税金対策の決め手となるのが減価償却費のコントロールです。
この記事では、不動産投資における減価償却のコントロールについて解説します。
建物土地割合の決め方
大きな減価償却費を取るためには、物件価格に占める建物割合の高い物件を取得することも重要です。
建物や建物設備は減価償却できますが、土地は減価償却できないからです。

一般的には不動産取引の際、土地と建物の金額を明確にしない場合が多いです。
大手仲介不動産会社が土地と建物の金額を契約書に明記することもありますが、かなり稀なケースです。
一方で買主側は土地と建物の割合を決めて減価償却をする必要があります。
なるべく建物の金額を大きくして減価償却費を大きくとれるようにするのがコツです。
原則は消費税をもとに分ける方法
原則的なやり方は「契約書の売買金額の消費税を元に分ける方法」です。
【原則の計算方法】
消費税額➗8%=税抜きの建物価格
税抜きの建物価格+消費税額=税込の建物価格
全体の売買金額ー税込の建物価格=土地の価格
また、特例計算のやり方は以下の4通りです。
- 固定資産税の評価による按分
- 公示価格で算出する方法
- 建物の標準的な建築価額表で算出する方法
- 不動産鑑定士による評価
固定資産税の評価による按分
土地と建物の固定資産税評価額の割合に応じて、金額を決める方法です。
この方法は一般的で合理的であり、もっとも使われているやり方だと思われます。
物件価格の総額✖️(建物の固定資産税評価額/(建物の固定資産税評価額+土地の固定資産税評価額)
公示価格で算出する方法
路線価が公示価格の80%に設定されている関係を利用して、路線価から公示価格を算出します。
土地の値段を出してから全体の価格を差し引くことで建物の価格を出す方法です。
建物の標準的な建築価額表で算出する方法
国税庁のHPで建物の標準的な建築価額表が公表されています。▼

建物の平米単価を確認し、延べ床面積をかけて建物の金額を出します。
経年劣化している分(減価償却)を差し引くことで建物の価格を出します。
不動産鑑定士による評価
不動産鑑定士に土地建物の評価を依頼し、金額割合を明確にする方法もあります。
固定資産税評価額の按分方法と比べて、築年数が経過した建物であっても経済的に価値があると評価されやすいです。
ネックとしては、不動産鑑定士に土地建物の評価を依頼すると15〜30万円程度の費用がかかることです。
費用がかかるため通常この方法は使えません。
しかし、売買契約書に土地建物の割合が非明記の場合、減価償却費を大きくできるため鑑定依頼するメリットは大きいです。
売買契約書に土地建物の金額を明記する
最もオススメする方法が「売買契約書に土地建物の金額を明記すること」です。
売主との交渉により建物の割合が高く設定できる可能性があります。
(もちろん、固定資産税評価額による按分方法に基づき算定した結果を踏まえた上です。)
第三者間による商取引において、土地および建物の売買金額は原則自由に決めることができます。
売主との交渉の中で、合理的な説明ができる範囲内で、一定程度土地建物の内訳を決めることは可能です。
ただし、建物金額が高くなることで売主側に多額の売却益が生じることもあるため注意が必要です。
売主の個人は建物割合を高くすることを了承してくれそうですが、売主の税理士から反対されることもあります。
建物は「建物本体」と「建物附属設備」に分解する
建物を「本体」だけとみなして償却することもできますし、「本体」と「附属設備」に分解して償却することもできます。
そこで、建物代の20%を償却期間の短い「建物附属設備」とみなし、減価償却分を大きくすることが以前から行われていました。

建物附属設備の法定耐用年数は15年です。(RC構造の建物は47年)
「20%計上」というのは税法上は根拠がないため、自分で根拠を示せるようにしておきましょう。
具体的には、
- 給排水設備
- ガス設備
- エレベーター
- 消防設備
などの経費がそれぞれいくらかかっているかを正確に把握しておきます。

親切な業者であれば、不動産を購入した際の明細に、本体と附属設備の価額を記載しています。
記載されていない場合は、「本体:附属設備=7:3」以下であれば経験則的に認められるケースが多いようです。
「本体」だけの場合より、「本体+附属設備」に分けたほうが、15年間の償却費は大きくなり節税効果が高くなりますが、16年目以降の節税効果は小さくなります。
法廷耐用年数は以下の表の通りで、金額は参考例です。
建物価格 1200万円 |
建物本体 900万円 |
鉄筋コンクリート | 47年 | |
鉄骨造 | 肉厚4mm超 | 34年 | ||
肉厚4mm以下 | 27年 | |||
木骨モルタル造 | 20年 | |||
建物付属設備 300万円 |
電気設備 | 15年 | ||
給排水、衛生、ガス設備 | 15年 | |||
空調設備 | 13年 | |||
エレベーター設備 | 17年 | |||
エクステリア 200万円 |
緑化施設、庭園 | 20年 | ||
ガレージ | ブロック造 | 15年 | ||
アスファルト造 | 10年 | |||
ブロック塀 | 15年 | |||
金属製品塀 | 10年 |
耐用年数を長くすることもできる
そもそも中古物件の耐用年数は、使用可能期間として見積もります。
大抵は見積もることが難しいので、簡便法による計算で「木造は4年」などと決まります。

しかし、この数字にとらわれず耐用年数を長くして償却することもできます。
使用可能期間として見積もれるのであれば、4年以上で償却することも可能です。
法律的に決められたものではないため、自身の見積もり年数で大丈夫です。
多いパターンとしては
- RCで70年
- 鉄骨で60年
- 木造で50年
といった数字です。
減価償却が大きく赤字が出過ぎる場合に、使う方法です。
無駄な赤字を減らしてトータルで節税できます。
税務署は目先の税額を気にするので、法定耐用年数よりも長ければ文句は言わないでしょう。
補足:減価償却は課税の先送り
減価償却は税金のコントロールに使えます。
しかし、税金の支払いから逃れられるわけではありません。
厳密に言うと、減価償却によって得られるのは節税効果ではなく、あくまで税金の「先送り(繰り延べ)効果」です。
なぜなら、減価償却を行うことで毎年帳簿上の金額は小さくなりますが、最終的に建物を売却すると売却益と簿価の差が売却益となり、それに対する税金がかかるからです。
詳しくはこちらの記事で解説しています。▼
赤字のときに物件を売却すればいいのですが、賃貸事業は数年運営するとなかなか赤字が出ません。
収益物件を売却するときは多額の利益が出るため、修繕やまた新たな収益物件を購入して税金対策をします。
止まったら死んでしまうマグロのように、事業規模を拡大して、そしてまた節税しての繰り返しです。
ただ、納めるべき税金を繰り延べできるというのは、当面手元に置いておける現金が増えるわけですから、経営者にとって大きなメリットです。
課税が先送りしてできた現金は、収益物件の頭金などの資金繰りに役立ちます。
つまり、無利息で融資を受けたのと同じ効果があります。
減価償却はコントロールして有効に活用しましょう。
まとめ
減価償却費のコントロール方法を身につけ、税金を先送りし、現金の確保しましょう。
この記事では以下の書籍を一部参考にしました。▼
この本は大家を始めてから税理士になって人が書いています。
税金の知識など非常に参考になるのでオススメです!
読んでいただきありがとうございました。