【令和7年不動産鑑定士試験】鑑定理論(論文)解答

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問題1:見込地の判定と価格に関する諸原則

(1) 土地の種別及び見込地の定義

土地の種別及び見込地の定義をそれぞれ簡潔に述べなさい。なお、地域の種別についての説明は不要である。

不動産の種別の定義
不動産の種別とは、不動産の用途に関して区分される不動産の分類をいう。
土地の種別
土地の種別は、地域の種別に応じて分類される土地の区分であり、宅地、農地、林地、見込地、移行地等に分けられ、さらに地域の種別の細分に応じて細分される。
見込地の定義
見込地とは、宅地地域、農地地域、林地地域等の相互間において、ある種別の地域から他の種別の地域へと転換しつつある地域のうちにある土地をいい、宅地見込地、農地見込地等に分けられる。

(2) 見込地の同一需給圏の判定における留意点

見込地の同一需給圏の判定に当たって、特に留意すべき基本的な事項について述べなさい。なお、同一需給圏の意義についての説明は不要である。

同一需給圏の判定
同一需給圏は、不動産の種類、性格及び規模に応じた需要者の選好性によってその地域的範囲を異にするものであるから、その種類、性格及び規模に応じて需要者の選好性を的確に把握した上で適切に判定する必要がある。
見込地の同一需給圏
同一需給圏は、一般に当該土地が転換すると見込まれる土地の種別の同一需給圏と一致する傾向がある。ただし、熟成度の低い場合には、転換前の土地の種別の同一需給圏と同一のものとなる傾向がある。

(3)① 「変動の原則」及び「予測の原則」の説明

不動産の価格に関する諸原則のうち、「変動の原則」及び「予測の原則」について、それぞれ簡潔に説明しなさい。

不動産の価格に関する諸原則の意義
不動産の価格は、不動産の効用及び相対的稀少性並びに不動産に対する有効需要に影響を与える諸要因の相互作用によって形成されるが、その形成の過程を考察するとき、そこに基本的な法則性を認めることができる。不動産の鑑定評価は、その不動産の価格の形成過程を追究し、分析することを本質とするものであるから、不動産の経済価値に関する適切な最終判断に到達するためには、鑑定評価に必要な指針としてこれらの法則性を認識し、かつ、これらを具体的に現した以下の諸原則を活用すべきである。
変動の原則
一般に財の価格は、その価格を形成する要因の変化に伴って変動する。不動産の価格も多数の価格形成要因の相互因果関係の組合せの流れである変動の過程において形成されるものである。したがって、不動産の鑑定評価に当たっては、価格形成要因が常に変動の過程にあることを認識して、各要因間の相互因果関係を動的に把握すべきである。特に、不動産の最有効使用(Ⅳ参照)を判定するためには、この変動の過程を分析することが必要である。
予測の原則
財の価格は、その財の将来の収益性等についての予測を反映して定まる。不動産の価格も、価格形成要因の変動についての市場参加者による予測によって左右される。

(3)② 地域要因の変動が客観的に予測される場合の留意点

両原則と関連し、地域要因の変動が客観的に予測される場合の最有効使用の判定上の留意点及びこの場合の予測に当たっての留意点を述べなさい。なお、「最有効使用の原則」についての説明は不要である。

個別分析の意義
個別分析とは、対象不動産の個別的要因が対象不動産の利用形態と価格形成についてどのような影響力を持っているかを分析してその最有効使用を判定することをいう。
地域要因の変動が客観的に予測される場合の最有効使用の判定
価格形成要因は常に変動の過程にあることを踏まえ、特に価格形成に影響を与える地域要因の変動が客観的に予測される場合には、当該変動に伴い対象不動産の使用方法が変化する可能性があることを勘案して最有効使用を判定すること。
地域要因の変動予測における留意点
地域要因の変動の予測に当たっては、予測の限界を踏まえ、鑑定評価を行う時点で一般的に収集可能かつ信頼できる情報に基づき、当該変動の時期及び具体的内容についての実現の蓋然性が高いことが認められなければならない。

