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問題1:ミクロ経済学(生産者理論と外部性)
⑴ 生産関数と費用最小化の問題
前提条件
生産関数:y = √(K×L)(K:資本、L:労働)
資本の価格(レンタル料)=10
労働の価格(賃金率)=10
① 生産技術が「規模に関して収穫一定」であることの証明
問題
この生産技術は規模に関して収穫一定(=インプットを2倍にすればアウトプットもちょうど2倍になる性質)である。その理由を式で説明せよ。
解答
資本と労働をどちらもt倍(tは任意の正の数)にすると、
- y(tK, tL) = √(tK × tL)
- = √(t² × K×L)
- = t × √(K×L)
- = t × y(K, L)
インプットをt倍にすると、アウトプットもちょうどt倍になる。これが「規模に関して収穫一定」である。
解説
- 材料を2倍使えば、できあがる製品もちょうど2倍できる(3倍使えば3倍できる)というイメージ
- この生産関数では、材料を増やした分だけ無駄なく・増えすぎもせず、ちょうど同じ割合で製品が増える
- 式の中の「t」が最後にそのまま外に出てくることが、「ちょうど同じ倍率で増える」ことの数学的な根拠になる
② 資本を固定した場合の費用最小化
問題
資本の投入量がK=16で固定されている。労働力は自由に調整できる。36単位を生産するために必要な労働力の投入量を求め、それが費用最小である理由を説明せよ。
解答
必要な労働量の計算:
- 36 = √(16 × L)
- 36² = 16L
- 1296 = 16L
- L = 81
費用の計算:
- 資本の費用:10×16 = 160
- 労働の費用:10×81 = 810
- 合計費用:970
費用最小である理由:
選択肢が実質1つしかないので、この組み合わせが「36単位を作るための唯一の、したがって最小の費用」ということになる
資本が16に固定されている以上、36単位ちょうどを作れる労働量はL=81の一択しかない(Lを増やせば生産量は36を超え、減らせば36に届かない)
③ 資本・労働ともに自由に選べる場合の最小費用
問題
資本も労働力も自由に選べるとする。36単位の財の生産に必要な最小費用を求め、それが最小である理由を説明せよ。
解答
費用を最小にする組み合わせは、技術的限界代替率(MRTS)と資本・労働の価格比が一致する点で決まる。
限界生産力(y = K^(1/2) L^(1/2) より):
- MPL(労働の限界生産力)= ∂y/∂L = (1/2) K^(1/2) L^(-1/2)
- MPK(資本の限界生産力)= ∂y/∂K = (1/2) K^(-1/2) L^(1/2)
技術的限界代替率:
- MRTS(L,K) = MPL/MPK = K/L
費用最小化の条件(MRTS=価格比):
- K/L = 10/10 = 1 → K = L
制約(36単位を生産)への代入:
- √(K×L) = 36 → K×L = 1296
- K=Lなので K² = 1296 → K = L = 36
費用の計算:
- 10×36+10×36 = 360+360 = 720
解説
考え方のポイント
- 資本・労働の価格はどちらも10で同じ
- こういう場合、費用最小の条件は「資本を1単位増やしたときに増える生産量」=「労働を1単位増やしたときに増える生産量」となる組み合わせ
- この「増える生産量の比率」がMRTS(技術的限界代替率)で、計算するとMRTS=K/Lになる
結論への流れ:
- 価格比が10/10=1なので、MRTS=1、つまりK=L
- 「36個作る」という条件(K×L=1296)にK=Lを代入 → K=L=36
- 費用 = 10×36+10×36 = 720
なぜこれが最小なのか:
- 機械と人のどちらかに偏った組み合わせ(例:Kだけ増やしてLを減らす)だと、同じ36個を作るのにもっとお金がかかる
- K=L=36が、ちょうどバランスの取れた一番安い組み合わせになる
⑵ 音楽鑑賞と外部性(A家・B家)の問題
前提条件
- uA = 4xA - xA²/2 - 2xB
- uB = 6xB - xB²/2 - xA
- xA・xBはそれぞれの家の音楽鑑賞時間
① 自分勝手に決めた場合(私的最適・外部性を無視した均衡)
問題
各家の住人は他の家の住人への影響を考えずに、それぞれ自分の効用を最大化するように音楽鑑賞時間を決める。このときの各家の音楽鑑賞時間を求めよ。
