の種別についての説明は不要である。
不動産の種別の定義
土地の種別
見込地の定義
(2) 見込地の同一需給圏の判定における留意点
見込地の同一需給圏の判定に当たって、特に留意すべき基本的な事項について述べなさい。なお、同一需給圏の意義についての説明は不要である。
同一需給圏の判定
見込地の同一需給圏
(3)① 「変動の原則」及び「予測の原則」の説明
不動産の価格に関する諸原則のうち、「変動の原則」及び「予測の原則」について、それぞれ簡潔に説明しなさい。
不動産の価格に関する諸原則の意義
変動の原則
予測の原則
(3)② 地域要因の変動が客観的に予測される場合の留意点
両原則と関連し、地域要因の変動が客観的に予測される場合の最有効使用の判定上の留意点及びこの場合の予測に当たっての留意点を述べなさい。なお、「最有効使用の原則」についての説明は不要である。
個別分析の意義
地域要因の変動が客観的に予測される場合の最有効使用の判定
地域要因の変動予測における留意点
(3)③ 見込地の最有効使用を判定する場合の留意点
見込地の最有効使用を判定する場合の留意点等について、上記②を踏まえ説明しなさい。
【解答の骨子】
- 見込地は、宅地地域等への転換過程にある土地であり、その最有効使用の判定に当たっては、個別分析により対象不動産(見込地)の個別的要因が利用形態・価格形成に与える影響力を分析する必要がある
- 見込地は転換前後で異なる土地の種別に属し得るため、現況の用途(転換前の使用方法)のみならず、転換後に見込まれる用途の可能性も踏まえて検討すべき
- 地域要因の変動(転換の進行)が客観的に予測される場合には、当該変動に伴い対象不動産の使用方法が変化する可能性を勘案して最有効使用を判定する必要がある
- 熟成度が高い場合:転換後の土地の種別に応じた使用方法を前提とした判定に近づく
- 熟成度が低い場合:転換前の土地の種別に応じた使用方法を前提とした判定に近づく
- 地域要因の変動の予測に当たっては鑑定評価を行う時点で一般的に収集可能かつ信頼できる資料・情報に基づき、転換の時期及び具体的内容についての実現の蓋然性が高いと認められる場合に限り、転換後の用途を前提とした判定を行うべき
- 結論:見込地の最有効使用は、現況の用途と転換後に見込まれる用途の双方を比較検討した上で、地域要因の変動(転換)の熟成度及びその予測の蓋然性を踏まえ、より合理的な使用方法を採用して判定すべきである
問題2:不動産の価格形成要因と地域分析における市場の特性
(1) 価格形成要因の定義及び分析等の必要性
不動産の価格形成要因の定義を簡潔に述べなさい。また、不動産の価格との関連及び鑑定評価における分析等の必要性について述べなさい。
価格形成要因の定義
価格形成要因の分析の必要性
価格形成要因の分類
(2) 一般的要因の定義
一般的要因の定義を簡潔に述べなさい。
一般的要因の定義
(3)① 市場の特性の把握方法と鑑定評価上の反映
市場の特性をどのように把握するかを説明し、把握した市場の特性を不動産鑑定評価上どのように反映させるべきかを述べなさい。
地域分析の意義
対象不動産に係る市場の特性の把握
市場の特性の鑑定評価への反映
(3)② 市場の特性を把握するための資料に関する留意事項
市場の特性を把握するための資料について、留意すべき事項を述べなさい。
把握のための資料
(4)① 本件鑑定評価に関連する社会的要因
子育て支援策が拡充され、子育て世帯の流入がみられる自治体内に存する戸建住宅地の鑑定評価を行うことを前提に、不動産鑑定評価基準において例示されている社会的要因のうち、本件鑑定評価に関連のあるものを4つ挙げなさい。
関連のある社会的要因
2.家族構成及び世帯分離の状態
3.都市形成及び公共施設の整備の状態
4.教育及び社会福祉の状態
(4)② 子育て支援策の拡充が戸建住宅地の価格に及ぼす影響
子育て支援策の拡充による子育て世帯の流入が戸建住宅地の価格に及ぼす影響とその理由について、典型的な市場参加者の属性及び行動に触れつつ、具体的に説明しなさい。
市場参加者の属性及び行動を把握する際の留意点
(ア)市場参加者の属性については、業務用不動産の場合、主たる需要者層及び供給者層の業種、業態、法人か個人かの別並びに需要者の存する地域的な範囲。また、居住用不動産の場合、主たる需要者層及び供給者層の年齢、家族構成、所得水準並びに需要者の存する地域的な範囲
(イ)(ア)で把握した属性を持つ市場参加者が取引の可否、取引価格、取引条件等について意思決定する際に重視する価格形成要因の内容
【解答の骨子】