(3)③ 見込地の最有効使用を判定する場合の留意点

見込地の最有効使用を判定する場合の留意点等について、上記②を踏まえ説明しなさい。

【解答の骨子】

  • 見込地は、宅地地域等への転換過程にある土地であり、その最有効使用の判定に当たっては、個別分析により対象不動産(見込地)の個別的要因が利用形態・価格形成に与える影響力を分析する必要がある
  • 見込地は転換前後で異なる土地の種別に属し得るため、現況の用途(転換前の使用方法)のみならず、転換後に見込まれる用途の可能性も踏まえて検討すべき
  • 地域要因の変動(転換の進行)が客観的に予測される場合には、当該変動に伴い対象不動産の使用方法が変化する可能性を勘案して最有効使用を判定する必要がある
    • 熟成度が高い場合:転換後の土地の種別に応じた使用方法を前提とした判定に近づく
    • 熟成度が低い場合:転換前の土地の種別に応じた使用方法を前提とした判定に近づく
  • 地域要因の変動の予測に当たっては鑑定評価を行う時点で一般的に収集可能かつ信頼できる資料・情報に基づき、転換の時期及び具体的内容についての実現の蓋然性が高いと認められる場合に限り、転換後の用途を前提とした判定を行うべき
  • 結論:見込地の最有効使用は、現況の用途と転換後に見込まれる用途の双方を比較検討した上で、地域要因の変動(転換)の熟成度及びその予測の蓋然性を踏まえ、より合理的な使用方法を採用して判定すべきである

問題2:不動産の価格形成要因と地域分析における市場の特性

(1) 価格形成要因の定義及び分析等の必要性

不動産の価格形成要因の定義を簡潔に述べなさい。また、不動産の価格との関連及び鑑定評価における分析等の必要性について述べなさい。

価格形成要因の定義
不動産の価格を形成する要因(以下「価格形成要因」という。)とは、不動産の効用及び相対的稀少性並びに不動産に対する有効需要の三者に影響を与える要因をいう。
価格形成要因の分析の必要性
不動産の価格は、多数の要因の相互作用の結果として形成されるものであるが、要因それ自体も常に変動する傾向を持っている。したがって、不動産の鑑定評価を行うに当たっては、価格形成要因を市場参加者の観点から明確に把握し、かつ、その推移及び動向並びに諸要因間の相互関係を十分に分析して、前記三者に及ぼすその影響を判定することが必要である。
価格形成要因の分類
価格形成要因は、一般的要因、地域要因及び個別的要因に分けられる。

(2) 一般的要因の定義

一般的要因の定義を簡潔に述べなさい。

一般的要因の定義
一般的要因とは、一般経済社会における不動産のあり方及びその価格の水準に影響を与える要因をいう。それは、自然的要因、社会的要因、経済的要因及び行政的要因に大別される。

(3)① 市場の特性の把握方法と鑑定評価上の反映

市場の特性をどのように把握するかを説明し、把握した市場の特性を不動産鑑定評価上どのように反映させるべきかを述べなさい。

地域分析の意義
地域分析とは、その対象不動産がどのような地域に存するか、その地域はどのような特性を有するか、また、対象不動産に係る市場はどのような特性を有するか、及びそれらの特性はその地域内の不動産の利用形態と価格形成について全般的にどのような影響力を持っているかを分析し、判定することをいう。
対象不動産に係る市場の特性の把握
地域分析における対象不動産に係る市場の特性の把握に当たっては、同一需給圏における市場参加者がどのような属性を有しており、どのような観点から不動産の利用形態を選択し、価格形成要因についての判断を行っているかを的確に把握することが重要である。あわせて同一需給圏における市場の需給動向を的確に把握する必要がある。
市場の特性の鑑定評価への反映
また、把握した市場の特性については、近隣地域における標準的使用の判定に反映させるとともに鑑定評価の手法の適用、試算価格又は試算賃料の調整等における各種の判断においても反映すべきである。