解答
A家:
- duA/dxA = 4 - xA = 0 → xA = 4
B家:
- duB/dxB = 6 - xB = 0 → xB = 6
(xBはA家が自分で選べる変数ではないため、A家自身の最大化には影響しない。B家についても同様)
解説
隣の迷惑は気にせず、自分が気持ちいいだけ音楽をかけるという状況 自分の音量を決めるとき、相手の音量の項は自分では変えられないので、計算上は無視してよい 結果、A家は4時間、B家は6時間、それぞれ好きなだけ音楽をかけることになる。
② 話し合って全体最適を目指した場合(社会的最適)
問題
2つの家の住人が話し合い、2人の効用の合計を最大化するように音楽鑑賞時間を決めることに合意した。このときの各家の音楽鑑賞時間を求めよ。
解答
効用の合計W:
- W = uA+uB
- = (4xA - xA²/2 - 2xB) + (6xB - xB²/2 - xA)
- = 3xA + 4xB - xA²/2 - xB²/2
最大化条件:
- dW/dxA = 3 - xA = 0 → xA = 3
- dW/dxB = 4 - xB = 0 → xB = 4
比較:
- A家:4時間 → 3時間
- B家:6時間 → 4時間
- ①と比べて、どちらも鑑賞時間が減少する
解説
- 今度は相手にかける迷惑も一緒に考えて、2人合わせた幸せの合計が一番大きくなるように音量を決め直す
- すると、①より2人とも音楽鑑賞の時間が短くなる
- ①の決め方では「自分は気持ちいいが相手は迷惑」という部分が計算に入っていなかったため、鑑賞時間が過大だった
- 迷惑分も加味すると、ちょうどよい量まで減る、というのがこの計算の意味である
③ コースの定理の説明
問題
本問は外部性に関する問題である。外部性にまつわるコースの定理の主張内容を明確に説明せよ。
解答の骨子
前提条件:
- 権利(財産権)の所在が明確に定まっていること(迷惑をかけられる側・かける側のどちらが権利を持っているかがはっきりしていること)
- 交渉にかかるコスト(取引費用)がゼロ、あるいは十分小さいこと
上記の前提が満たされる場合の結論:
- 当事者同士の自主的な交渉によって
- 政府の介入(税金や補助金など)がなくても
- 資源配分は効率的な水準に落ち着く
補足(重要なポイント):
- 最初にどちらが権利を持つかは、誰がどれだけ得をするか(分配)には影響する
- しかし、最終的にたどり着く効率性の水準(実現する音楽鑑賞時間の合計など)には影響しない
問題2:マクロ経済学(国際金融理論と資産市場)
⑴ 為替市場と金融緩和政策
① 金融緩和と為替市場に関する空欄補充(ア~オ)
問題 式1~式4をもとに、空欄ア~オに当てはまる語句を答えよ。 (ア:黒字/赤字、ウ:上昇/低下、エ:増価/減価、オ:垂直/水平のいずれか)
解答
| 空欄 | 解答 |
|---|---|
| ア | 赤字 |
| イ | 一定(=1になる) |
| ウ | 低下 |
| エ | 減価 |
| オ | 水平 |
解説
- ア(赤字)
- 金利が下がると、企業は投資を増やす
- 国全体で見ると、貯めるお金(貯蓄)より使うお金(投資)が増えるため、その差である経常収支は赤字寄りになる
- イ(一定)
- 絶対的購買力平価とは、同じモノはどの国で買っても(為替レートで換算すれば)同じ値段になるはずという考え方
- これが常に成り立つなら、実質為替レートは常に「1」で一定になる
- ウ(低下)
- 実質貨幣供給量が増えると、資金の貸し借りにおいて借り手より貸し手が増える
- このため金利は下がる
- エ(減価)
- 自国の金利が下がると、外国にお金を預けたほうが得になる
- 自国通貨を売って外貨を買う動きが強まり、自国通貨の価値は下がる=減価(円安)となる
- オ(水平)
- 資本移動が完全に自由という前提は、わずかな金利差でも即座に世界中から資本が動く状況を意味する
- 自国の金利は常に世界の金利にほぼ一致させられるため、グラフ(縦軸:利子率)では水平な線になる
②-1 金融緩和による自国の名目利子率への影響
問題 自国の金融緩和政策によって、自国の名目利子率はどのように変化するのか、式3を参考に説明せよ。
解答
- 金融緩和により貨幣供給量Mが増加する
- 式3(M/P=L₁Y-L₂i)より、物価P・所得Yが一定であれば、右辺のL₂iの部分が大きくならないと式は成立しない