子育て支援策の拡充が戸建住宅地の価格に及ぼす影響とその理由
- 前提:子育て支援策の拡充により、当該自治体内では子育て世帯(主として乳幼児・就学児を持つ世帯)の転入が進み、戸建住宅地の主たる需要者層の構成に変化が生じる
- 典型的な市場参加者(子育て世帯)の属性
- 年齢:30〜40歳代を中心とした比較的若い世代
- 家族構成:夫婦及び子から成る世帯(世帯人数の相対的な多さ)
- 所得水準:一定の可処分所得を有する共働き世帯が多い
- 地域的範囲:子育て支援策の内容や保育・教育環境によって選好する地域が異なる
- 上記属性を持つ需要者が取引の意思決定において重視する価格形成要因(行動)
- 保育所・幼稚園・小中学校等の教育施設への近接性及び通学の安全性
- 公園、児童館等の子育て支援施設の有無・充実度
- 小児科等の医療施設への近接性
- 住宅の規模(部屋数・延床面積)及び居住環境の良好性(治安・静穏性等)
- 自治体独自の子育て支援策(保育料・医療費助成等)の内容及び継続性
- 価格への影響とその理由
- 子育て世帯という新たな需要者層の流入により、当該地域の戸建住宅地に対する有効需要が増大する
- 有効需要の増大は、相対的稀少性を強める方向に作用し、価格上昇要因となる
- 特に、上記の重視要因(教育・医療・子育て支援施設への近接性等)を満たす地域ほど、需要の集中度が高く、価格上昇の程度が顕著になる
- 結論:子育て支援策の拡充は、子育て世帯という属性を持つ市場参加者の流入を通じて有効需要を増大させ、これに伴い戸建住宅地の価格を押し上げる方向に作用する。ただし、その影響の程度は、教育・医療・子育て関連施設への近接性等、子育て世帯が重視する価格形成要因を当該地域がどの程度満たしているかによって異なる
出題の要旨
国土交通省HPのコピペです。
【論文問題:問題1】
この問題は、見込地に関連して各設問についての基本的な理解を問うものである。(1)は、土地の種別及び見込地の意義について、(2)は、見込地の同一需給圏判定上の留意事項について、(3)①は、変動の原則及び予測の原則について、(3)②は、両原則と関連し、地域要因の変動が予測される場合の最有効使用判定上の留意点及びこの場合の予測に当たっての留意点について、不動産鑑定評価基準及び留意事項に照らし、的確に説明することを求めている。(3)③は、見込地の最有効使用を判定する場合の留意点等について、(3)②を踏まえつつ、説明することを求めている。
【論文問題:問題2】
この問題は、不動産の価格形成要因についての理解を問うものである。(1)は、不動産の価格形成要因の定義、不動産の価格との関連及び鑑定評価における分析等の必要性、(2)は、一般的要因の定義、(3)①は、地域分析における対象不動産に係る市場の特性と不動産鑑定評価を行う上でどのように反映すべきかについて、(3)②は市場の特性を把握するための資料について、(4)は、対象不動産及び当該不動産に関する社会情勢を具体的に想定した上で、①では、社会的要因について、②では、社会的要因の変化が不動産の価格に及ぼす影響とその理由、典型的な市場参加者の属性及び行動について、それぞれ不動産鑑定評価基準及び留意事項に照らし、理解しているかを求めている。
【論文問題:問題3】
この問題は、自用の建物及びその敷地についての基本的な理解を問うものである。(1)は、建物の用途等が更地としての最有効使用に一致している場合と、一致していない場合に、それぞれ鑑定評価額をどのように決定するのかについて、建物及びその敷地の最有効使用の判定に当たって特に留意すべき内容に触れながら的確に説明することを、(2)は、建物に関する個別的要因について、それぞれ不動産鑑定評価基準運用上の留意事項に照らして、的確に説明することを求めている。
【論文問題:問題4】
この問題は、収益還元法と証券化対象不動産の価格に関する鑑定評価についての基本的な理解を問うものである。(1)及び(2)は、収益還元法の定義並びに収益価格を求める方法及び採用する利回りに関して基本的な理解を問うものである。ただし、(2)①では、収益還元法に係る式を記載し、具体的に説明することを求めている。(3)は証券化対象不動産の鑑定評価を行うに当たって、不動産鑑定士の責務に関する根拠を明確にした上で、不動産鑑定評価基準及び留意事項に照らして、的確に説明することを求めている。

1992年生まれ。3人目の育休中。
初めて不動産投資をするときにつまづくことが多く、当時知りたかったことをまとめています。最近は不動産鑑定士の勉強についての記事ばかりです。ドメイン分ければ良かったか・・・。