(3)② 市場の特性を把握するための資料に関する留意事項

市場の特性を把握するための資料について、留意すべき事項を述べなさい。

把握のための資料
対象不動産に係る市場の特性の把握に当たっては、平素から、不動産業者、建設業者及び金融機関等からの聴聞等によって取引等の情報(取引件数、取引価格、売り希望価格、買い希望価格等)を収集しておく必要がある。あわせて公的機関、不動産業者、金融機関、商工団体等による地域経済や不動産市場の推移及び動向に関する公表資料を幅広く収集し、分析することが重要である。

(4)① 本件鑑定評価に関連する社会的要因

子育て支援策が拡充され、子育て世帯の流入がみられる自治体内に存する戸建住宅地の鑑定評価を行うことを前提に、不動産鑑定評価基準において例示されている社会的要因のうち、本件鑑定評価に関連のあるものを4つ挙げなさい。

関連のある社会的要因
1.人口の状態
2.家族構成及び世帯分離の状態
3.都市形成及び公共施設の整備の状態
4.教育及び社会福祉の状態

(4)② 子育て支援策の拡充が戸建住宅地の価格に及ぼす影響

子育て支援策の拡充による子育て世帯の流入が戸建住宅地の価格に及ぼす影響とその理由について、典型的な市場参加者の属性及び行動に触れつつ、具体的に説明しなさい。

市場参加者の属性及び行動を把握する際の留意点
同一需給圏における市場参加者の属性及び行動を把握するに当たっては、特に次の事項に留意すべきである。

(ア)市場参加者の属性については、業務用不動産の場合、主たる需要者層及び供給者層の業種、業態、法人か個人かの別並びに需要者の存する地域的な範囲。また、居住用不動産の場合、主たる需要者層及び供給者層の年齢、家族構成、所得水準並びに需要者の存する地域的な範囲

(イ)(ア)で把握した属性を持つ市場参加者が取引の可否、取引価格、取引条件等について意思決定する際に重視する価格形成要因の内容

【解答の骨子】

子育て支援策の拡充が戸建住宅地の価格に及ぼす影響とその理由

  • 前提:子育て支援策の拡充により、当該自治体内では子育て世帯(主として乳幼児・就学児を持つ世帯)の転入が進み、戸建住宅地の主たる需要者層の構成に変化が生じる
  • 典型的な市場参加者(子育て世帯)の属性
    • 年齢:30〜40歳代を中心とした比較的若い世代
    • 家族構成:夫婦及び子から成る世帯(世帯人数の相対的な多さ)
    • 所得水準:一定の可処分所得を有する共働き世帯が多い
    • 地域的範囲:子育て支援策の内容や保育・教育環境によって選好する地域が異なる
  • 上記属性を持つ需要者が取引の意思決定において重視する価格形成要因(行動)
    • 保育所・幼稚園・小中学校等の教育施設への近接性及び通学の安全性
    • 公園、児童館等の子育て支援施設の有無・充実度
    • 小児科等の医療施設への近接性
    • 住宅の規模(部屋数・延床面積)及び居住環境の良好性(治安・静穏性等)
    • 自治体独自の子育て支援策(保育料・医療費助成等)の内容及び継続性
  • 価格への影響とその理由
    • 子育て世帯という新たな需要者層の流入により、当該地域の戸建住宅地に対する有効需要が増大する
    • 有効需要の増大は、相対的稀少性を強める方向に作用し、価格上昇要因となる
    • 特に、上記の重視要因(教育・医療・子育て支援施設への近接性等)を満たす地域ほど、需要の集中度が高く、価格上昇の程度が顕著になる
  • 結論:子育て支援策の拡充は、子育て世帯という属性を持つ市場参加者の流入を通じて有効需要を増大させ、これに伴い戸建住宅地の価格を押し上げる方向に作用する。ただし、その影響の程度は、教育・医療・子育て関連施設への近接性等、子育て世帯が重視する価格形成要因を当該地域がどの程度満たしているかによって異なる

問題3:自用の建物及びその敷地の鑑定評価

自用の建物及びその敷地の定義
自用の建物及びその敷地とは、建物所有者とその敷地の所有者とが同一人であり、その所有者による使用収益を制約する権利の付着していない場合における当該建物及びその敷地をいう。