- したがって名目利子率iは低下する
解説
- 日本銀行がお金を大量に供給するのが金融緩和である
- 世の中にお金があふれると、お金を借りたい企業に対して貸したい人が増える
- そのため金利は自然と下がる
②-2 円安が実質GDPに与える影響
問題 円の為替レートが減価する(円安になる)と、変動為替相場制度のもとで実質国内総生産はどのように変化するのか、式1、式2及び式4を参考に説明せよ。
解答
- 円安(名目為替レートEの上昇)が起こると、式2(Z=E・P*/P)より、物価が一定であれば実質為替レートZも上昇する
- 留意点bより「円安によって純輸出(NX)が増加する(マーシャル=ラーナー条件を満たす)」
- 式1(Y=C+I+G+NX)のNXが増えることを通じて、実質国内総生産Yは増加する
解説
- 円安になると、外国から見て日本の商品が割安になるため輸出が増える
- 逆に日本人にとって外国製品は割高になるため輸入は減る
- 輸出が増えて輸入が減る、つまり純輸出が増えるため、国内の生産(GDP)を押し上げる方向に働く
②-3 変動相場制での金融緩和政策の効果(IS-LM-BP分析)
問題 小問②-1及び②-2の結果を踏まえ、変動為替相場制度における自国の金融緩和政策の効果をIS-LM-BP分析の図を用いて説明せよ。
解答
変動為替相場制における自国の金融緩和政策の効果
効果の流れ:
- 金融緩和によりLM曲線が右方向へシフトする(②-1のとおり、貨幣供給増加で利子率が下がる方向に動く)
- これにより自国の利子率が世界の利子率(i*)を下回り、資本が海外へ流出する
- 資本流出により自国通貨(円)が売られ、円安(Eの上昇)が進む
- 円安によって純輸出が増加し(②-2のとおり)、IS曲線が右方向へシフトする
- 資本移動が完全に自由(=BP曲線は水平)であるため、最終的な均衡点は利子率=世界の利子率(i*)のまま、実質GDPだけが増加した点に落ち着く
解説
金融緩和という一つの政策が、2段階で景気を押し上げる:
- 1段階目:お金を増やす→金利が下がる
- 2段階目:金利が下がる→海外にお金が流出する→円が売られて円安になる→円安で輸出が伸びる→GDPが押し上げられる
- 資本移動が自由な国では、金利がすぐに世界水準に戻る(BPが水平)
- そのため金融緩和の効果は主に円安を通じた輸出増加という形でGDPに効いてくる
- 図では、LMが右に動く→円安→ISも右に動く→GDPが増えて着地する、という2段階の動きを描くとよい
⑵ 円安局面で海外投資家がJ-REIT(日本の不動産)を買う理由
問題
「資産価格の調整」という観点から、なぜ海外投資家は円安局面で日本への不動産投資(J-REIT購入)を積極化させるのか、そのメカニズムを式2・式3・式4を参照して説明せよ。
解答
メカニズムの流れ:
- 日本銀行の金融緩和(量的・質的金融緩和)により貨幣供給量が増加し、式3より国内の名目利子率が低下する
- 利子率が低下すると、不動産のような実物資産から得られる将来の賃料収入を現在価値に割り引く割引率も下がるため、同じ将来収益でも不動産の理論価格は上昇する(資産価格の調整)
- 同時に、式4(利子裁定式)より、自国の利子率低下は円安(Eの上昇)をもたらす。金融緩和が持続的だと予想されると、将来の期待為替レートも円安方向に修正され、円安トレンドが続くと見込まれる
- 海外投資家にとって、次の二重の魅力が生まれる
- 国内の不動産価格自体が金融緩和で押し上げられている(値上がり益が期待できる)
- 円安によって自国通貨換算での購入コストが割安になっている(同じ外貨でより多くの円=より多くの不動産持分を買える)
- この結果、海外投資家によるJ-REITの買い越しが進み、不動産価格指数もあわせて上昇する(図1↓で見られる現象)
解説
- 円安になると、たとえばアメリカの投資家がドルを円に両替すると、以前より多くの円が手に入る
- 同じ1ドルで、より多くの日本の不動産(の持分)が買えるようになる
- さらに日本銀行が金利を下げているため、不動産のように賃料をコツコツ稼ぐ資産の理論的な価値自体も上がっている(金利が低いと、将来もらえる賃料の現在価値が高く評価されるため)
- 円安で入り口が安く、低金利で中身(不動産の価値)も上がりやすい
- この2つの理由が重なって、海外投資家が日本の不動産(J-REIT)を積極的に買うようになった、というのが図1の読み解き方である

