多くの金融機関が重視しているのは「積算価格」です。
不動産投資家も、金融機関に持ち込む前に「積算価格」を試算できるようになっておきましょう。
不動産鑑定士が積算価格を求めるときは、さまざまな資料やデータをもとにしますが、簡易的な方法でも十分です。
この記事では、金融機関の物件の評価方法である「積算価格」の求め方を紹介します。
積算価格=土地の価格+建物の価格
積算価格=土地の価格+建物の価格で算出されます。
積算評価法は銀行が融資するにあたってまず着手する伝統的な評価方法です。
この評価額が販売価格よりも高ければ、資産価値のあるお得な物件だとみなされます。
ただ実際のところ、最近は不動産の販売価格が高くなっており、特に首都圏では積算評価方によって高評価される物件は少なくなっています。
金融機関は積算評価額の7割くらいまでは融資してくれる可能性が高いです。
土地の価格=路線価×土地の面積(㎡)
土地の価格は以下の計算式で算出されます。
土地の価格=路線価×土地の面積(㎡)×掛目
掛目は、例えば商業地域で角地だと掛目115%など、用途地域や接道状況が良ければその分評価が上がります。
路線価は「相続税路線価」という土地の値段のひとつで、【全国地価マップ】のサイトで知ることができます。

「相続税路線価」のページを開き、調べたい住所を入力します。

例えば、「420」と表示されていた場合は、「平米420千円」、すなわち「平米42万円(42万/㎡)」ということです。
この平米単価に土地の面積をかけることで「土地の積算価格」を算出できます。
土地の値段に関してはこちらの記事でも詳しく解説しています▼
また、土地の形状や私道にしか面していないなどの理由によって、土地価格が以下のように変わります。
土地の価格 | |
路地状敷地(旗竿地) | 10%から20%低くなる |
角地 | 5%高くなる |
二方路地(2つ以上の道路に面している) | 3%高くなる |
三方路地(3つ以上の道路に面している) | 7%高くなる |
値段のついていない道路←私道に多い | 周辺路線価から5%から10%程度低くなる |
ちなみに、2つ以上の道路に接していて、それぞれの路線価が違う場合は高いほうの価格を採用します。
建物の価格=再調達価格×延床面積×残存年数÷耐用年数
建物の価格は以下の式で計算します。
建物の価格=再調達価格×延床面積×残存年数÷耐用年数
再調達価格は、同等の建物を再建築した際の価格です。
再調達価格は木造15万、軽量鉄骨17万、重量鉄骨18万、RC20万/㎡くらいで計算しますが、金融機関によって単価設定は異なります。
残存年数は耐用年数から築年数を引いた年数です。
耐用年数は木造22年、軽量鉄骨27年、重量鉄骨34年、RC47年とします。
例えば築30年のRC造の物件であれば残存年数は47-30=17年となります。
耐用年数 | 再調達価格 | |
木造 | 22年 | 15万/㎡ |
軽量鉄骨 | 27年 | 17万/㎡ |
重量鉄骨 | 34年 | 18万/㎡ |
RC | 47年 | 20万/㎡ |
例題:どの物件の融資が出やすい?
ここでクイズです。
以下の3つの物件はいずれも価格が4000万円とします。
どの物件が一番融資が出やすいと思いますか。
(ここでは掛け目は省略しています。)
物件A | 物件B | 物件C | |
建物 | 重量鉄骨造1棟 | 木造1棟 | RC区分 |
築年数 | 築10年 | 築7年 | 築25年 |
土地面積 | 250㎡ | 130㎡ | 2000㎡ |
路線価 | 7万/㎡ | 3万/㎡ | 20万/㎡ |
延床面積 | 300㎡ | 700㎡ |
延床面積持ち分40万分の5000 専有面積40㎡ |
価格 | 4000万円 | 4000万円 | 4000万円 |
↓どの物件が融資が出やすい?積算価格を計算 | |||
土地の価格 (A) |
7万×250㎡=1750万円 | 3万×130㎡=3900万円 | 20万×2000㎡×5000÷40000=500万 |
建物の価格 (B) |
18万×300×0.7=3780万円 | 15万×700㎡×0.68=7140万円 | 20万×40㎡×0.46=368万円 |
積算評価額 (A+B) |
5530万円 | 11040万円 | 868万円 |
3つの物件の中で最も融資が出やすいのは売出価格に対して積算評価が大きい物件Bです。
同じ価格で売られている物件でも、積算評価は大きく異なることがあります。
融資が出やすい物件かどうかをすぐに判断できるようにするために、自分で積算評価額を計算できるようになっておきましょう。
積算価格の判断は練習が必要
積算価格の判断にはある程度の練習が必要です。
勉強と同じで計算を練習しないといけません。
数をこなして、100件以上の積算価格を計算すれば判断も早くなります。
積算価格が高いのは、土地が大きくてゆったりとしたつくりの物件の場合が多いです。
詳しくはこちらの記事でも解説しています。▼
担保価値は積算価格が基準になる
担保価値とは、融資金額の根拠となるものです。
担保価値=積算価格✖️掛け目 ≧ 融資金額
50%(市況が悪いとき)< 掛け目 <100%(市況がいいとき)
担保価値は積算価格よりも「掛け目」という調整率をかけて求めるため、積算価格よりも低くなります。
掛け目は不動産の市況や金融情勢など、タイミングによって変化していきます。
まとめ
物件を選ぶときは、利回りだけでなく積算評価もチェックしてみましょう。
複数の物件を比較するときにも役立ちます。
また、積算価格について理解を深めると、有利な価格交渉をすすめることができます。
詳しくはこちらの記事で解説しています。▼
読んで頂きありがとうございました。