(1)① 用途等が最有効使用に一致する場合の評価額の決定

建物の用途等が更地としての最有効使用に一致している場合、鑑定評価額をどのように決定するか述べなさい。

自用の建物及びその敷地の鑑定評価額の決定
自用の建物及びその敷地の鑑定評価額は、積算価格、比準価格及び収益価格を関連づけて決定するものとする。

(1)② 用途等が最有効使用に一致しない場合の評価額の決定

建物の用途等が更地としての最有効使用に一致していない場合、建物及びその敷地の最有効使用の判定に当たって特に留意すべき内容に触れながら、鑑定評価額をどのように決定するか説明しなさい。

建物及びその敷地の最有効使用と更地の最有効使用との関係
現実の建物の用途等が更地としての最有効使用に一致していない場合には、更地としての最有効使用を実現するために要する費用等を勘案する必要があるため、建物及びその敷地と更地の最有効使用の内容が必ずしも一致するものではないこと。
経済価値の比較考量
現実の建物の用途等を継続する場合の経済価値と建物の取壊しや用途変更等を行う場合のそれらに要する費用等を適切に勘案した経済価値を十分比較考量すること。
比較考量における留意点
最有効使用の観点から現実の建物の取壊しや用途変更等を想定する場合において、それらに要する費用等を勘案した経済価値と当該建物の用途等を継続する場合の経済価値とを比較考量するに当たっては、特に下記の内容に留意すべきである。

ア 物理的、法的にみた当該建物の取壊し、用途変更等の実現可能性
イ 建物の取壊し、用途変更等を行った後における対象不動産の競争力の程度等を踏まえた収益の変動予測の不確実性及び取壊し、用途変更に要する期間中の逸失利益の程度
用途変更等が最有効使用と認められる場合の鑑定評価額
建物の用途を変更し、又は建物の構造等を改造して使用することが最有効使用と認められる場合における自用の建物及びその敷地の鑑定評価額は、用途変更等を行った後の経済価値の上昇の程度、必要とされる改造費等を考慮して決定するものとする。
取壊しが最有効使用と認められる場合の鑑定評価額
また、建物を取り壊すことが最有効使用と認められる場合における自用の建物及びその敷地の鑑定評価額は、建物の解体による発生材料の価格から取壊し、除去、運搬等に必要な経費を控除した額を、当該敷地の最有効使用に基づく価格に加減して決定するものとする。

(2)① 建物の耐震性についての留意点

不動産鑑定評価基準運用上の留意事項に示されている建物に関する個別的要因について、建物の各用途に共通する個別的要因のうち、建物の耐震性について特に留意する必要がある点を述べなさい。

個別的要因の定義
個別的要因とは、不動産に個別性を生じさせ、その価格を個別的に形成する要因をいう。個別的要因は、土地、建物等の区分に応じて次のように分けられる。
建物の各用途に共通する個別的要因
建物の各用途に共通する個別的要因の主なものを例示すれば、次のとおりである。

1.建築(新築、増改築等又は移転)の年次
2.面積、高さ、構造、材質等
3.設計、設備等の機能性
4.施工の質と量
5.耐震性、耐火性等建物の性能
6.維持管理の状態
7.有害な物質の使用の有無及びその状態
8.建物とその環境との適合の状態
9.公法上及び私法上の規制、制約等

なお、市場参加者が取引等に際して着目するであろう個別的要因が、建物の用途毎に異なることに留意する必要がある。
建物の耐震性についての留意点
建物の耐震性については、建築基準法に基づく耐震基準との関係及び建築物の耐震改修の促進に関する法律に基づく耐震診断の結果について特に留意する必要がある。

(2)② 戸建住宅に関連する個別的要因

対象不動産が戸建住宅である場合に、建物の用途毎に特に留意すべき個別的要因として例示されているもののうち、戸建住宅に関連のあるものを挙げなさい。

住宅について留意すべき個別的要因
屋根、外壁、基礎、床、内装、間取り、台所・浴室・便所等の給排水設備・衛生設備の状況等に留意する必要がある。

また、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく日本住宅性能表示基準による性能表示、長期優良住宅の普及の促進に関する法律に基づき認定を受けた長期優良住宅建築等計画等にも留意する必要がある。

問題4:資産の流動化に係る不動産鑑定評価(収益還元法)

(1) 収益還元法の定義

「資産の流動化に関する法律」に規定する資産の流動化に係る不動産取引を目的とした価格に関する鑑定評価について、収益還元法の定義を簡潔に述べなさい。

証券化対象不動産の定義
「証券化対象不動産」とは、次のいずれかに該当する不動産取引の目的である不動産又は不動産取引の目的となる見込みのある不動産(信託受益権に係るものを含む。)をいう。

(1)資産の流動化に関する法律に規定する資産の流動化並びに投資信託及び投資法人に関する法律に規定する投資信託に係る不動産取引並びに同法に規定する投資法人が行う不動産取引
(2)不動産特定共同事業法に規定する不動産特定共同事業契約に係る不動産取引
(3)金融商品取引法により有価証券とみなされる権利の債務の履行等を主たる目的として収益又は利益を生ずる不動産取引
証券化対象不動産の鑑定評価の適用
証券化対象不動産の鑑定評価は、この章の定めるところに従って行わなければならない。
収益還元法の定義
収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法による試算価格を収益価格という。)。

(2)① 収益価格を求める方法

本鑑定評価における建物及びその敷地の最有効使用を、現実の建物の用途等を継続して利用することと判定した場合において、収益価格を求める方法について、式を記載しつつ、説明しなさい。なお、純収益の算定方法及び採用利回りの求め方の記載は不要である。

収益価格を求める方法の種類
収益価格を求める方法には、一期間の純収益を還元利回りによって還元する方法(以下「直接還元法」という。)と、連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計する方法(Discounted Cash Flow 法(以下「DCF法」という。))がある。これらの方法は、基本的には次の式により表される。
(1)直接還元法

P = aR

P:求める不動産の収益価格
a:一期間の純収益
R:還元利回り
(2)DCF法

P =  n Σ k=1 ak(1+Y)k + PR(1+Y)n

P :求める不動産の収益価格
ak:毎期の純収益
Y :割引率
n :保有期間(売却を想定しない場合には分析期間。以下同じ。)
PR:復帰価格

復帰価格とは、保有期間の満了時点における対象不動産の価格をいい、基本的には次の式により表される。

PR = an+1Rn

an+1:n+1期の純収益
Rn :保有期間の満了時点における還元利回り(最終還元利回り)
DCF法の説明性
DCF法は、連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を予測しそれらを明示することから、収益価格を求める過程について説明性に優れたものである。
証券化対象不動産におけるDCF法の適用
証券化対象不動産の鑑定評価における収益価格を求めるに当たっては、DCF法を適用しなければならない。この場合において、併せて直接還元法を適用することにより検証を行うことが適切である。

(2)② 還元利回りと割引率の相違点・相互関係

上記①で用いる還元利回りと割引率との相違点を述べ、その相互関係について説明しなさい。

還元利回りと割引率の共通点
還元利回り及び割引率は、共に不動産の収益性を表し、収益価格を求めるために用いるものであるが、基本的には次のような違いがある。
還元利回りの内容
還元利回りは、直接還元法の収益価格及びDCF法の復帰価格の算定において、一期間の純収益から対象不動産の価格を直接求める際に使用される率であり、将来の収益に影響を与える要因の変動予測と予測に伴う不確実性を含むものである。
割引率の内容
割引率は、DCF法において、ある将来時点の収益を現在時点の価値に割り戻す際に使用される率であり、還元利回りに含まれる変動予測と予測に伴う不確実性のうち、収益見通しにおいて考慮された連続する複数の期間に発生する純収益や復帰価格の変動予測に係るものを除くものである。
割引率との関係から求める方法
この方法は、純収益が永続的に得られる場合で、かつ純収益が一定の趨勢を有すると想定される場合に有効である。
還元利回りと割引率との関係を表す式の例は、次のように表される。

R=Y-g

R:還元利回り
Y:割引率
g:純収益の変動率

(3) 判断根拠の具体的明示及び統一収益費用項目使用の理由

本鑑定評価においては、不動産鑑定評価基準各論第3章の対象とはならない鑑定評価と比較して、調査内容及び鑑定評価で用いた数値等の判断根拠をより具体的に明示することや、統一された収益費用項目を用いる必要があるが、この理由について説明しなさい。

不動産鑑定士の責任の認識
不動産鑑定士は、証券化対象不動産の鑑定評価の依頼者(以下単に「依頼者」という。)のみならず広範な投資家等に重大な影響を及ぼすことを考慮するとともに、不動産鑑定評価制度に対する社会的信頼性の確保等について重要な責任を有していることを認識し、証券化対象不動産の鑑定評価の手順について常に最大限の配慮を行いつつ、鑑定評価を行わなければならない。
依頼者への説明及び説明責任
不動産鑑定士は、証券化対象不動産の鑑定評価を行う場合にあっては、証券化対象不動産の証券化等が円滑に行なわれるよう配慮しつつ、鑑定評価に係る資料及び手順等を依頼者に説明し、理解を深め、かつ、協力を得るものとする。また、証券化対象不動産の鑑定評価書については、依頼者及び証券化対象不動産に係る利害関係者その他の者がその内容を容易に把握・比較することができるようにするため、鑑定評価報告書の記載方法等を工夫し、及び鑑定評価に活用した資料等を明示することができるようにするなど説明責任が十分に果たされるものとしなければならない。

出題の要旨

国土交通省HPのコピペです。

【論文問題:問題1】
この問題は、見込地に関連して各設問についての基本的な理解を問うものである。(1)は、土地の種別及び見込地の意義について、(2)は、見込地の同一需給圏判定上の留意事項について、(3)①は、変動の原則及び予測の原則について、(3)②は、両原則と関連し、地域要因の変動が予測される場合の最有効使用判定上の留意点及びこの場合の予測に当たっての留意点について、不動産鑑定評価基準及び留意事項に照らし、的確に説明することを求めている。(3)③は、見込地の最有効使用を判定する場合の留意点等について、(3)②を踏まえつつ、説明することを求めている。
【論文問題:問題2】
この問題は、不動産の価格形成要因についての理解を問うものである。(1)は、不動産の価格形成要因の定義、不動産の価格との関連及び鑑定評価における分析等の必要性、(2)は、一般的要因の定義、(3)①は、地域分析における対象不動産に係る市場の特性と不動産鑑定評価を行う上でどのように反映すべきかについて、(3)②は市場の特性を把握するための資料について、(4)は、対象不動産及び当該不動産に関する社会情勢を具体的に想定した上で、①では、社会的要因について、②では、社会的要因の変化が不動産の価格に及ぼす影響とその理由、典型的な市場参加者の属性及び行動について、それぞれ不動産鑑定評価基準及び留意事項に照らし、理解しているかを求めている。
【論文問題:問題3】
この問題は、自用の建物及びその敷地についての基本的な理解を問うものである。(1)は、建物の用途等が更地としての最有効使用に一致している場合と、一致していない場合に、それぞれ鑑定評価額をどのように決定するのかについて、建物及びその敷地の最有効使用の判定に当たって特に留意すべき内容に触れながら的確に説明することを、(2)は、建物に関する個別的要因について、それぞれ不動産鑑定評価基準運用上の留意事項に照らして、的確に説明することを求めている。
【論文問題:問題4】
この問題は、収益還元法と証券化対象不動産の価格に関する鑑定評価についての基本的な理解を問うものである。(1)及び(2)は、収益還元法の定義並びに収益価格を求める方法及び採用する利回りに関して基本的な理解を問うものである。ただし、(2)①では、収益還元法に係る式を記載し、具体的に説明することを求めている。(3)は証券化対象不動産の鑑定評価を行うに当たって、不動産鑑定士の責務に関する根拠を明確にした上で、不動産鑑定評価基準及び留意事項に照らして、的確に説明することを求めている。

この記事を書いた人:藤本紗帆

1992年生まれ。3人目の育休中。

初めて不動産投資をするときにつまづくことが多く、当時知りたかったことをこのブログでまとめています。最近は不動産鑑定士の勉強についての記事ばかりです。ドメイン分ければ良かったか・・・。

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